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第一章
2 通りすがりのマヌカン・ノワール
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1、2匹のきのこが戻り損ねた自室へと戻り、パジャマの女の人は織物をもう一度めくってみます。
騙し絵かと思いました。しかし触っても足を伸ばして砂利道を踏んでも、やっぱり何処かに道は続いています。自室の壁と道の境目は崩れたコンクリートの鉄筋まで顕になり、崩れた壁の向こうには、一面に木々や草花、きのこや苔、向こう側の空はこちらの夜とよく似た明るい夜空でした。
「どうなってるんだ!」
パジャマがそういうと、黒マネキンが、
「落ち着きなさい」
そう低い声で優しく言いました。
「私が離れたら元通りだから」
パニックなままのパジャマはドサッと、対象的な黒マネキンは紳士の様に、2人はベッドに腰掛けました
「iPhone何処だっけ…」
壁の写真を撮ろうと、パジャマが宮台に振り向くと、毎晩そこで充電してるはずのiPhoneがありません。
「あれっ どこ行っ」
はとベッドの足元に目をやると、きのこ達が頭のてっぺんから胞子を吹き吹き、力を合わせて何処かに持って行こうとしています。
「ちょっと!めっ!」
慌ててパジャマはiPhoneを取り戻しました。しかし、黒マネキンが無言でそれをまた奪いました。
「返して!」
「これが一体何か知らないけれど、その前に色々尋ねたい」
「返してよ!」
黒マネキンの腕が長く、膝を立てて手を伸ばしても立ち上がられ、奪い返せません。
「此処は何という所かね」
「新田町!新田町三丁目!」
「アラタチョウ…」
「近くに海はあるか?」
「ある!も~返して!」
「案内してもらえるかな?」
黒マネキンがそう言って立ち止まった時、1匹のきのこが逃げ遅れました。
「分かった、わかりました!」
パジャマはもう一面の壁に掛けていたウールのコートを羽織りながら、半ばやけくそ気味でした。
「海行きましょ!」
「ありがとう」
黒いマネキンとパジャマは、201号室をあとにしたのでした。
てか、この人連れて交番にいかなきゃ、
もう、今日バイトあるのに…!
部屋どうなっちゃうんだろう…!
何者?変なマスクしてるし、変な格好してるし、
なんか人間ぽいんだけど人間ぽくないし、
iPhone返してくれないし!
黒マネキンと、パジャマはぶつぶつと言いながら海への近道を歩いていました。
デカイなこの人…。
背の低い自分の少し斜め後ろを着いて歩く黒い異質な旅装束姿の人を見ました。
月明かりがなければ、まるでお化けか何か、いや、まるっきりお化けの様にも思えます。
海際の公園に差し掛かり、視界が開けてくると、水平線が鮮やかなピンクと紫色に染められた雲が、パジャマにはSNSで投稿されている美しい写真の様だと思いました。
なんでだろう、こんなに美しいのに、SNSなんてチープだなあ、現実に比べたら。
今起きている事の重大さが、そう思わせたのかもしれません。
現実と非現実。今自分はどっちにいるんだろう、そんな気持ちに囚われたのでした。
そうだ、聞かなきゃと夜明けを眺めながら、
「あの」
黒マネキンは聞いてるのかどうかも分かりません。
「わたし、友信と言います。とものぶりっか。」
「トモノブがファーストネーム?」
「違います。六花。」
あれ?外国の人かな?そう思いながら聞きます。
「あなたの名前は?」
マネキンは少し黙って考えてから、
「名前ねぇ」
まだ少し間をとってから、言いました。
「分からないよ。
ただ、魔女はこう呼ぶ。
ノワール。
通りすがりのマヌカン・ノワール」
騙し絵かと思いました。しかし触っても足を伸ばして砂利道を踏んでも、やっぱり何処かに道は続いています。自室の壁と道の境目は崩れたコンクリートの鉄筋まで顕になり、崩れた壁の向こうには、一面に木々や草花、きのこや苔、向こう側の空はこちらの夜とよく似た明るい夜空でした。
「どうなってるんだ!」
パジャマがそういうと、黒マネキンが、
「落ち着きなさい」
そう低い声で優しく言いました。
「私が離れたら元通りだから」
パニックなままのパジャマはドサッと、対象的な黒マネキンは紳士の様に、2人はベッドに腰掛けました
「iPhone何処だっけ…」
壁の写真を撮ろうと、パジャマが宮台に振り向くと、毎晩そこで充電してるはずのiPhoneがありません。
「あれっ どこ行っ」
はとベッドの足元に目をやると、きのこ達が頭のてっぺんから胞子を吹き吹き、力を合わせて何処かに持って行こうとしています。
「ちょっと!めっ!」
慌ててパジャマはiPhoneを取り戻しました。しかし、黒マネキンが無言でそれをまた奪いました。
「返して!」
「これが一体何か知らないけれど、その前に色々尋ねたい」
「返してよ!」
黒マネキンの腕が長く、膝を立てて手を伸ばしても立ち上がられ、奪い返せません。
「此処は何という所かね」
「新田町!新田町三丁目!」
「アラタチョウ…」
「近くに海はあるか?」
「ある!も~返して!」
「案内してもらえるかな?」
黒マネキンがそう言って立ち止まった時、1匹のきのこが逃げ遅れました。
「分かった、わかりました!」
パジャマはもう一面の壁に掛けていたウールのコートを羽織りながら、半ばやけくそ気味でした。
「海行きましょ!」
「ありがとう」
黒いマネキンとパジャマは、201号室をあとにしたのでした。
てか、この人連れて交番にいかなきゃ、
もう、今日バイトあるのに…!
部屋どうなっちゃうんだろう…!
何者?変なマスクしてるし、変な格好してるし、
なんか人間ぽいんだけど人間ぽくないし、
iPhone返してくれないし!
黒マネキンと、パジャマはぶつぶつと言いながら海への近道を歩いていました。
デカイなこの人…。
背の低い自分の少し斜め後ろを着いて歩く黒い異質な旅装束姿の人を見ました。
月明かりがなければ、まるでお化けか何か、いや、まるっきりお化けの様にも思えます。
海際の公園に差し掛かり、視界が開けてくると、水平線が鮮やかなピンクと紫色に染められた雲が、パジャマにはSNSで投稿されている美しい写真の様だと思いました。
なんでだろう、こんなに美しいのに、SNSなんてチープだなあ、現実に比べたら。
今起きている事の重大さが、そう思わせたのかもしれません。
現実と非現実。今自分はどっちにいるんだろう、そんな気持ちに囚われたのでした。
そうだ、聞かなきゃと夜明けを眺めながら、
「あの」
黒マネキンは聞いてるのかどうかも分かりません。
「わたし、友信と言います。とものぶりっか。」
「トモノブがファーストネーム?」
「違います。六花。」
あれ?外国の人かな?そう思いながら聞きます。
「あなたの名前は?」
マネキンは少し黙って考えてから、
「名前ねぇ」
まだ少し間をとってから、言いました。
「分からないよ。
ただ、魔女はこう呼ぶ。
ノワール。
通りすがりのマヌカン・ノワール」
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