破壊、略奪、支配、エロ。これが大人のファンタジー

第一章 悪の拠点づくり

4.館の主はケモ耳

「くっそう！
お前のしぶとさに負けたぜ！ほらよ！銅貨25枚！」

　あー、本気で悔しがってる。俺もしかして演技派！？
　とても悔しがっているおっさんＡは女神が寝ているテーブルに銅貨を並べた。
突っ伏している女神の横顔が銅貨で少し隠れた。

「だせえな！次は俺だ！美味しいところをいただくぜ！」

　俺が座るテーブルに、おっさんＢが座ってきた。
また俺は演技に凝る。

「くうぅ！あぁぁぁ！まだまだぁ！」

　拙い語彙ごいですみません。必死に演じているんです。
最後はわざと手をプルプル震えさせて、勝ちをもぎ取る。

「なんだこいつ！弱いとおもったのに！」

　女神のテーブルに銅貨が増えた。
この俺の寸劇はおっさんＡが派手にカップや皿を落としてくれたから、周りの客にかなり注目されていた。
　舞台俳優は観客が多ければ多いほど、神がかった演技ができるというものです。

「若者、おもしれえな！俺も参加させろ。ああ、少し休んでからでいいぜ？」

　来た来た。鴨がたくさんのネギを背負って来てくれましたよ。おっさんＣ。

「休まなくて大丈夫です。若いんで疲れとか、あんまり気にならないんです。
でも疲れはなくはないから、掛け金銅貨30枚で今すぐ勝負ってどうですか？」

　我ながら小狡い考えだ。
周りから注目されているから、公平なのは大切だ。後で揶揄されるのは誰でも嫌だ。
だが、不利は上乗せレイズすることで周りも公平と思う。
　おっさんＣとしても俺が疲れているうちにやった方がお得なわけだから、安いもんだ。

「よしいいだろう。30枚だ。」

　いつの間にか、俺たちのテーブルは観客に囲まれていた。酒も入っているのだ。おっさんＣにヤジも飛んでる。
ありがたい。俺には綺麗な娼婦さんが黄色い声援を贈ってくれる。演技に力が入る。

「お姉さま方！ありがとうございます！力が、力が湧いてきます！！」

　空いた手の方で声援に手を振り、笑顔を振りまく。
俺、こんなモテ男みたいなことできるキャラだったかな？演技って怖い。
　自問自答的なことを考えている間に「Go！」の声が聞こえる。
苦しんでいるように、でも踏ん張って盛り返すように、でも息が切れてまた耐え忍ぶように・・・。
最後はおっさんＣの握力が切れたのを見計らって盛り返した、そんな演技だ。

「ああ、負けた！粘られて握力無くなっちゃったよ！」

　悪態をついておっさんＣは女神の顔を銅貨で隠していく。
　そんな感じでどんどん盛り上がり、上乗せレイズもどんどん膨らんでいく。
間に若い男Ａ～Ｅまで挟んで、おっさんＤ～Ｊまで制覇した。
　後日談だが、この娼館の娼婦を抱くのにかかる対価は銅貨80枚。おっさんＪが張った銅貨は150枚だった。
　女神のテーブルはこんもりと銅貨で埋まっていて、女神自身の顔は全く見えなくなっていた。
なんか、ラスベガスとかカジノで大勝ちした気分？お金が並んでるのって気持ちいい。

「だらしないねえ、あんたたち。どきな。」

　騒がしい観客の声の中でも通る、ハスキーな声がした。
ざわざわとして観客の群れが割れる。
割れたその間から女性が姿を現した。
　背が大きく、俺より高い。190ｃｍくらいあるのではないかと思う。
長くウェーブがかかった艶やかで漆黒に輝く黒髪。
大きい胸を強調した、肌を大胆に露出する毛皮のキャミソールに、大きくスリットが入ったスカート。
そこから見える筋肉質な足には、歩くたびにガチャリガチャリと鳴る金属の具足を嵌めている。
　肌は浅黒く、大きく肌が露出する胸元には三日月のような白いアザのようなものがある。
顔を見る限りでは30歳くらいだろうか。切れ長に整った顔立ちはかっこいい大人の女性の雰囲気を醸し出す。
　しかしながら、不思議なものが頭に乗っている。
耳だ。
獣の耳だ。熊の耳だ。
　そう。この世界にいるかわからないけど、この女性は月の輪熊の獣人なのだ。

「けっけっけっけもみみいいいい！」

　みんな大好きケモ耳。それがついに俺の目の前に顕現した。

「「「ネロ姐さん！！」」」

　観客の期待が籠った歓声が上がった。


カオスゲージ
〔Law and order法と秩序 ++[80]+++++++ Chaos混沌〕