知らぬが兎

深海めだか

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高校ー宿題と答え合わせー

※十五話

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「逃げちゃダメだよ」

 伸びてきた腕に絡め取られて、あっけなく元の位置に引きずり戻される。
 犬のように四つん這いになったまま、熱い肉棒が容赦なく挿入された。圧倒的な熱と質量に内臓を押し潰され、口の端から、飲み込みきれない唾液をだらだらと溢す。

 そのまま律動が始まるかと思っていたのだが、朔は最奥の行き止まりまで進むと、急にぴたりと動きを止めた。

 止まって、くれた……? 

 少しだけ安堵していると、朔の手がぴくぴくと痙攣する腹を優しく撫ぜた。そのまま、ナカの形を教え込むように、じわじわと力を入れながら圧迫され、腹の中に入っている性器をより意識してしまう。

「う、ぁ……」
「お腹いっぱいなの分かる? ここにね、俺のが詰まってるんだよ」
「わかった、わかったから…ッはぁ…そこ、押すのやめろ……~!」
「え~楽しいのに。まぁいっか、じゃあ始めるけど……飛ばないでね」
「え、~~~ッか、は……っ!! ぎ、ぁっ、ひ…アっ、あ"ッーー!」

 突然始まった激しい動きに、目の裏で火花が散った。固く張ったペニスで容赦なく前立腺を擦られると、絶叫に近い嬌声が勝手に口から押し出される。止めようにも、自分では、もうどうにもならなかった。

 時折り思い出したように悪戯にブジーを動かされて、過ぎた快感に泣き喚く。
 射精で発散することができない体は、どうしようもないほど昂っていき、腹の奥で何かが暴れているような気さえした。

「だ、したいッ! ださせて…くれよ、なぁ"……!!」
「うんうん、そのままメスイキしちゃいな」

 ぐりっと尿道口を爪で抉られ、塞がれた棒の隙間から、涙のような先走りが漏れた。視界に星が舞い散って、体がびくんと大きく跳ねる。

「ぁ"、イく、イっちゃ、ァ、あぁ"~~~!!!」
「はい。メスイキ2回目、おめでとう」
「はぁ、——ふ、はっ……、はぁ」

 汗だくでベッドに倒れ込むとシーツに性器が擦れて太ももが震えた。もう指一本すら動かせない。心の底からそう思ったのは人生で初めてだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 うつ伏せのまま顔だけを横に向けてぜぇはぁと荒い息を吐いていると、後孔から抜かれた性器が、何故かこちらに近づいてきた。なんだか嫌な予感がして、咄嗟に口を閉じる。

 案の定よからぬことを考えていたらしい朔は、不機嫌そうに眉を顰めた。
 ざまあみろ、バカ朔。少しでも意趣返しが出来たような気分になって、心の中でせせら笑う。しかし、その余裕も長くは続かなかった。

「こーちゃーん、口開けて」
「…………」

 優しい声音とは裏腹に、目の前に差し出されたのはグロテスクな陰茎。言葉にされていなくても、何を望まれているのかは一目瞭然だった。

 絶対に嫌だ、意地でも開けない。強く下唇を噛んで目を閉じ、言外に拒否の意を伝える。当然朔がそれで納得してくれるわけもなく、顎を強く掴まれ、強制的に目を合わせられる。

「虎徹」

 ただ名前を呼ばれただけなのに、ビクリと肩が跳ね上がる。それほどまでに、躾という名の暴力的な快楽が体に染み付いていた。
 もし言う事を聞かなければ、もっと酷い事をされるかもしれない。

 その恐怖心から恐る恐る口を開き、きつく目を瞑って、舌先でチョンと陰茎に触れた。舌に伝わる火傷しそうなほどの熱さと、なんとも言えない雄くさい臭いに目眩がした。

 これ以上どうすればいいのかと、固まっていた矢先、褒めるように優しく頭を撫でられた。もう許されたのだと、ホッと緊張の糸が緩み、強張っていた体から力が抜ける。

 瞬間、ゴポッ、と自分の喉からしてはいけない音がした。

「歯は立てないでね」
「お"…ぅ、……? ご、…お"ェっ!」
「あ~いい。こーちゃんの口まんこ最高」

 一瞬何が起こったのか理解できなかったが、後頭部を掴まれ、思い切り腰を叩きつけられたらしい。
 とんでもない質量と熱さが喉奥をミチミチと押し広げ、本能的に何度もえずく。
 太ももを思い切り叩いたり引き剥がそうとしたりと、在らん限りの抵抗をしてみたけど、糠に釘、もう全く効いてない。

 まるでオナホを使っているかのように激しく腰を振られ、呼吸なんてとても出来ない。
 酸欠で頭がぼうっとしてきて、もうダメだと思った時、腰の動きがピタリと止まった。ちんこは相変わらず喉奥に捩じ込まれたままだったけど、動かれるよりはずっとマシだ。
 慌てて鼻から息を吸い、なんとか呼吸を整えようとしていると、朔がおもむろに口を開いた。

「そういえばさ、こーちゃん。中学校での文化祭のこと覚えてる?」
「………?」

 唐突に投げかけられた質問に、疑問符しか浮かばない。それって今、このタイミングでする質問か? 
 
 そもそも口が塞がれているこの状態で、返事などできる筈もない。……でも一つだけ、文化祭と言われて思い出す出来事があった。
 俺が犯人だと疑われて、朔が庇ってくれたあの時。
 あの強い背中と優しい声だけは、一度も忘れたことなどなかった。--なのに、蓋を開けてみればこんなレイプ野郎だったなんて。このご立派なちんこを噛みちぎって、二度と使い物にならなくしてやりたい。

 そんなことを考えていた時、喉奥からずるりとちんこが引き抜かれた。唐突に入り込む酸素に蒸せながら、なんの気まぐれだと顔を上げる。
 そこで見たのは、異様な光景だった。恋する少女のように目をとろかせ、頬を上気させた幼馴染の顔。その唇がゆっくりと開くのを、まるでスローモーションみたいに眺めていた。

「あれさ、やったの俺ね」

 一瞬何を言っているのか理解できなくて、肺に空気が詰まった。

あれさ、やったの、おれ、ね。

 じわじわと浸透する遅効性の毒のようなそれが脳髄を犯していく。待って、やめろ、気付きたくない。風船に針が刺さったみたいに、俺の中で大事にしていたものが弾け散った。

「……かひゅッ、……ごほっ、ケホッ…!!」
「あの時のこーちゃん可愛かったな、泣きそうな顔で俺の背中握ってきた時なんてもう最高だった。俺勃起しそうでヤバかったんだよ」

 詰まっていた息を必死に吐き出して、生きるため、なんとか呼吸を繰り返す。耳に流し込まれる言葉など、何一つとして聞きたくはなかった。

「他に友達もいないから、何か忘れたときはいっつも俺に頼ってきたもんね。こーちゃんに返してもらった体操着でさぁ、オナニーしてたんだよ俺」

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
 カァッと体が熱くなって、胃液が迫り上がってくる。口の中に酸っぱい味が広がって、舌に残るえぐみと最低な割合で混ざり合った。
 もう我慢なんてできなくて、吐瀉物を思いっきりぶち撒ける。

「ゲェッ、ぅおぇ"……! ぉ"、えッ——」

 ベッドではなく床に吐いたのは、無意識のうちの気遣いだった。
 だって朔は、さっちゃんは。いつだって庇ってくれた、いつだって、俺の味方でいてくれたのに。

 優しく背中をさする手が気持ち悪い。俺に触るな! 叫ぼうとした言葉は、不自然に掠れて声にすらならなかった。
 視界が滲んで、ぐらぐらと揺れる。部屋に充満する吐瀉物のにおいが、さらなる嘔吐感を呼び起こした。
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