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46.王女の危険な告白

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そして、シュエット王国にアグレット帝国の軍が攻めてきたという知らせを受けて、渋々3人で迎撃へ向かわなければならなくなった。



――この戦争が無事に終わったなら、もう認めましょう。私がアナタを愛していると。



迎撃戦は成功し、彼女に戦争の後遺症が残るのではと心配したが、それは杞憂だった。彼女にとって、私という存在がいることで、どうやら精神を保てるようだった。彼女と行動を共にして気付いたことがある。どうやら彼女は、食事の味があまりしないようだった。そして腹も空かないようだった。彼女が別の世界から憑依していることと何か関連しているのだろうか?



帰還中、彼女を私の馬に乗せ、休むようにいう。彼女は大人しく従い、眠りに落ちた。隣にはウルスウドラが並走していた。彼女が眠っているのを念入りに確認しウルスウドラに声をかけた。



「ウルスウドラ、私の下につきませんか?」



「お前の?冗談はよせ。」



「しかし、このままではいずれ、裏の社会の主導者という立場が王女を苦しめてしまいますよ。」



「…そんな日はこない。どうみてもティアナはお前にご執心だ。」



「貴方の組織ごと騎士団として雇いたいと思っています。私はエヴァレーン国の宰相ですから、そのくらいのこと造作もないことですよ?」



「……本気か?」



「えぇ、本気です。皆にまっとうな人生を歩ませるのです。それに…私の下につくことで、ティアナがアナタに抱いている罪悪感を拭い去ることもできるでしょうね。」



「…考える時間をくれ。」



「えぇ、どうぞ。」



その後、無事にシュエット城へ帰還を果たした。ウルスウドラは最終的には私の下につくことに同意した。



エヴァレーン王国帰還後、私は彼の組織を騎士団として正式に編入し、王宮内での新しい任務を与えた。ウルスウドラは驚きと共に、その責務を果たすことを誓った。



そして、その後スティグルからミハエルとの件の報告を受けた。洗脳を解くためとはいえ、彼女の唇がミハエルの唇に触れたことに嫉妬し、羽ペンを何本か折ってしまった。それから仕事が手につかず、自ら彼女の監視を続けていると都合の良い瞬間が訪れた。彼女は薬剤室でこれからの方針を決めかねている様子だった。また勝手に、無謀なことをしようとしている彼女を止めに薬剤室へ足を踏み入れた。



「何やら、とても興味深い話が聞こえてきたようですね。」



「バルサザール…あなた、いつからここに…?」



「ちょうど、殿下が私に自白剤を飲ませようと企んでいらっしゃるところからです。」



「な、何のことかしら。聞き間違いじゃない?」



「いいえ、聞き間違いではありません。あなたとの婚姻をあっさりと取り付け、好色女のような振る舞いをしながらも、あなたの目は常に私に向いていましたから、何か…企みがあると思い、監視を続けていました。」



「おかしいと思いませんでしたか?」



私は彼女に詰め寄った。顔を近くに寄せただけで、彼女の口元は嬉しさを噛みしめているかのような気がした。



「何故私が、あんなにも早くシュエット王国に辿り着いていたか。」



私はわざと彼女の耳元で甘く囁いた。



「偶然ではないことはお分かりでしょう?王女殿下?」



彼女の肩に手を置いた。私は彼女の目をじっと見つめたが、それ以上見つめていると思わず唇を奪ってしまいそうだったので、パッと離れて背筋を伸ばし、表情を引き締めた。



「別に知られて困ることはほとんどありませんでしたからね。」



「…本当に?今すぐ自白剤を飲んで証明できる?」



私は腕を組み、ゆっくりと首を振った。



「今は…知られて困ることができてしまったんです。」



――アナタを愛してしまったのですから。



「知られて困ること?」



私は軽くため息をつき、彼女の目を避けるように視線を逸らした。そして、再びゆっくりと顔を近づけ、耳元で囁くように言った。



「王女殿下、無粋なことはおやめください。」



「な、何を…」



「スティグル、強力な自白剤をお願いします。あぁ、できれば…記憶が残るもので。それと錠剤にしていただけますか?」



「畏まりました。」



スティグルは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、薬棚の方へ向かった。



「知っていましたか?スティグルは私の忠実な部下なのです。」



そう言うと彼女は酷く困惑した顔をしていた。それが面白くて可愛いと思ってしまった。



「どういうこと?」



「その通りです、王女殿下。私はバルサザール様に忠誠を誓っております。」



スティグルは淡々と魔道具を取り出して、それを用いて調合した自白剤を錠剤にし、私に手渡した。



「さて、王女殿下。お薬の時間でございます。」



彼女は恐怖に駆られ、ウルスウドラに助けを求めるように視線を向けた。



「ドラ!!助けて!!」



しかし、ウルスウドラは視線を逸らし、「ごめん…。」と呟いた。



私はジリジリと詰め寄り、彼女の反応を楽しんだ。



「やっ…。」



彼女は小さな声で抗議し、後ずさりしたが、私の圧迫感に動けなくなった。



――なんて愛らしい声で鳴くのでしょう。しかし…あのミハエルと口付けを交わしたのが気に入りませんね。



私はゆっくりと首を傾げながら、目を細めて話し始めた。



「あぁ、そういえば…あの男に口付けをしたそうですね?」



「あの男ってミハエルのこと?」



「えぇ、そうです。そんなことをせずとも…処分してしまえば良かったのでは?」



「流石にそれは可哀想でしょ!?」



「そうですか。可哀想だからと、あなたは誰とでも口付けを交わすと?」



「は!?そんなわけないでしょ!?ミハエルは私が…。私の存在のせいで彼の人生を狂わせてしまったから…それで…。」



「スティグル、効果時間は?」



「5分ほどです。」



スティグルは素早く動き、水が入ったコップを私の手の届く位置まで差し出した。



私は冷静に頷き、「十分でしょう。」と答えた。私はコップを受け取った。



私は錠剤を口に含むと、彼女の方に顔を近づけた。そして、私は彼女の唇に自分の唇を重ね、錠剤を口移した。彼女は迷わずそれを飲んだ。



私は笑みを浮かべ、彼女の顔を覗き込んだ。「さあ、王女殿下。お答えください。」



「何を?」彼女は不安げに私を見つめる。



「どうして、迷いなく、私を伴侶とすることを望んだのかをです。」



その瞬間、彼女の瞳が揺らぎ、数瞬後に自白剤の効果が現れ始めた。



「バルサザール…私はあなたを愛しているから。ずっとあなたのことを考えていたの。あなたの冷酷な瞳、冷静な判断力、全てが私を引きつける。あなたの側にいるだけで心が満たされるの。」



――あぁ、やはりアナタは私を愛していたのですね。



「この世界は乙女ゲームの中の世界なの。私は現実の世界から転生してしまった。最初は戸惑ったけど、あなたに出会った瞬間に全てが変わったの。」



――ゲームの世界というのはわけがわかりませんが、物語の世界という意味でしょうね。



「続けてください。」



「私の前世では、あなたはただのキャラクターだった。でも、今は違う。あなたは私の全てなの。あなたの冷たい目で私を見つめるたびに、心が震える。あなたの言葉一つ一つが私の魂を揺さぶるの。私はあなたのためなら何でもする。あなたのためならどんな犠牲も厭わない。」



――やはり私が物語の世界の一人だということでしょうか?いったいどれだけの期間、私を愛してくれているのでしょうか。



彼女の瞳から涙がこぼれはじめた。その涙を拭いたいという思いを今は必死に止めた。



「バルサザール、あなたがいないと生きていけない。あなたのためにこの世界に転生したのかもしれない。私の全てはあなたのもの。あなたが望むなら、私は何でもする。」



――生まれて初めて、心地良い気分になった。全てが満たされるとはこういうことなのでしょうか?



「本心なのですね…。」



「本心。あなたが私の全て。私はあなたのために生きているの。あなたがいないと意味がない。」



「では、私以外の男性は眼中にないと?」



「あなた以外には誰も…いない。」



――いよいよ…私も、正直になるべきですね。
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