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44.二つの人格
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―バルサザール視点―
王宮に帰るなり、私は王女を部屋へ連れて行き、ドアを閉めるとすぐに観察した。――やはり、本来の王女らしからぬ目。私の両親だ。私は捨て子だったが、父も母は本当に私を愛し育ててくれた。その目と王女が私を見つめる目が同じだった。
「ルナティアナ王女殿下、あなたという方は、またしても食事を抜かれたようですね。」
私は深いため息をつき、テーブルの上に並べられた食事を手に取り、彼女の口に無理やり押し込んだ。
「え、ちょっ…バルサザール…」
――こうでもしないと、彼女は食事を抜く。一口、また一口と彼女の口に押しやった。
――何故嬉しそうにする?
「殿下、あなたの健康は王国にとって重要です。私にとっても、あなたが健康であることが最優先です。」
「バルサザール、本当にありがとう。でも、自分で食べられるから…」
――まただ。またアナタは優しい声で私の名を呼び、礼を口にする。
「いいえ、殿下。今夜は私がしっかりと見届けます。」
私はまた食事をすくい彼女の口に運んだ。
「バルサザール、本当に心配してくれてありがとう。これからはちゃんと食事をとるわ。」
――なんて愛らしい。
「あなたには健康でいていただかないと困ります。」
私としたことが彼女を愛らしいと思ってしまったのか?ありえない。
「これからはもっと気をつけます。」
「それでいいのです、殿下。」
その後も私は彼女の監視を続けた。困ったことに時折目が合ってしまう。どうやら彼女も私を目で追っているようだった。互いに監視しているにしては…あれはどう見ても、私に熱い視線を送っているようにしか見えない。気のせいだろうか?
そして彼女は相も変わらずラーカンと謎の演技を続けていた。彼女がラーカンに向ける視線には、以前の横暴さや我儘さが見当たらない。むしろ、彼に対して敬意や感謝の念を抱いているかのようだ。
――何故、こうもモヤモヤとしてしまう?
数日後、ドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と声をかけると、侍女が慌てた様子で入ってきた。
「王女殿下がまた食事を抜かれています!」
私は深いため息をつき、書類から目を上げた。
「またですか。」
こうして彼女を探し回るのは何度目だろうか。最近、彼女はよく薬剤室にいることが多い。私は急いで書類を片付け、薬剤室まで出向くことにした。
薬剤室に到着すると、ルナティアナ王女がスティグルと何気ない日常会話をしている姿が目に入った。その光景に、私は不快感を覚えた。彼女の行動に対する苛立ちが募る。
――食事を取らずに何故ここにいる?
その時、ラーカンがやってきたので、私は彼に声をかけた。
「丁度良いところにいらっしゃいました。私が王女殿下を探し回っていると伝えてください。そして昼食をとるように…と。」
ラーカンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに敬意を込めて答えた。
「畏まりました。」
彼は私の指示を受け、王女に向かって歩き出した。私はその様子を見守りながら、内心の苛立ちを抑えようと努めた。ルナティアナ王女の奇妙な行動は続いており、私の心に不安と疑念が渦巻いていた。
しばらく身を隠し、彼女が薬剤室から出てくるのを待った。ラーカンと共に出てきた彼女のあとを、悟られぬようにつけた。彼女が廊下で足を止め、「軽食を部屋に運んでもらうようにしようかしら…」と独り言をつぶやくのが聞こえた。
私はゆっくりと彼女に近づき、声をかけた。
「王女殿下。お時間よろしいでしょうか。」
彼女は驚いたように振り返り、「あ…バルサザール、どうしたの?」と尋ねた。
私は彼女を見つめ、軽く一礼した。
「お昼食を取られていないと聞きましたので、ご様子を伺いに参りました。」
「あぁ…ちょっと立て込んでいて忘れてたの。」
「それならば、食堂でご一緒にいかがでしょうか?お話ししたいこともございます。」
彼女は少し考えた後、頷いた。
「そうね、軽食をお願いしようと思っていたところよ。ありがとう。」
私は軽く頷き、手を差し出した。
「では、参りましょう。」
彼女は私の手を取り、私たちは共に食堂へ向かった。歩く間、彼女の表情はとても幸せそうだった。愛のこもった眼差しをむけられて、何故か嬉しく思ってしまう自分がいた。食堂に到着し、彼女を座らせると、事前に食事の準備を頼んでいたので、すぐに食事が出てきた。
「それで話って?」
私は彼女の隣に座った。
「殿下、最近のご体調はいかがでしょうか?」
「体調は…問題ないわ。」
「それは何よりです。ただ、私たちには今後の計画について話し合うべきことがあります。」
「計画?」
「はい。王がアナタの婿を探しておりました。先日の事件で、早々に王女殿下には信頼できる伴侶が必要だと考えているようです。」
この話は彼女を焦らせる為の嘘だった。
「婿…?そんな話、一度も聞いていないわ。」
「それもそのはずです。王は慎重に事を運ぶため、まだ公式に発表していないのです。しかし、近いうちに候補者が王宮に招かれる予定です。」
「そんな…急すぎるわ。」
「殿下、ご心配は無用です。王はあなたの幸せを何よりも優先しています。ですが、この機会を逃すわけにはいきません。」
「バルサザール、あなたはこの計画についてどう思っているの?」
「私は、隣国のチュニックスの第二王子等がよろしいかと…。」
「他国の殿方でないといけないのかしら?例えば…重役の方々とか?」
――おや?やはり私が良いようですね?もう少しいじめてさしあげましょう。
「何をおっしゃっているのですか、殿下。重役の方々は年寄りと既婚者ばかりで、一番若い私でさえも殿下より一回りも年上です。」
「でも、私は自分の意思で決めたいのです。他国の王子であろうと、重役であろうと、私の伴侶は私が選びたい。」
「かしこまりました、殿下。王と相談し、あなたのご意思を伝えます。」
彼女の可愛い焦りっぷりを見て、私は内心満足していた。彼女の決意と感情がその瞳に映り、私に伝わってくる。食事を取りながらも、彼女の気持ちに寄り添うことができるこの時間が、私にとっても貴重なものとなっていた。
その夜、スティグルが執務室へ報告にやってきた。
「報告に参りました。」
私は書類整理を続けながら尋ねた。
「王女のことですか?」
スティグルは深く息を吸い、続けた。
「はい。それが…どうやら別人格が王女殿下に憑依してしまったようです。」
私はペンを止めた。
――俄かに信じがたい話だったが、信じざるを得ない状況が揃っていた。
「やはり…そうでしたか。」
「信じられるのですか!?」
「えぇ、まぁ。彼女を見ていれば分かります。続けて下さい。」
私は再びペンを取り、書類に目を戻した。
「自白剤の使用先が判明しました。バルサザール様、あなた様に使用したいそうです。」
私は少し微笑み、「…あぁ、なるほど。そうきましたか。」と答えた。
「えぇ!?何か心当たりでも?」
「えぇ、まぁ。それで?」
私は書類の整理を続けた。
「もうお気づきかと思われますが、バルサザール様に恋慕を抱いているようです。」
その言葉に、一瞬心が揺れたが、私は冷静を装った。
「やはり、そうですか。」
「いつからお気付きに?」
「…監視を始めてすぐ…といったところでしょうか。」
「流石です。どうされますか?」
「どうもしません。しばらく様子をみます。」
「承知致しました。」
「引き続き自白剤の方も…いえ、記憶が残る自白剤を用意しておいてください。強力なものを。」
私は指示を出しながら書類にサインを続けた。
「畏まりました。」
スティグルは深く一礼し、執務室を後にした。
彼の報告が去った後も、私は書類整理を続けながら思考を巡らせた。ルナティアナ王女の変化、別人格の存在、そして彼女が私に向ける視線。それら全てが一つの真実を指し示しているように思えた。
――私に自白剤…ですか。大方、自分がどう思われているか知りたいといったところでしょうか。
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――何故嬉しそうにする?
「殿下、あなたの健康は王国にとって重要です。私にとっても、あなたが健康であることが最優先です。」
「バルサザール、本当にありがとう。でも、自分で食べられるから…」
――まただ。またアナタは優しい声で私の名を呼び、礼を口にする。
「いいえ、殿下。今夜は私がしっかりと見届けます。」
私はまた食事をすくい彼女の口に運んだ。
「バルサザール、本当に心配してくれてありがとう。これからはちゃんと食事をとるわ。」
――なんて愛らしい。
「あなたには健康でいていただかないと困ります。」
私としたことが彼女を愛らしいと思ってしまったのか?ありえない。
「これからはもっと気をつけます。」
「それでいいのです、殿下。」
その後も私は彼女の監視を続けた。困ったことに時折目が合ってしまう。どうやら彼女も私を目で追っているようだった。互いに監視しているにしては…あれはどう見ても、私に熱い視線を送っているようにしか見えない。気のせいだろうか?
そして彼女は相も変わらずラーカンと謎の演技を続けていた。彼女がラーカンに向ける視線には、以前の横暴さや我儘さが見当たらない。むしろ、彼に対して敬意や感謝の念を抱いているかのようだ。
――何故、こうもモヤモヤとしてしまう?
数日後、ドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と声をかけると、侍女が慌てた様子で入ってきた。
「王女殿下がまた食事を抜かれています!」
私は深いため息をつき、書類から目を上げた。
「またですか。」
こうして彼女を探し回るのは何度目だろうか。最近、彼女はよく薬剤室にいることが多い。私は急いで書類を片付け、薬剤室まで出向くことにした。
薬剤室に到着すると、ルナティアナ王女がスティグルと何気ない日常会話をしている姿が目に入った。その光景に、私は不快感を覚えた。彼女の行動に対する苛立ちが募る。
――食事を取らずに何故ここにいる?
その時、ラーカンがやってきたので、私は彼に声をかけた。
「丁度良いところにいらっしゃいました。私が王女殿下を探し回っていると伝えてください。そして昼食をとるように…と。」
ラーカンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに敬意を込めて答えた。
「畏まりました。」
彼は私の指示を受け、王女に向かって歩き出した。私はその様子を見守りながら、内心の苛立ちを抑えようと努めた。ルナティアナ王女の奇妙な行動は続いており、私の心に不安と疑念が渦巻いていた。
しばらく身を隠し、彼女が薬剤室から出てくるのを待った。ラーカンと共に出てきた彼女のあとを、悟られぬようにつけた。彼女が廊下で足を止め、「軽食を部屋に運んでもらうようにしようかしら…」と独り言をつぶやくのが聞こえた。
私はゆっくりと彼女に近づき、声をかけた。
「王女殿下。お時間よろしいでしょうか。」
彼女は驚いたように振り返り、「あ…バルサザール、どうしたの?」と尋ねた。
私は彼女を見つめ、軽く一礼した。
「お昼食を取られていないと聞きましたので、ご様子を伺いに参りました。」
「あぁ…ちょっと立て込んでいて忘れてたの。」
「それならば、食堂でご一緒にいかがでしょうか?お話ししたいこともございます。」
彼女は少し考えた後、頷いた。
「そうね、軽食をお願いしようと思っていたところよ。ありがとう。」
私は軽く頷き、手を差し出した。
「では、参りましょう。」
彼女は私の手を取り、私たちは共に食堂へ向かった。歩く間、彼女の表情はとても幸せそうだった。愛のこもった眼差しをむけられて、何故か嬉しく思ってしまう自分がいた。食堂に到着し、彼女を座らせると、事前に食事の準備を頼んでいたので、すぐに食事が出てきた。
「それで話って?」
私は彼女の隣に座った。
「殿下、最近のご体調はいかがでしょうか?」
「体調は…問題ないわ。」
「それは何よりです。ただ、私たちには今後の計画について話し合うべきことがあります。」
「計画?」
「はい。王がアナタの婿を探しておりました。先日の事件で、早々に王女殿下には信頼できる伴侶が必要だと考えているようです。」
この話は彼女を焦らせる為の嘘だった。
「婿…?そんな話、一度も聞いていないわ。」
「それもそのはずです。王は慎重に事を運ぶため、まだ公式に発表していないのです。しかし、近いうちに候補者が王宮に招かれる予定です。」
「そんな…急すぎるわ。」
「殿下、ご心配は無用です。王はあなたの幸せを何よりも優先しています。ですが、この機会を逃すわけにはいきません。」
「バルサザール、あなたはこの計画についてどう思っているの?」
「私は、隣国のチュニックスの第二王子等がよろしいかと…。」
「他国の殿方でないといけないのかしら?例えば…重役の方々とか?」
――おや?やはり私が良いようですね?もう少しいじめてさしあげましょう。
「何をおっしゃっているのですか、殿下。重役の方々は年寄りと既婚者ばかりで、一番若い私でさえも殿下より一回りも年上です。」
「でも、私は自分の意思で決めたいのです。他国の王子であろうと、重役であろうと、私の伴侶は私が選びたい。」
「かしこまりました、殿下。王と相談し、あなたのご意思を伝えます。」
彼女の可愛い焦りっぷりを見て、私は内心満足していた。彼女の決意と感情がその瞳に映り、私に伝わってくる。食事を取りながらも、彼女の気持ちに寄り添うことができるこの時間が、私にとっても貴重なものとなっていた。
その夜、スティグルが執務室へ報告にやってきた。
「報告に参りました。」
私は書類整理を続けながら尋ねた。
「王女のことですか?」
スティグルは深く息を吸い、続けた。
「はい。それが…どうやら別人格が王女殿下に憑依してしまったようです。」
私はペンを止めた。
――俄かに信じがたい話だったが、信じざるを得ない状況が揃っていた。
「やはり…そうでしたか。」
「信じられるのですか!?」
「えぇ、まぁ。彼女を見ていれば分かります。続けて下さい。」
私は再びペンを取り、書類に目を戻した。
「自白剤の使用先が判明しました。バルサザール様、あなた様に使用したいそうです。」
私は少し微笑み、「…あぁ、なるほど。そうきましたか。」と答えた。
「えぇ!?何か心当たりでも?」
「えぇ、まぁ。それで?」
私は書類の整理を続けた。
「もうお気づきかと思われますが、バルサザール様に恋慕を抱いているようです。」
その言葉に、一瞬心が揺れたが、私は冷静を装った。
「やはり、そうですか。」
「いつからお気付きに?」
「…監視を始めてすぐ…といったところでしょうか。」
「流石です。どうされますか?」
「どうもしません。しばらく様子をみます。」
「承知致しました。」
「引き続き自白剤の方も…いえ、記憶が残る自白剤を用意しておいてください。強力なものを。」
私は指示を出しながら書類にサインを続けた。
「畏まりました。」
スティグルは深く一礼し、執務室を後にした。
彼の報告が去った後も、私は書類整理を続けながら思考を巡らせた。ルナティアナ王女の変化、別人格の存在、そして彼女が私に向ける視線。それら全てが一つの真実を指し示しているように思えた。
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