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26.孤独を埋める熱い思い

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廊下の大理石の床は冷たく光り、壁には古びた絵画が並んでいる。柔らかい光がステンドグラスを通って差し込み、淡い色彩が周囲に広がる。廊下の隅々まで広がる静寂が、私たち二人だけの空間を作り出していた。



――まるで…私たち二人だけの世界みたい。



バルサザールは私を見つめ、その冷静な瞳には微かな微笑みが宿っていた。彼の優しいその表情が私の心を揺さぶる。私は彼の視線を受け止め、彼に心を奪われていた。



「シュエットでのやることは終わったの?」



「えぇ、まぁ。」



「そっか…。」



「さて、私の部屋にでも攫っていきましょうか。」



彼の声は低く、まるで甘い囁きのようだった。



彼の言葉に驚きながらも、私は彼の腕が私を包み込むのを感じた。彼は優しく私を抱きかかえ、両腕で背中と膝裏を支えるように持ち上げた。



――えぇ!?お姫様抱っこ!?



「ちょっ!?バル!これは…。」



「王宮の者にティアナは私のものだと見せつける必要がありますから。」



「えぇ!?あるの!?」



「うるさい口ですね?そんなに私の唇で塞いで欲しいですか?皆の前で。」



彼は挑発するように微笑み、その瞳にはいたずらな光が宿っていた。



私はとっさに両手で自分の唇を塞ぎ、首を左右に振った。彼は微かに笑みを浮かべ、私の反応を楽しんでいるかのようだった。



「そう、素直でよろしいですね。」



彼はさらに優しく私を抱きしめ、その腕の中で感じる体温と心臓の鼓動が、私の心をさらに高鳴らせた。



バルサザールの冷静な瞳が私を見つめる度に、まるで全てを見透かされているような気がした。その視線の中には深い愛情が見え隠れしていた。



廊下を進むたびに、周囲の人たちがざわついているのが聞こえた。王宮の廊下を行き交う侍女や兵士たちが私たちを見つめ、驚きと興味の混じった表情を浮かべていた。しかし、バルサザールはそんな視線をまるで気にすることもなく、堂々とした態度で私を抱えたまま歩みを進めた。私は周囲の視線が気になって、少しだけ頬が熱くなった。



バルサザールは何事もなかったかのように、自分の部屋へと私を運び入れた。彼の部屋の扉が閉まると、周囲のざわめきは遠ざかり、静けさが戻ってきた。



バルの部屋は本と書類で溢れていた。壁には高く積まれた本棚が並び、そこには無数の書物が所狭しと並んでいた。机の上には山積みの書類が広がり、その中には地図や計画書、王室の記録などが混ざっているのが見えた。



部屋の中央には大きな机があり、その上には最新の報告書や重要な書簡が整然と置かれていた。椅子には厚手のクッションが敷かれ、長時間の作業に耐えるための工夫がなされているようだった。



「ここが、バルの部屋…。」



「私の知るアナタは、私のことを何でも知りたそうでしたから、お待たせし過ぎてしまったお詫びに連れてきたまでですよ。」



彼は私をそっと床に下ろし、そのままゆっくりと立ち上がった。部屋の中には彼の知識と経験が詰まっており、その全てが私の目の前に広がっていた。彼は手のひらを広げ、部屋全体を示すように軽く動かした。



「ここには、私の人生の全てが詰まっています。好きなだけ、御覧なさい。」



――うわぁぁぁぁ!!!推しの部屋だぁぁぁぁぁぁ!!!



私は興奮を抑えきれず、まるで夢中になった子供のように部屋の中を駆け回った。彼の服が掛かっているクローゼットに駆け寄り、手に取って頬をすり寄せる。香りがする度に心臓が高鳴り、頭の中が幸せでいっぱいになった。



「これは…普段のバルの香り…。」



続いて、彼のベッドに飛び乗り、シーツに顔を埋めた。柔らかい感触と共に、彼の温もりが感じられる気がして、私はその場でゴロゴロと転がった。



「バルのベッドだぁ…!」



ベッドの上でゴロゴロとしていると、バルサザールが静かに近づいてきた。彼の影が私を覆い、瞬く間に彼の存在感が部屋中に広がった。彼はベッドの端に腰掛け、私の動きを見守るようにじっと見つめていた。その瞳には、冷静さと熱い感情が交錯していた。



「限度というものを…知っていますか?王女殿下?」



彼の低い声が耳元で囁かれると、私はドキリとして顔を上げた。バルサザールが覆いかぶさるように近づいてきたその瞬間、心臓が早鐘のように鳴り響いた。



「あ…つい。ごめんなさい…。」



彼の瞳は冷たい光を放ちながらも、どこか柔らかさを感じさせた。その表情に圧倒されながらも、私は彼の目を見つめ返した。彼の顔がさらに近づき、息が触れる距離まで迫る。



「このようなことをされてしまいますと、まるで私を誘っているかのようですね、ティアナ。」



彼の言葉に、私は思わず赤面し、目を逸らそうとした。しかし、彼の手が優しく私の頬に触れ、顔を固定する。



「バル…。」



「ティアナ、私を惑わせるのは…おやめなさい。」



彼の声には、抑えきれない欲望と共に、私への深い愛情が込められていた。



そして、バルサザールは私の頬に触れたまま、ゆっくりと顔を近づけてきた。彼の瞳は私の目を捉え、逃さないようにじっと見つめていた。私の心臓が高鳴り、呼吸が浅くなるのを感じながら、彼の動きを見守っていた。



彼の唇が私の唇に触れた瞬間、世界が止まったように感じた。彼のキスは深く、ねっとりとした甘さが私を包み込んだ。彼の舌が私の口内を探るように動き、全ての感覚が彼の存在に集中した。



そのキスは終わりのないように感じられ、私は彼の腕の中で溶けてしまいそうだった。彼の手が私の背中に回り、優しく引き寄せられる感覚に胸が締め付けられた。彼の温もりが私を包み込み、全ての不安や孤独が消えていくようだった。



「ティアナ…。」



「バル…。」



彼のキスはさらに深まり、私たちの心が一つに溶け合うのを感じた。その瞬間、私は彼に対する愛情が全てを超えていることを確信した。彼の唇が私の唇を離れると、私は息を整えながら彼の顔を見上げた。彼の目には、私への深い愛情と欲望がはっきりと映し出されていた。



「クッ…。ハハハッ。こんなにも歯止めが利かないものなのですね。やっかいな感情を植え付けられてしまったようですね。」



彼は再び私に迫り、深く激しいキスをした。そのキスは前よりもさらに情熱的で、私は彼の熱情に飲み込まれるように感じた。



バルサザールの手が私の体に触れようとするのを感じ、心臓が激しく鼓動した。しかし、彼はその手を途中で止め、必死に自制心を保とうとしていた。彼の手は私の肌の上で震えていたが、結局は私に触れないように拳を握り締めて抑え込んだ。



「ティアナ…」



彼の声はかすれ、息が荒い。



「バル…。」



彼は深く息をついて、少し後ろに下がり、私の顔を見つめた。その目には葛藤と欲望が混じり合っていたが、最終的には冷静さを取り戻したように見えた。



「私は湯浴みをしてきますので、ゆっくりとお寛ぎください。」



「え?湯浴み?」



「えぇ、急いで帰ったので。」



バルサザールは私の頭を優しく撫で、おでこに軽くキスをして立ち上がった。その手の温もりが私の肌に残り、胸が温かくなる。



彼は部屋に備え付けられたお風呂場へ向かい、ゆっくりとドアを開けて中に入った。私は彼の後ろ姿を見送りながら、まだ心臓の鼓動が早くなっているのを感じていた。



部屋には静かな静寂が戻り、彼の残り香が漂っていた。ベッドに横たわりながら、私は彼との甘い瞬間を思い出し、その余韻に浸っていた。



――バルって、あんな激しいキスするんだ!!あれって私を好きって意味…だよね?



あれだけ孤独に感じていたのに、今は嘘みたいに心が満たされている。彼の温もりがまだ私の唇に残っていて、その感覚が心を揺さぶる。まるで夢の中にいるかのような気分だ。



バルサザールの愛情を感じるたびに、私は彼のことをもっと知りたくなる。彼の過去、彼の思い、彼の全てを。そして、私も彼の全てを知ってもらいたいと思ってしまう。
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