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10.神化の戦いと燃え上がる感情

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それから祝詞は、ある程度学んでおきたい動きを頭に入れるために、ゲームや映画や漫画をとにかく貪るように見始めた。

祝詞はテレビの前に座り、熱心に映画を見ている。画面には激しいアクションシーンが映し出されており、祝詞はその動きをじっと観察している。

「この動き…俺にもできるかな…」

祝詞は小さく呟き、次のシーンに期待を込めた目を向けた。

また別の日、祝詞は漫画を手に取り、ページをめくりながら戦闘シーンを詳細に見つめていた。登場キャラクターの動きや技の描写に注目し、その技術を自分のものにしようと考えていた。

――これなら…試してみる価値があるかもしれない。

祝詞はページを閉じ、メモを取るためにノートを広げた。そこには様々な技や動きのアイデアが書き留められていた。

さらに、祝詞はゲームのコントローラーを握りしめ、仮想の戦闘に没頭した。ゲームの中で繰り広げられる多彩な技や戦術を自分のものにするため、何度もプレイを繰り返した。

その努力の成果は次第に現れ始めた。祝詞は修行場で古美華の指導のもと、実戦形式で新しい技術を試すことができた。映画や漫画、ゲームから学んだ動きを取り入れた彼の動きは、ますます滑らかで強力になっていった。

「そろそろ…頃合いかしら。」


数日後、古美華は祝詞を地下の洞窟へと連れて行った。洞窟の入り口は暗く、冷たい風が吹き抜けていた。祝詞は一歩踏み出すたびに、足元の小石が不気味な音を立てるのを感じた。

洞窟の内部はさらに不気味だった。薄暗い通路が続き、壁にはびっしりとお札が貼られていた。古びた紙は黄ばんでおり、手書きの文字がかすかに見える。その文字は読めないが、祝詞には何か強力な呪いが込められているように感じられた。

「まるでホラーゲームみたいだな…」

祝詞は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。壁の影が揺れ動き、まるで生き物のように感じられる。祝詞は不安を抑えきれず、周囲を警戒しながら進んだ。

「大丈夫よ、祝詞君。この先に目的の場所があるから。」

通路の奥には、古い木製の扉があった。扉の表面にはさらに多くのお札が貼られており、何かを封じ込めるための強力な結界が張られていることがわかる。古美華はその扉をゆっくりと開け、祝詞を中へと導いた。

扉の向こう側には広い空間が広がっていた。そこは古びた闘技場のような場所で、中央には砂が敷き詰められており、周囲の壁には無数の傷痕が残っていた。祝詞はその場所に立ち尽くし、異様な雰囲気に圧倒された。

「ここがその場所よ。特別な結界が張られた闘技場とでもいうべきかしら。ここでは死んでも死なないわ。」

「死んでも死なない…?」

「そう。この場所では、何度でも蘇ることができるの。だから、思い切って戦えるわ。」

「戦うって…誰と?」

古美華は静かに指をさした。その先には、理人先生が立っていた。

「え…?理人先生…。」

理人先生は穏やかに微笑みながら、「こんにちは。」と挨拶をした。

古美華はその様子を見ながら、「あとは頑張ってね。私は神楽ちゃんと遊んでくるね。」と言い残し、その場を後にした。

祝詞は戸惑いながらも理人先生に向き直った。

「えっと…、よろしくお願いします。」

「遠慮はいりません。これも仕事ですから。」

その言葉の直後、理人先生の姿が一瞬にして変化した。髪色が水色に変わり、その目には鋭い光が宿った。祝詞はその変化に驚き、息を飲んだ。

「神化…!」

理人先生の放つ殺気が場を一変させた。祝詞はその圧倒的な気迫に身を震わせた。もし、殺気に耐える訓練をしていなかったら、この場にいるだけで命を落としていたかもしれないと感じた。

「この感覚…やばいな…」

祝詞は心の中でそう思いながらも、理人先生の前に立ち続けた。

「では、始めましょうか。」

「はい。」

祝詞も神化し、構える。

「それでいい。さあ、どこからでも。」

祝詞は一歩前に出て、攻撃を繰り出した。しかし、理人先生の反応は非常に速く、祝詞の攻撃を軽々とかわした。祝詞はその動きに驚きながらも、次の一手を考えた。

――もっと速く、もっと強く…。

祝詞は自分に言い聞かせながら、次々と攻撃を仕掛けた。しかし、突然ドンッという空気の重さが祝詞を襲った。瞬間、空気が凍りつき、呼吸ができなくなり、祝詞の体は動かなくなった。彼は命を終えた。

次の瞬間、祝詞は目を覚ました。試合開始前の状態に戻っていた。彼の体は無傷で、息を整えることができた。祝詞は驚きと困惑の中で周囲を見渡した。

「これが…結界の力か…」

「すみません。戦闘は100年ぶりでして…加減が難しいみたいです。」

その言葉に祝詞は心の中で煽られたような感覚を覚えた。理人の冷静な表情と、その言葉が自分の未熟さを露呈しているように感じられた。

祝詞は目を見開き、理人先生に向き直った。

「いえ、加減はいりません。」

理人先生はその言葉に少し驚いたように見えたが、すぐに微笑んで頷いた。

「分かりました。それでは、全力で参ります。」

再び戦いが始まった。祝詞は何度も挑んだが、理人先生を倒すことはできなかった。彼の技術と精神は確実に鍛えられていたが、理人先生の力は圧倒的で、全力を尽くしても追いつくことはできなかった。

その夜、祝詞は疲れた体を引きずりながら、妹の神楽の様子を見に離れに向かった。静かな夜の中、祝詞は神楽の部屋に近づいた。すると、中から神楽と理人先生の声が聞こえてきた。

「ねえ、先生、大人になったら先生と結婚したいな。」

神楽の無邪気な声が響いた。

「大人になったらね、神楽ちゃん。」

その言葉に、祝詞は立ち止まり、心臓がドクンと鳴るのを感じた。妹の無邪気な願いと、理人先生の応じる声が、祝詞の胸に強烈な感情を引き起こした。

理人に対する尊敬と感謝の念は、突然の怒りと嫉妬に変わった。彼は拳を握りしめ、理人に対する殺意が心の中に芽生えるのを感じた。

――先生みたいな人と結婚したい…?何を言ってるんだ、神楽…。

祝詞はその場に立ち尽くし、胸の中に渦巻く複雑な感情に戸惑った。彼は深呼吸をし、冷静さを取り戻そうと努めた。

理人先生が神楽に優しく接する姿を思い浮かべると、祝詞はその善意に感謝する一方で、妹を取られるような恐怖心と嫉妬が沸き起こった。

――理人先生には感謝してるけど、神楽は…妹は渡せない…。

その夜、祝詞は自分の部屋に戻り、静かに瞑想を始めた。心の中で燃え上がる怒りと嫉妬を鎮めるため、そして理人先生に対抗するために、彼はさらに自分を鍛える決意を固めた。

――俺はもっと強くなる。神楽を守るために、誰にも負けない力を手に入れる…。

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