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第二十三話【破廉恥すぎますわぁ~~~~~~~~~~~~~~!!!】

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【**、ゆっくり息をして…。】
(ゆっくり息を…あぁ…楽になったかもしれない。)
【もう、大丈夫です。目を開けられますか?】
(目を?…。)

目を開けるとヒスイがいた。
「ヒスイ?」とか細い声で聞けば微笑まれた。
「もう少し…眠って下さい。」と言ってエルメラルダの瞼に手をのせる。
エルメラルダは直ぐに眠りに落ちた。

そして再び悪夢を見る。
金色の光のヒト型が指を指した。その方向へ行かなければいけない気がして、進んだ。
煌びやかなドアがあって、ヒト型の光がドアをすり抜けて通ったので自分も通れる気がして通ってみればドアをすり抜けられた。ゆっくり進めば人の気配がした。
金色の天蓋付きベッドが見える。カーテンで良く見えないが人の影が二人…。ベッドの側には服が散らばっていた。その服には見覚えがあった。白ベースに赤の縦線…数々の勲章バッジ。
(そんな…まさか…アナスタリ…ア…様?)

エルメラルダが目を覚ますと朝だった。
しかもエルメラルダは身動きがとれない状態で、横を向けばヒスイがエルメラルダを抱きしめてスヤスヤと眠っていた。
(夢…朝だし…。でも昨日みた夢みたいな感じに本当に起こっている事だとしたら?
でも相手が誰だかわからない…。それに私はアナスタリア様を振った後だ。関わるのはやめよう。
きっと新しい相手ができたんだ。私を安心させる為に誰かが…って、あの光は…だれだったんだろう?)
「どうしたんです?朝から難しい顔して。」とじーっとエルメラルダの顔を見るヒスイ。
「ヒスイ…あっ。昨日はありがとう。」
「ん?昨日何かありましたっけ?」
「え…私体動かなくなっちゃって。」
「あぁ!魔力を使いすぎてぶっ倒れたやつですか。気を付けないといけませんよぉ。」と言ってオデコにチュッとキスをしてから起き上がるヒスイ。
「ヒスイ?」と自分も起き上がって首を傾げながらヒスイを見るエルメラルダ。
他の男性の前でぶっ倒れたというのにヒスイがこの状態なのは流石におかしいと不信感を抱いてしまうエルメラルダ。
「ん?」と流石のヒスイも首を傾げる。
(浮気してる?とか…言えないし。どうしよう…なんて聞けば…。それともヒスイのアブノーマルな性格に気付いたティファニール様が隠蔽したのかな。やっぱティファニール様に確認してからの方が良いかも。)
「ううん、別に何も。」と、何事もなかったのようにしようと決めるエルメラルダ。
「エル、嘘はいけませんね。」と言ってギュッとエルメラルダを抱きしめるヒスイ。
「え?え?どういう事?」と慌てるエルメラルダ。
「ネックレスからエルの心臓の音が伝わります…。鼓動が少し早くなりました。何か嘘か隠し事があるなーって。」とヒスイ。
「やっぱり、じゃあ私が感じてる鼓動ってヒスイの心臓の音?」と言って抱きしめられているのが、とても心地よくて安心できて目を瞑るエルメラルダ。
「ちょっ、そんな鼓動ズルイです。」とヒスイは顔を少し赤くする。
「昨日ね、魔法力の使いすぎで、ティファニール様の前で倒れちゃったの。それでヒスイ怒らないのなんでだろう?って。」と言い終えれば、ヒスイの鼓動が変な事に気付くエルメラルダ。
ヒスイは無言のままエルメラルダを抱きしめ続ける。
「ヒ、ヒスイさん?」と声をかけるエルメラルダ。
(ま、まさか…知らなかった?…でも、この反応…知らなかったっぽい…よね。あ、私やっちゃったか?)
ヒスイは抱きしめるのをやめた。その代わりエルメラルダの両手首を掴んで、ドサッとベッドに押し倒して上に覆いかぶさる。
(あ……今度こそ貞操の危機かも。)
毎日同じベッドで寝ている癖にまだ綺麗な体を保っていたエルメラルダだが、今回はとても危険な香りがしていた。だけどエルメラルダは好奇心というものもあり、顔を赤らめながら体を少しモジらせてしまう。
カプッと…首筋を噛まれた。
「へ?」と目が点になるエルメラルダ。
だけど直ぐに熱を持った痛みがエルメラルダを襲った。
「い゛、い゛っ…痛いっ…んっ!!ヒスイっ!!いっ…痛いっ!!んんっ!!」と苦痛の声を上げるエルメラルダ。
ゆっくりとヒスイは唇を離した。何かシュ~~~っと煙のような何かを察知した。
「……どれ。綺麗につきましたね。」と言って恍惚に笑むヒスイ。
何をされたのかサッパリわからないという顔のエルメラルダ。
「さて、じゃあ朝食を食べに本館へ行きましょう。」と逆に機嫌が良くなったヒスイ。鼻歌なんかを歌いながらベッドから出て服を着替え始めた。
「え…何されたの私。」と、いつの間にか痛みの治まった首を抑えながらベッドを出て朝の準備を始めた。
「そういえばエルって、何でも自分でやっちゃいますよね。メイド呼びましょうか?というか付けましょうか?」とヒスイはシャツのボタンを占めながらエルメラルダを見る。
「え?うん、うちの家はそんなお金持ちとかじゃなかったから、むしろド貧乏だったから全部自分でやってたよ?そんなメイドを頼む時代とかでもなかったし。みんなが平等に自立してたからね。まぁ王族だけじゃないかなメイド雇ってたの。」と淡々と支度をするエルメラルダ。
「苦労してたんですね。」と言ってエルメラルダの支度を手伝うヒスイ。
エルメラルダは鏡の前に立った。
「ん?なにこれーーーーーー!!!!!」と大きな声をだして驚くエルメラルダ。
首筋に変な緑色の紋章のようなものが浮き上がっていた。
「お仕置きです。まぁ、一ヶ月は持ちますかね。本当は全身にこの紋章が広がって…とんでもない事になるはずなんですけど、聖属性の阻害が入ってしまって、これだけしか入りませんでした。」と少し残念そうな顔をするヒスイ。
「これって何ですか?ヒスイさん。」と恐る恐る変な口調になりながらも聞いてみるエルメラルダ。
「それですか?王族には好みの異性にマーキングをする事ができます。解呪方法は聖女のみ。つまり実質母上にしかできません。マーキングされた異性は、紋章のせいで他の異性に近寄られるといった事はまぁされませんよね。王族に逆らうなんて恐れ多いですから。」とサラッと恐い事を言いながらエルメラルダの髪の毛を見事にアップして美しく見えるようにセットした。
「…コレってどうやってつけてるんですか?」と顔を青くさせながら質問するエルメラルダ。
「血液を流し込みます。だからうーーーんと大昔に廃止されちゃったんですよね。」とヒスイ。
「血液…。」とんでもない事実を聞いて首の紋章を抑えながら完全に青ざめるエルメラルダ。

朝食をとる為に本館に移動した二人。
食堂にはエルメロイとティファニールがいて、茫然として思わず口を開ける二人。
「人の大事な妹に何してくれてんだ!!!!」とヒスイの胸倉を掴んで揺さぶるエルメロイ。
「あぁ。知ってるんですか。」と飄々としているヒスイ。
「お前の秘書になった時に禁書の棚の本全てに目を通したぞ!!!」と怒鳴るエルメロイ。
「に、にー様…それは禁止されているはずじゃ…。」とワナワナするティファニール。
「ティ、これは禁止されているわけじゃありません、廃止されたんです。使うな…とはどこに表記されてませんし、そういった法律もありませんので問題ありません。」と爽やかな笑みを浮かべて説明するヒスイ。
「妹が汚れてしまった…。」と床に手をついて落ち込むエルメロイ。
「ち、違うから!!これだけだから!!他に何もやってないから!!」と慌ててフォローするエルメラルダ。
「他にって他に何があるんですか?僕わかんなーい。教えてー?」と可愛い甘えた声を出して、茶化すティファニール。
「えっ!?いや、そのっ///」と顔を赤くさせるエルメラルダ。
「俺の妹があああああああ!!!!!」と顔を青くさせて頭を抱えるエルメロイであった。
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