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63p【護】

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「早くAIにはめろ。」
Shiftさんは僕に早くAIを装備して育てろと言ってきた。
「あー、ちょっと先に中央広場の噴水へ行きたいです。迎えにいかないといけない人がいるんで。」
「パーティーくれ。ついてってやるから。」
Shiftさん自らパーティーを組んでくれるようで驚いてしまった。
「ありがとうございます。」
Shiftさんって、口は悪いし性格も悪いけど、悪い人じゃないっていうか、優しい人なのが、なんとなくわかってきた。
3人で歩いて中央広場の噴水へ向かった。

中央広場の噴水について、回りを見回すとカップルが多くて驚いた。
「おえぇ。ここはいつ来ても吐き気がするな。」
Shiftさんは吐いた真似をする。
「何言ってるの?ギル員に聞いたけど、アナタもっ…むぐっ!?んー!!」
Shiftさんが一瞬目を見開いて焦って咲の口を手でふせいだ。
「おい、俺の情報をリークした奴誰だ。精神汚染クエストツアーに招待してやる。」
(絶対行きたくないツアーだ。)

噴水の回りを歩くと、綿菓子屋さんがあって、綿菓子を売ってる青年に声をかけた。
「あの!!」
その青年は70階で会ったセーレさんの見た目とは全然違い、プラチナブロンドの髪に青い目、白い肌でとても普通といえば普通の見た目だった。
勇気を振り絞って青年の前に立って「あの!!迎えに来ました。」と声をかけた。
すると、青年は儚げな笑みを浮かべながら「本当に来てくれたんだね。」と言って目を潤ませる。
「タマゴも用意してきました。」
「は?NPC?」とshiftさんが眉をひそめる。
「今からそこへ入ります。僕が完全に自我を失ったのを確認したら、はめ込んで下さい。」とNPCはニコリと微笑んで、次の瞬間真顔に戻って「いらっしゃいませ。綿菓子いかがでしょうか?」と言われてしまった。
「いえ。すみません。」と綿菓子屋さんから離れて、スマホを操作しAIの卵を拡張した穴にはめこんだ。

すると[名前を入力してください。]とホログラム画面がでてきた。
(名前かぁ。つけにくいなぁ。セーレじゃダメだよな。)
「名前で悩んでるの?」と咲。
「あ。うん。」
「名前なんて適当につけりゃいいだろ。」とshiftさんが面倒そうに言う。
「そういえばshiftさんのAIってどんな名前なんですか?」
「あ?ctrlコントロールaltオルトescエスケープだけど?」
(うわぁ。なんだろう、きっとこの人、名前に対して無感情というか…なんか変わってる?)
「shiftさんらしいつけ方ですね。」
「は?俺を適当な人間だっていいのか?」
「いえっ、そういうわけでは。」
「りきは私の時どういう感じで名前をつけたの?」
「え?えーっと。咲を見た時、心に花が咲いたような気持ちになって僕の中で満開の桜が咲くイメージだったんだ。それで咲って名付けたんだ。」
「セーレにはどういうイメージを持ってるの?」
「えーっと、あったかくて見守ってくれてるような。んー。そっか。よし。まもるにしようかな。」
僕は早速名前を打ち込んでフリガナも打ち込んだ。
「さて。晩餐の時間だ。帰るぞ。」とShiftさんがゲートをだしてくれた。
「ありがとうございました。一緒にいてくださって。」
「あ?あぁ。まぁ。そういう方針だからねぇ。」
Shiftさんはパーティーを抜けて大広間の幹部席に座った。
「おかえり。」とシンさんから声がかかって。
「うわぁっ!?シ、シンさん。た、ただいま。」
(忘れてた。めっちゃ気不味い状況だったんだった。)
「今日は、その、ごめん。気にしなくていいから。ルナに色々聞いて納得できたし、リキはリキだから。」
申し訳なさそうな顔をするシンさん。
「シンさん、ありがとうございます。」
僕はシンさんに微笑みかけた。すると、シンさんも少し微笑んで幹部席へ戻っていった。
僕と咲もルナ班の席に座った。
「なーんかヤキモチ焼いちゃう。」
「え?」
「だって、私より親しそうなんだもん。」
「えーっと、シンさんと?」
「そう。」
「え?そんな事言われても、過ごしてる時間が長いから仕方ないような気がするんだけど。」
「むぅ。私がリキのAIなのにぃ!」
「まぁ、まぁ。僕の数少ない友達だから許してよ。」
すると、ジャンさんが咲の隣に座った。
「隣いいか?」
「もぅ座ってるじゃん!」
ほんと言うと、僕もヤキモチ焼いてるんだけど。咲とジャンさん凄い親し気だし、でも親族だし。
これは陽子さんに対してヤキモチを焼いているんじゃない。咲と別の男が親しいからヤキモチを焼いている。

「よぉ!どうしたぁ!顔がこわいぞ?はっはっはっはっ!」とソウジュンさんが前の席に座った。
ソウジュンさんの隣にはガウルさんが座って、僕の隣にはいつも通りシュガーさんが座った。
「お疲れさまです。特になんでもないですよ。そういえば、ソウジュンさん達っていつも同じタイミングで来ますよね?」
「おう。俺らは同じ仕事してっからなぁ。」とシュガーさんが答えた。
「そうだなぁ。あ、もしかして合わせ技ってやつしらないんじゃないか?リキ。」とソウジュンさんが言う。
「え?なんですか?合わせ技って。」
「あー説明してなかったな。パーティーってアイコンがスマホに入ってるはずなんだ。それを開くと今はなんもねーだろうけど、合わせ技を覚えてる場合はそこにスキル名と発動条件がかかれるんだ。」
「合わせ技を覚える条件ってなんですか?」
「条件はなぁ。わかんねぇんだけど、これだけは言える。同じパーティーでクエストとかバトルをいっぱい繰り返す事と組んで一緒に移動した距離だとか。」
「例えば、俺らはこれ。」とガウルさんは公開ホログラム画面をだしてくれて、そこにはずらっとスキル名が書かれてあって[マッスルカマイタチ:シュガー大剣 ソウジュン大剣 ガウル素早さ1000以上:消費魔力500]
「これは佐藤とにーちゃんが大剣を装備して俺が素早さ1000以上あった場合のみ発動する。」
自分も何か覚えてないかと、パーティーのアイコンを開いてみると[天の裁き:シン【魔導書:光属性】りき:15分間シンを防衛:消費魔力90%]
(うわっ!これ、絶対咲に見られちゃまずそうなやつだ…。)
僕は急いで画面をとじた。

晩餐がはじまって、各班のリーダーが予定を言い合う。
珍しく幹部席が全て埋まっていた。個性豊かな見た目をした幹部達だ。
それからギルドの人数が4000人を超えたらしい。
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