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第十六話【極寒の怒り】

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アビスは怒りのオーラを放ちながら、アズレイの執務室へ向かいました。彼の足取りは重く、歩くたびに床が微かに震えるようでした。

アビスは宿舎から王城に戻る途中、静かな青色の怒りのオーラを放っていました。その怒りは空気を凍りつかせ、周囲の者たちも距離を置くほどでした。彼の心は荒れ狂い、怒りの嵐が内なる海を揺り動かしていた。
やがて、アビスはアズレイの執務室へと向かう扉の前で足を止めました。彼の表情は厳しく、目には怒りの炎が宿っていました。
アビスは一瞬立ち止まり、深い息を吐き出しました。静かに扉を開くために手を伸ばしましたが、その際に力の加減を誤ったまま、勢いよく扉を開けてしまいました。

扉が開く音が部屋に響き渡り、中にいた者たちは驚きの表情を浮かべました。アビスの行動に驚きつつも、彼の怒りを感じ取り、一瞬身を引き締めました。彼らはアビスの怒りに触れることを恐れ、緊張感が部屋に広がりました。

中尉職の女性が、アビスの突然の行動に驚きながらも、隣にいた一等兵にヒソヒソ声で尋ねました。「あれは本当に11歳か?」彼女の声は疑問と驚きに満ちていました。
一等兵も同様に驚きながら、微かにうなずきました。「ええ、本当にです。」彼の声は静かで、内に秘めた驚嘆がにじみ出ていました。
アビスの視線は執務室の中を静かに探り、アズレイの姿が見当たらないことを確認しました。
「オズマン中尉。」
アビスが静かに呼びかけると、黒髪で右目の下に涙ぼくろがあるつややかな女性、オズマン中尉が振り返りました。彼女はアビスに興味津々の視線を向け、静かな声で「はい。」と答えました。
「アズレイ元帥とアメリアの二名はどこへ行ったのか、教えてくれるか?」
その問いに、オズマン中尉は顔色を変え、恐怖を感じるような表情を浮かべました。
オズマン中尉は恐る恐る手に持っていた手紙を差し出しました。「そのことに関して、元帥から手紙を預かっています。」彼女の声は小さく、不安定でしたが、アビスは手紙を受け取りました。


手紙の内容は、アビスが今朝軍服に着替えた際、胸元の階級章を見て、自分も欲しいと願ったアメリアについてのものでした。そして、アメリアが階級を上げるための任務に赴くことが記されており、アズレイ元帥がその引率をすることが示されていました。

手紙を手にしたアビスは、内容に驚き、そして自責の念に駆られました。手紙を握りしめながら、彼は「俺のせいか」と呟き、四つん這いになって落ち込みます。彼の心は重い責任と後悔で満ち溢れ、自らの行動が愛するアメリアに影響を与えたことを深く悔やんでいました。

「あの…大丈夫ですか?」
オズマン中尉が声をかけました。それに気づいたアビスは、落ち込んだままで四つん這いの姿勢から立ち上がり、深い溜息をつきました。

「うん。大丈夫…さ。ははは。」アビスの声には苦悩と後悔が交錯していましたが、それでも彼は微笑みを見せました。

オズマン中尉は、アビスの様子を見ながら、やや気まずさを感じながらも、別の話題に移ろうと考えました。彼女は軽く咳払いをして、アビスに向かって微笑みました。
「それにしても、11歳で大将になるなんて、凄いですね。入隊してまだ一ヶ月なのに」とオズマン中尉は気を使って話題を変えました。
アビスはオズマン中尉の配慮を無視し、手紙の内容に心を乱されたまま、部屋を出ていきました。

オズマン中尉はアビスの反応に困惑しながらも、彼の様子を見送りました。アビスが部屋を去ると、彼女は一瞬、深いため息をつきました。その表情には、少しの憤慨と、彼の態度に対する苛立ちがにじみ出ていました。
「全く可愛げのない少年だわね」と彼女はつぶやきました。
オズマン中尉の不満が部屋に漂い、近くにいた隊員たちもその空気に敏感になりました。その中の一人が控えめに声を上げます。
「オズマンさん、関わらないほうが良いですよ。あの少年、ルティー王子の推薦とはいえ、たった一ヶ月で大将になるなんて、異常だと思いませんか?」
彼が不満を口にするのは、アビスの不適切な行動や、彼の階級に対する過度な期待に対する反発の表れでした。

オズマン中尉は、部屋の中で不満を抱えながらも、別の疑問が彼女の心に浮かびました。
「それはともかく、どこかで見たことがあるわ。あの少年…」彼女は眉をひそめ、記憶の奥底を辿りながら、アビスの姿を思い出そうとしました。

風が荒々しく吹きすさぶ雪原の地、アメリアはアズレイ元帥と共に馬にまたがり、風に舞う雪の粒をかき分けて駆け抜けていました。

『いーーーやーーーーー!!寒い!!寒い!!もっとあったかい格好させてーーーー!!!』

アメリアの頬は寒さで紅潮し、馬の駆ける音と風の音が一体となり、まるで自然と一体化しているかのようでした。彼女の目は前方に向けられ、決意に満ちた輝きを放っていました。

『ねぇ…おじさん。いつまで走る気!?もう眠いしお尻も痛いんだけど!!』

夜が更けても、アメリアとアズレイ元帥は馬にまたがり、雪原地帯を走り続けました。月の光が雪の上に輝き、彼らの姿を静かに照らし出していました。彼らの周りには静けさが広がり、ただ風の音や馬の足音が響いていました。

『もう朝じゃん!!流石に休ませてよ・・・。』

そして朝の光が雪原を染める頃、遠くに大きな古城が見えてきました。アメリアとアズレイ元帥はその古城に到着しました。その城は荘厳な姿を誇り、周囲に立ち並ぶ木々と雪景色とのコントラストが美しい光景を作り出していました。

『ここどこ・・・綺麗な景色だけど、お腹すいたぁ~。』

城の門は重厚で堅固であり、その前には立派な城壁がそびえ立っています。アメリアとアズレイ元帥は城の門をくぐり、中庭に進みました。

「おお!アズレイ!アーズレーイ!待っていたよー!」

『え~~~~~~~!?!?』

アメリアはその声を聞いて少しビクリとしました。その声の主は、なんとキルエルさんに瓜二つの人物でした。彼の姿はまるでキルエルさんが鏡に映ったようで、アメリアは驚きを隠せませんでした。




『キルエルさん!?どうしてこんなところに?』

「エルキース聖下、お久しぶりです。」とアズレイが礼儀正しく言います。

『エルキース!?だれ!?』

エルキース聖下はアメリアを見つめながら、「うんうん!で?この子が僕の妹かな?」と興味津々の様子で尋ねました。
「はい、そうです。彼女が聖下の義妹君になられたアメリアです」とアズレイが答えました。

『えぇ!?義兄さん!?って事はキルエルさんの息子さんって事!?』

「アメリアです。」
エルキースはアメリアの瞳を鋭く見つめました。その眼差しは深い洞察力と興味深さを秘めており、彼は彼女の瞳に刻まれた魔法の痕跡を注意深く観察しました。
「父上の魔法だね?君は意思を封じられてるね。」
エルキースの言葉に、アズレイは眉をひそめ、深い憂慮の表情を浮かべながら、エルキースがアメリアの瞳に刻まれた魔法の痕跡を見抜いたことに驚愕しました。
アズレイは深い憂慮の表情を浮かべながら、息子エルキースに向かって問いかけました。「意思を封じられているだと?解けるのか?」彼の声には心配と不安がにじみ出ており、アメリアの状況に対する深い関心が窺えました。
「解ける方法は知ってるけど、異性の深い愛が必要な珍しいタイプだね。今すぐ解いてあげたいけれど、僕の妻は亡くなってしまったけど、今でも愛してるんだ。だから僕には解けないかな。息子のノエルは見た目は若いけど500歳だしなぁ。結婚させるには申し訳ないというか。」
『ちょっと待って!!結婚!?この魔法って結婚しないと解けないの!?どういう事!?それでアビスもしばらく解けないって言ってたの!?』
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