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第十三話【騎士の願い、ガナンでの戦い】

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騎士団内で軍が手柄を挙げたことにより、騎士たちの間には大荒れが生じていました。一部の騎士は自分たちの功績を軍に侵されたと感じ、その不満や不安が団内に広がっていました。指導者たちはこの状況を収拾しようと奔走していましたが、混乱は拡大の一途をたどっていました。

その一方で、部下たちが勝手に手柄を上げるため、ガナン国に攻め込んだという事実が明らかになった。自らの騎士団が無断で行動し、国家の平和を乱すとは考えられないことだ。

その情報を聞いたアメリアは、事態の深刻さを理解した。
ヴェルンツは謝罪の言葉を口にする際、ひと際悔しそうな表情を浮かべました。彼の眉間には深いしわが刻まれ、その目には心の内部での葛藤が反映されていました。
「どうにか…この戦いを収めてくれないだろうか。」
彼は深いため息をつき、真剣な表情でアメリアを見つめました。彼もこの混乱を解決し、団員たちを戦いの渦から引き戻したいという願いが心の底にありました。
「はい。」

ガナン王国に到着すると、馬から勢いよく飛び降り、しなやかな着地を見せました。アメリアはヴェルンツの思惑や意図をまったく汲み取ることなく、彼女の前に立ちはだかるガナン王国の国境兵たちを容赦なく惨殺しました。
アメリアの動きは俊敏かつ緻密であり、彼女はまるで稲妻のように素早く敵を襲いました。倒した敵の武器を奪い、その刃は容赦なく敵の身体を切り裂き、血の海を巻き起こしました。国境兵たちはまるで踏み潰される虫のように無慈悲に倒され、その悲鳴が戦場に響き渡りました。

ヴェルンツは絶望的な叫び声でアメリアを呼び止めましたが、彼女の速さはその叫び声をすぐに遠ざけてしまいました。彼の声は風に飲み込まれ、返答を得ることはありませんでした。絶望が彼の心を包み込み、無力感が彼を襲いました。

「まさか…人間がこんな速さで…!」と彼は呟きましたが、彼女の姿はますます遠のいていきました。

―――――――――
―――――――

アズレイは執務室に戻ると、そこにはアビスがアメリアの席に座っている姿があった。彼は不敵な笑みを浮かべながら、まるで子供が遊ぶかのような仕草で席に座っていました。アズレイは不思議そうな表情を浮かべながら、彼の様子を見つめました。

「アビス、何をしている?アメリアはどこだ?」
アズレイの問いに対し、アビスは楽しそうに笑みを浮かべながら返答した。「俺はここにいるだけですよ。アメリアは戦場へ向かったみたいですよ?騎士団長様に連れられてね。」
アビスは笑みを浮かべていましたが、その笑顔の奥には静かな怒りが宿っているのが見えました。
アズレイは驚きの表情を浮かべました。

アビスが笑みを浮かべながらアズレイに問う。「ねぇ、元帥様、俺にアメリアを連れ戻す許可をくれない?」
アズレイはアビスの提案に戸惑いながらも、心の中で考えを巡らせました。果たして、どうすればいいのか。
「迷ってる時間、無いんじゃない?こうしてる間にもアメリアは人を殺すよ」
アズレイはアビスの言葉に耳を傾け、深く考え込みます。その間にも、アメリアが戦場で人を殺しているかもしれないという事実が彼の心を苦しめました。
「アビス、お前は一人で確実にアメリアを連れ戻せるんだな?」
アビスは自信に満ちた微笑を浮かべ、堂々と答えました。「できるよ。」そして、彼はメーベルを四段階まで解放して、微かな光を放ち浮遊し始めました。
アズレイは驚きを隠せませんでした。通常、メーベルを一段階解放するだけでも困難なのに、アビスが四段階も解放してみせたのです。
アズレイはアビスに対して疑問と驚きを隠せず、「アビス…お前はいったい…」と呟きました。
「あ、そうだ。ガナン王国って滅ぼしちゃっても問題ない国?」
アズレイは慎重に答えました。「メロウトにとっては問題ない。貿易も滞っている。」
アズレイの言葉を聞いて、アビスはニコッと微笑みました。窓辺に立ち、風に髪をなびかせながら、自信に満ちた表情で窓から飛び立ちました。
アズレイはアビスが去る姿を見送りながら、彼の言葉を重く受け止めました。アメリアを連れ戻すため、アビスがどれほどの力を持っているのか、彼はまだ知る由もありませんでした。

―――――――――
――――――

アビスは心からの思いを込めて呟きました。「アメリア、君は辛い思いをしているんだろう?苦しいよね。でも心配しないで。俺が何とかしてみせるから、君は耐えていてね。」

静かな夜の中、アメリアの姿が闇に消えるように村を次々と破壊していく。彼女の眼にはかつてない狂気が宿り、食事や睡眠を求めず、ただ殺戮の輪舞に身を委ねていく。その姿はまるで暗黒の使者のようであり、村人たちは絶望に打ちひしがれ、彼女の前に立ちふさがることもできず、ただ恐れおののくばかりだった。

アメリアの狂気に満ちた行動の裏には、深い孤独と帰りたいという願いがありました。彼女はひたすらに殺戮を繰り返しながら、心のどこかでアビスの温かい手に触れたいという強い願いを秘めていた。その想いが彼女を狂気の淵に引きずり込んでいく一方で、彼女の心は確かに彼のもとへと戻りたいと叫んでいたのです。

『もうやだ。やめて!!!これ以上殺さないで!どうして意図を汲まないの?ヴェルンツさんはこんな事望んでないよ!誰も殺さずに騎士団をみんなを連れ帰ってほしいはずだよ!』

アメリアはヴェルンツさんがガナン王国を滅ぼすことを望んでいることに気づき、その考えが自分の行動を支配していることを理解していました。同時に、アメリアはこの方法が最も迅速にアビスに会う手段であると確信していました。そのため、彼女は自らの目的を果たすために行動を続けていくのでした。

『理解はできるけど…しちゃったら人間じゃないよ・・・。』


夜が明け、朝日が村の空を照らし始める頃、アメリアは既に五つ目の村を襲撃していました。
彼女は武器を振り回し、嗜虐の快楽に酔いしれるように、村人たちを次々と屠り倒していく。悲鳴が空に響き渡り、血の匂いが漂う中、アメリアは冷酷な笑みを浮かべながら進んでいく。
アメリアの冷酷な笑みの奥には、アビスとの甘い思い出が交錯していた。彼女は村を襲撃しながらも、アビスとのひと時を思い出し、その温かな存在に心が寄り添う。アビスとの甘美な思い出が、彼女をさらなる破壊へと駆り立てていた。

一人の村人が必死に逃げようとしているのを見つけると、アメリアは冷徹な笑みを浮かべ、彼女の身体は人間離れした速さでその村人を追い詰める。そして、彼女は容赦なく村人の体を斬りつけ、その血しぶきが周囲に飛び散る中、彼女の笑みは一層深みを増していく。
付近の村人が手にした鉈が彼女の目にとても鋭く映った。アメリアは機敏に回避し、身の軽さを活かして村人に襲いかかった。村人は必死に抵抗し、鉈を振り回すが、アメリアは優れた戦闘技術を駆使して彼を追い詰める。

『お願い・・・もう…やめて…。』


朝陽がまぶしい中、悲劇が静かに進行していた。アメリアの手によって村は無残にも荒廃し、血に染まっていた。しかし、その暗い戦場に、一筋の希望が差し込む。

背後からアビスが現れ、彼女を優しく抱きしめた。その温かい手が彼女の身体を包み込むと、彼女の心はざわめき始める。彼の声は優しく、しかし力強く、彼女の内なる闇を静めるように響いた。

「ストップ、ストップだよ、アメリア。」アビスの声は静かで、しかし決然としていた。彼の言葉は彼女の心に深く刻まれ、彼女の暴走を止めるための最後の望みであった。
アビスの抱擁はアメリアに安心感をもたらし、彼女の心に落ち着きをもたらした。

『アビ…ス』
「アビ…ス」

アメリアは心の声と同時に口が開いた。
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