9 / 12
番外編 2-3 犬はご主人さまのことを全部知りたい
しおりを挟む
☆☆☆
儀式の終わった後、ルーディアはいつものように公務をこなした。神殿での彼の様子が気になっていたが俺も今日は忙しく一緒に過ごす時間が取れずじまい。やっと夜になり二人で話せると思っていたのだが断られてしまった。
もう寝るところだし、というルーディアにせめて茶だけでもと粘ると、いつもと違い俺を部屋へ入れることをひどくためらう。今日は自分の部屋で寝るとカリンに約束させられて、やっと招き入れてくれた。
だが二人きりになり茶を飲んでいる間もルーディアの様子は明らかにおかしかった。少し疲れたからと長椅子に横になりながら、時折俺に向ける瞳がいつも俺に向けてくれる甘さではない。何かを考え込んでいるようだ。
(カリンに叱られたことだけではなさそうだ)
「何か悩みでも?」
「ううん」
「本当に?」
「大丈夫だよ。なんでもないよ」
そういいながら視線を合わせようとしないルーディア。明らかに何かを隠している。
『大丈夫だよ』という人間が大丈夫だったことはない。父からも女性の言う『大丈夫』は『大丈夫ではない』、『私のせいだから』は『お前のせいだ』という意味だと教え込まれてきた。家庭円満にするためには知っておかなければならない常識だと。ルーディアは男だけれど、これは家庭円満のためのルールが適用されると思われた。
俺はルーディアの本心を聞き出すために心を鬼にすることにした。もちろん嘘だ。ルーディアに触れる理由がまた増えたと内心小躍りしていた。
我慢強くわがままを言わないルーディアが俺に心の内をさらけ出すようになる可愛い瞬間。愛撫に応え彼の中がきゅうきゅうと俺を締め付ける瞬間。
俺は真面目な顔をしてルーディアを見つめた。
「この国では嘘つきには神様からのバツが当たるっていうらしいが?」
俺がそう言うとルーディアはビクリと体をすくめた。そろりと俺と目をあわせる。けれどその口はすねた子供のように結ばれていた。視線が俺に『絶対言わない!』と告げている。
(へぇ?教えてくれないのか?じゃあ素直にしてあげなくては)
少し楽しくなってきた俺は長椅子の上のルーディアを抱き上げその額に軽くキスして寝台へと運ぶ。いつもふたりで眠る寝台にころりと彼を転がした。
(今朝どんな夢をみて俺のことをいじわると詰ったのかも聞かなくてはいけないしな)
「もうっ!だめだってば!!」
慌てたルーディアは寝台の上で俺のことを押しのけようとする。その弱い力で押しのけられるほど俺の体は軽くない。軽くいなし彼の体の上で馬乗りになり両腕で囲いを作る。細い腕で何度も俺を押しのけるようとするうちにルーディアの顔が赤くなってきた。
絹糸のような艶のある豊かな黒髪が寝台に広がる様はそれだけで淫靡に見える。その寝台で繰り広げてきた二人の痴態を思えばなおさらだ。重たくないように腰を浮かしてはいるが俺の尻の下にあるルーディアの棒だってだんだんと熱を持ち始めているのがわかる。
初めて体を重ねた日からとろとろに甘い夜を重ねてきたおかげで俺がルーディアに触れれば彼の体は発情するようになってしまっている。
(俺のルーディア。かわいいな)
普段なら透けてしまうんじゃないかと思うほど色白の肌が上気して桃色に染まっているさまは当代一の絵師がかきあげた官能的な絵のようで現実味がない。
細身の体はルーディアの本来の性別を忘れさせるほど中性的で俺の体と比べると今にも消えてしまいそうで心配になる。
「ルーディア、本当に人間か?妖精のように消えそうで怖いんだが。本当に俺のルーディアなのか確かめさせて欲しい」
そういって耳元に囁くとふるふると首を振って抵抗された。
「ほんとうに!怒るよ!!今日はもうしないって言ったでしょう。約束守れないなら今すぐ自分の部屋に戻って!!」
きっと俺のことをにらみつけるけど俺のルーディアはどんな表情をしてもかわいい。
「しないとは言ってない。自分の部屋で寝るとは約束したけれど」
「え、そうだっけ?」
「そうだ」
一瞬虚をつかれたルーディアの顎をとり、だから…と唇を重ねる。
「まっっっへぇらぁんん…ん゛ん゛っあ゛っふうん」
もがもがと何か言っていたけれど言葉ごと食み、柔らかい舌を見つけてすり合わせるとそれはかわいい鼻濁音へと変わっていった。
(あまい。やわらかい。愛おしい…)
部屋には俺とルーディアの立てる甘い吐息だけがひろがる。
何度重ねてもルーディアとの口づけは甘くて気持ちいい。砂糖菓子というよりは酩酊するのがわかっている酒の甘さに近い。舌をすり合わせるたびにぞくぞくとした興奮が体の中心に溜まっていく。
腹の奥に残った熾火が本格的な炎に変わる。凶暴な欲望に変わりそうな予感がしていったん口をはなした。
(時間をかけてとろけさせなくては)
儀式の終わった後、ルーディアはいつものように公務をこなした。神殿での彼の様子が気になっていたが俺も今日は忙しく一緒に過ごす時間が取れずじまい。やっと夜になり二人で話せると思っていたのだが断られてしまった。
もう寝るところだし、というルーディアにせめて茶だけでもと粘ると、いつもと違い俺を部屋へ入れることをひどくためらう。今日は自分の部屋で寝るとカリンに約束させられて、やっと招き入れてくれた。
だが二人きりになり茶を飲んでいる間もルーディアの様子は明らかにおかしかった。少し疲れたからと長椅子に横になりながら、時折俺に向ける瞳がいつも俺に向けてくれる甘さではない。何かを考え込んでいるようだ。
(カリンに叱られたことだけではなさそうだ)
「何か悩みでも?」
「ううん」
「本当に?」
「大丈夫だよ。なんでもないよ」
そういいながら視線を合わせようとしないルーディア。明らかに何かを隠している。
『大丈夫だよ』という人間が大丈夫だったことはない。父からも女性の言う『大丈夫』は『大丈夫ではない』、『私のせいだから』は『お前のせいだ』という意味だと教え込まれてきた。家庭円満にするためには知っておかなければならない常識だと。ルーディアは男だけれど、これは家庭円満のためのルールが適用されると思われた。
俺はルーディアの本心を聞き出すために心を鬼にすることにした。もちろん嘘だ。ルーディアに触れる理由がまた増えたと内心小躍りしていた。
我慢強くわがままを言わないルーディアが俺に心の内をさらけ出すようになる可愛い瞬間。愛撫に応え彼の中がきゅうきゅうと俺を締め付ける瞬間。
俺は真面目な顔をしてルーディアを見つめた。
「この国では嘘つきには神様からのバツが当たるっていうらしいが?」
俺がそう言うとルーディアはビクリと体をすくめた。そろりと俺と目をあわせる。けれどその口はすねた子供のように結ばれていた。視線が俺に『絶対言わない!』と告げている。
(へぇ?教えてくれないのか?じゃあ素直にしてあげなくては)
少し楽しくなってきた俺は長椅子の上のルーディアを抱き上げその額に軽くキスして寝台へと運ぶ。いつもふたりで眠る寝台にころりと彼を転がした。
(今朝どんな夢をみて俺のことをいじわると詰ったのかも聞かなくてはいけないしな)
「もうっ!だめだってば!!」
慌てたルーディアは寝台の上で俺のことを押しのけようとする。その弱い力で押しのけられるほど俺の体は軽くない。軽くいなし彼の体の上で馬乗りになり両腕で囲いを作る。細い腕で何度も俺を押しのけるようとするうちにルーディアの顔が赤くなってきた。
絹糸のような艶のある豊かな黒髪が寝台に広がる様はそれだけで淫靡に見える。その寝台で繰り広げてきた二人の痴態を思えばなおさらだ。重たくないように腰を浮かしてはいるが俺の尻の下にあるルーディアの棒だってだんだんと熱を持ち始めているのがわかる。
初めて体を重ねた日からとろとろに甘い夜を重ねてきたおかげで俺がルーディアに触れれば彼の体は発情するようになってしまっている。
(俺のルーディア。かわいいな)
普段なら透けてしまうんじゃないかと思うほど色白の肌が上気して桃色に染まっているさまは当代一の絵師がかきあげた官能的な絵のようで現実味がない。
細身の体はルーディアの本来の性別を忘れさせるほど中性的で俺の体と比べると今にも消えてしまいそうで心配になる。
「ルーディア、本当に人間か?妖精のように消えそうで怖いんだが。本当に俺のルーディアなのか確かめさせて欲しい」
そういって耳元に囁くとふるふると首を振って抵抗された。
「ほんとうに!怒るよ!!今日はもうしないって言ったでしょう。約束守れないなら今すぐ自分の部屋に戻って!!」
きっと俺のことをにらみつけるけど俺のルーディアはどんな表情をしてもかわいい。
「しないとは言ってない。自分の部屋で寝るとは約束したけれど」
「え、そうだっけ?」
「そうだ」
一瞬虚をつかれたルーディアの顎をとり、だから…と唇を重ねる。
「まっっっへぇらぁんん…ん゛ん゛っあ゛っふうん」
もがもがと何か言っていたけれど言葉ごと食み、柔らかい舌を見つけてすり合わせるとそれはかわいい鼻濁音へと変わっていった。
(あまい。やわらかい。愛おしい…)
部屋には俺とルーディアの立てる甘い吐息だけがひろがる。
何度重ねてもルーディアとの口づけは甘くて気持ちいい。砂糖菓子というよりは酩酊するのがわかっている酒の甘さに近い。舌をすり合わせるたびにぞくぞくとした興奮が体の中心に溜まっていく。
腹の奥に残った熾火が本格的な炎に変わる。凶暴な欲望に変わりそうな予感がしていったん口をはなした。
(時間をかけてとろけさせなくては)
12
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
【完結/R18】俺が不幸なのは陛下の溺愛が過ぎるせいです?
柚鷹けせら
BL
気付いた時には皆から嫌われて独りぼっちになっていた。
弟に突き飛ばされて死んだ、――と思った次の瞬間、俺は何故か陛下と呼ばれる男に抱き締められていた。
「ようやく戻って来たな」と満足そうな陛下。
いや、でも待って欲しい。……俺は誰だ??
受けを溺愛するストーカー気質な攻めと、記憶が繋がっていない受けの、えっちが世界を救う短編です(全四回)。
※特に内容は無いので頭を空っぽにして読んで頂ければ幸いです。
※連載中作品のえちぃシーンを書く練習でした。その供養です。完結済み。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
【完結R18】異世界転生で若いイケメンになった元おじさんは、辺境の若い領主様に溺愛される
八神紫音
BL
36歳にして引きこもりのニートの俺。
恋愛経験なんて一度もないが、恋愛小説にハマっていた。
最近のブームはBL小説。
ひょんな事故で死んだと思ったら、異世界に転生していた。
しかも身体はピチピチの10代。顔はアイドル顔の可愛い系。
転生後くらい真面目に働くか。
そしてその町の領主様の邸宅で住み込みで働くことに。
そんな領主様に溺愛される訳で……。
※エールありがとうございます!
βの僕、激強αのせいでΩにされた話
ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。
αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。
β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。
他の小説サイトにも登録してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる