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13 恋の兆し?
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レオさんは誕生日の次の朝にご機嫌で帰ってきた。
ドールハウスを覗き込むレオさんの気配にいつものように狸寝入りを決める僕。レオさんは勤務開けに祝い酒でもひっかけてきたのか微かなアルコールの匂いをまとっていた。
「昨日は誕生日だったから多めに持っていけるものをお願いしていたんだがそれを皆に誉められてな。いつもおいしいものを作ってくれるテレザだから甘えてしまった」
嬉しそうな声に僕もあの無茶振りに答えてがんばって良かったなぁと思う。まぁレオさんが甘えてるのは家政婦のテレザさんではないんだけど。言えないけれど僕だよ!と主張したくなっちゃうよね。でも素敵な誕生日になって良かったね。その一端を僕のパンがになったんだから素直に嬉しい。
「この前は日替わりで色々作れないって怒っていたかと思うんだが最近はわざわざ暖かいままになるようにオーブンに保温しておいてくれるし何か心境の変化があったのかと思うんだが」
心境ってか作る人が変わってるんだよ、と思いながら僕は眠った振りを続けていたら話が変わってきた。
「やはり同僚達がいうように俺のことを好いているんだろうか?」
(は?)
「だが彼女は夫もいるし年頃の娘もいる年だし。流石にそんなことはないと思うんだ」
(そうだよ。なに言ってんの)
「でもこう毎日暖かい食事とデザートを用意してくれるのは普通のことではないし、やはり家政婦と雇い主以上の関係を求めているのかもしれない。しっかりとお断りしたほうがいいのか」
(うわー!ちょっとまってよ、非モテ男子みたいなこと言い出したよ。女子が普通に親切にしているのに惚れてんのか?って勘違いするやつ。家政婦さんにとって料理は仕事でしょう?ってか家政婦さんにそんなこと言ったらそんな料理作ってないって言われちゃうよ。僕が作ってるってばれちゃうかも、やめてー!!)
「そういえばあの黒猫が持っていったパンを一個横取りしてあっという間に食べてたんだが身体を壊さないといいんだが」
(フロー?え?あ!玉ねぎはいってたよね?ダメだよ!あ、でも使い魔だから大丈夫なのかな?)
普通の猫じゃないんだからきっと大丈夫なはず。僕はそう願いながらレオさんの話を聞いていた。
※※※
その日の夜レオさんが仕事に出かけた後、大きな身体になって台所に行って見たらありがとうのメッセージとピンクの小さな花束が花瓶に活けてあった。
『大変美味しかった。ありがとう』
(うーん、このくらいなら怪しまれない?)
メッセージを読みながら何の気なしに触ったバラに似たピンクの花は触れた拍子に花粉を散らし僕の指先を黄色にそめた。指先からふわりと甘い上品な薫りがたった。
(見た目は薔薇に似てるのに香りは百合みたい)
くん、と鼻をならして優雅な薫りを胸の奥まで吸い込む。前世はともかく今の見た目美少女な僕には花の香りは良く似合う。
(百合……そういえば百合は猫には毒だったっけ?)
フローのことを考えながらじゃがいもの皮を剥き刻む。フライパンにバターを落として刻んだじゃがいもを半分広げた上にチーズを撒くそれから残りのじゃがいもを広げて。蓋をして下がカリッとしたらじゃがいもガレットの出来上がり。
(油と炭水化物の組み合わせに間違いなし!)
葉もの野菜を千切りにしてベーコンとスープに仕立てる。胡椒をきかせて、はい、美味しい。
「お腹ぽかぽか元気になーれ」
今日も恩返しを済ませた僕は満足してドールハウスへ戻るのだった。
※※※
そして翌日の朝、帰ってきたレオさんなんかおかしなこと言い出したよ。口調がうきうきしてるんだけど、どうしたの?
「料理のことだがテレザが知らないうちにテレザの娘が作っていたらしい」
(は?)
「こっそり母を助けたかったなんて、健気な良い子だな」
(いや!それをいうなら健気なよいこは僕!!)
「会ったことはないはずだが…やはり私を好き?」
(いやいやいや、なんて?またそんな非モテ思考する?てゆうか僕の料理を自作発言とか何がしたいんだよその子はちょっと腹がたつんですけど)
「まぁ、女性も色々だからな。親孝行がしたかっただけかもしれない」
(そうだよねぇ。僕の妹みたいに兄にはめちゃくちゃわがまま放題なのに内弁慶とか、会ったことない子の考えなんて分からないよ)
「私みたいに人の機微がわからない男には難しいな」
(あれあれあれ?レオさんも前世の僕と同じ非モテ?)
いやいやいや。前世の僕はごくごくごく普通の大学生だったし、思い出せる限りでは青春はまだまだこれからだったんだから。非モテとかって自分をカテゴリーにいれて逃げをうつのはカッコ悪いよね。でもレオさん生活水準的に平民以上の階級だと思うのに婚約者とかいないのかな?
「だが……お礼をしなくてはと思うんだ」
薄目を開けて見たレオさんは髪をいじったり視線がキョロキョロしたりして落ちつきがない。そのそわそわした感じ、やっぱりちょっと好きになってない?
(レオさん、ちょろい!!)
ドールハウスを覗き込むレオさんの気配にいつものように狸寝入りを決める僕。レオさんは勤務開けに祝い酒でもひっかけてきたのか微かなアルコールの匂いをまとっていた。
「昨日は誕生日だったから多めに持っていけるものをお願いしていたんだがそれを皆に誉められてな。いつもおいしいものを作ってくれるテレザだから甘えてしまった」
嬉しそうな声に僕もあの無茶振りに答えてがんばって良かったなぁと思う。まぁレオさんが甘えてるのは家政婦のテレザさんではないんだけど。言えないけれど僕だよ!と主張したくなっちゃうよね。でも素敵な誕生日になって良かったね。その一端を僕のパンがになったんだから素直に嬉しい。
「この前は日替わりで色々作れないって怒っていたかと思うんだが最近はわざわざ暖かいままになるようにオーブンに保温しておいてくれるし何か心境の変化があったのかと思うんだが」
心境ってか作る人が変わってるんだよ、と思いながら僕は眠った振りを続けていたら話が変わってきた。
「やはり同僚達がいうように俺のことを好いているんだろうか?」
(は?)
「だが彼女は夫もいるし年頃の娘もいる年だし。流石にそんなことはないと思うんだ」
(そうだよ。なに言ってんの)
「でもこう毎日暖かい食事とデザートを用意してくれるのは普通のことではないし、やはり家政婦と雇い主以上の関係を求めているのかもしれない。しっかりとお断りしたほうがいいのか」
(うわー!ちょっとまってよ、非モテ男子みたいなこと言い出したよ。女子が普通に親切にしているのに惚れてんのか?って勘違いするやつ。家政婦さんにとって料理は仕事でしょう?ってか家政婦さんにそんなこと言ったらそんな料理作ってないって言われちゃうよ。僕が作ってるってばれちゃうかも、やめてー!!)
「そういえばあの黒猫が持っていったパンを一個横取りしてあっという間に食べてたんだが身体を壊さないといいんだが」
(フロー?え?あ!玉ねぎはいってたよね?ダメだよ!あ、でも使い魔だから大丈夫なのかな?)
普通の猫じゃないんだからきっと大丈夫なはず。僕はそう願いながらレオさんの話を聞いていた。
※※※
その日の夜レオさんが仕事に出かけた後、大きな身体になって台所に行って見たらありがとうのメッセージとピンクの小さな花束が花瓶に活けてあった。
『大変美味しかった。ありがとう』
(うーん、このくらいなら怪しまれない?)
メッセージを読みながら何の気なしに触ったバラに似たピンクの花は触れた拍子に花粉を散らし僕の指先を黄色にそめた。指先からふわりと甘い上品な薫りがたった。
(見た目は薔薇に似てるのに香りは百合みたい)
くん、と鼻をならして優雅な薫りを胸の奥まで吸い込む。前世はともかく今の見た目美少女な僕には花の香りは良く似合う。
(百合……そういえば百合は猫には毒だったっけ?)
フローのことを考えながらじゃがいもの皮を剥き刻む。フライパンにバターを落として刻んだじゃがいもを半分広げた上にチーズを撒くそれから残りのじゃがいもを広げて。蓋をして下がカリッとしたらじゃがいもガレットの出来上がり。
(油と炭水化物の組み合わせに間違いなし!)
葉もの野菜を千切りにしてベーコンとスープに仕立てる。胡椒をきかせて、はい、美味しい。
「お腹ぽかぽか元気になーれ」
今日も恩返しを済ませた僕は満足してドールハウスへ戻るのだった。
※※※
そして翌日の朝、帰ってきたレオさんなんかおかしなこと言い出したよ。口調がうきうきしてるんだけど、どうしたの?
「料理のことだがテレザが知らないうちにテレザの娘が作っていたらしい」
(は?)
「こっそり母を助けたかったなんて、健気な良い子だな」
(いや!それをいうなら健気なよいこは僕!!)
「会ったことはないはずだが…やはり私を好き?」
(いやいやいや、なんて?またそんな非モテ思考する?てゆうか僕の料理を自作発言とか何がしたいんだよその子はちょっと腹がたつんですけど)
「まぁ、女性も色々だからな。親孝行がしたかっただけかもしれない」
(そうだよねぇ。僕の妹みたいに兄にはめちゃくちゃわがまま放題なのに内弁慶とか、会ったことない子の考えなんて分からないよ)
「私みたいに人の機微がわからない男には難しいな」
(あれあれあれ?レオさんも前世の僕と同じ非モテ?)
いやいやいや。前世の僕はごくごくごく普通の大学生だったし、思い出せる限りでは青春はまだまだこれからだったんだから。非モテとかって自分をカテゴリーにいれて逃げをうつのはカッコ悪いよね。でもレオさん生活水準的に平民以上の階級だと思うのに婚約者とかいないのかな?
「だが……お礼をしなくてはと思うんだ」
薄目を開けて見たレオさんは髪をいじったり視線がキョロキョロしたりして落ちつきがない。そのそわそわした感じ、やっぱりちょっと好きになってない?
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