58 / 64
58 お世話係と番犬
しおりを挟む
白い膜が張ったような世界の中、朝が来て昼が来て夜が来た。
目覚めて以来ベッドの上でぼんやりと過ごす日々。エルフ先生がいないときは話し相手もいないので本能のまま寝て体を休める。
そうしているうちにはじめは力を入れることもできなかった指先まで通常の感覚が戻ってきてエルフ先生の助けを借りてゆっくりと歩くことが出来るようになってから、やっとその違和感に気づいた。
先生に手を借りながら何度か部屋の中を往復しているうちにある場所でエルフ先生の気配が少し乱れる事に気づいた私はそこで足を止めた。
「どうしました?エミー」
「ここ、何かありますか?」
「どうしてそんなことを?」
「先生がここで何かを気にされているようだったので」
「・・・・さすがはエミー。貴方は敏いですね。ええ、ここに犬の置物があるんですが大きすぎて邪魔なので置き場所を変えようかと考えていました」
「犬の置物?」
周りを見ても特に他の空間と違う影なども見えない。相変わらず私の視界は明るい白でぼんやりと物の形を結ぶのはエルフ先生の姿くらいだ。
「ええ、エミーのことを心配したユリウス殿下と聖女さまからのお見舞いです」
「ユリウス殿下とアストリアから?」
「お二人共大変な心配のなされようでしたよ。聖女さまは私がくるまではずっと寝ずの番をされていたようで。体調を崩されてしまって殿下がお体を心配されて今は宮殿で休まれてます。」
「アストリアが・・・・」
「犬の置物がいくつあってもエミーの役に立つとも思えませんがね。邪魔をしないならと置いておいてもよいかと思いましたが、大きすぎて目障りなんですよね」
「でも、私まだよく見えませんし。ベッドから離れた場所なら間違ってぶつかることもないでしょうし。殿下からの贈り物をお断りすると申し訳ないので」
「あぁ、エミー。貴方は本当に優しいですね。番犬にもならない犬なら要らないとおもいますが」
「ぇえっと、ペットを飼うことによって飼い主が癒やされるという話を聞いたことがありますから。役に立つたたないではないのではと。それに本物の犬でなくとも犬の置物を見て癒やされる人も居ると思います」
「あぁ・・・・エミーどうか変わらずにいてくださいね」
そういうと先生は私をそっと抱きしめた。いつものように先生から香る森の香りに包まれてその胸元に頬を寄せるとトクントクンと聞こえてくる先生の鼓動。
「ですが、そろそろ先生と呼ぶのはやめてください。もう貴方の教師ではないのですから」
「でも私にとっては先生は・・・・」
「ティリオン。これから先生ではなくティリオンと呼んでください」
ぐっと胸に引き寄せられて二人の隙間がなくなる。
「名前を呼んでくれないと離しませんよ」
「え、えぇ・・・・」
「さぁ、エミー」
ちゅっちゅっと私の頭にキスを落としていたずらっ子のようにクスクスと笑う。先生の手が私の背中をゆっくりとなでおりていくのにともなってゾクゾクとした刺激が背骨をくだる。背中の下の方、腰のあたりで手のひらがとまりビクリと背中が跳ねる。
「さぁエミー、名前を呼んでくれないとすごいいたずらをしてしまうかもしれません」
先生の指先があやしげな動きをする気配がしてその先のことを想像して頭に血が集まる。
「てぃ、ティリオンさま!」
「さまも要らないんですが」
真っ赤になっているはずの頬を両手で挟まれ上を向かされてしまう。
「リンゴみたいでかわいいですから勘弁してあげましょう」
そう言っておでこに柔らかなキスが落とされた。
「ふふふ。このリンゴおいしそうで本当に食べてしまいたい」
耳元で囁かれる声。そのまま、ふぅっと吐息をかけられてビクリと背中がまたはねる。
カプリカプリと食べる真似して頬をあまがみされる。
見えなくとも分かる、空気の甘さにくらくらとして先生の胸にすがりつく。
見、見えないから余計に恥ずかしい。もっともっと頭に血が登ってしまうぅ・・・・
手から力が抜けそうになった時、先生の腕が私をしっかりと支えた。
「エミー辛そうですから抱き上げますね」
胸の中に抱き込まれて横抱きの姿勢でベッドまで連れて行かれおろされた。
「犬の置物がいなくなってから食べさせてくださいね」
先生はそう耳元で囁いて唇に軽いキスを落として離れていったんだけど・・・・
え、え、え、え?
目覚めて以来ベッドの上でぼんやりと過ごす日々。エルフ先生がいないときは話し相手もいないので本能のまま寝て体を休める。
そうしているうちにはじめは力を入れることもできなかった指先まで通常の感覚が戻ってきてエルフ先生の助けを借りてゆっくりと歩くことが出来るようになってから、やっとその違和感に気づいた。
先生に手を借りながら何度か部屋の中を往復しているうちにある場所でエルフ先生の気配が少し乱れる事に気づいた私はそこで足を止めた。
「どうしました?エミー」
「ここ、何かありますか?」
「どうしてそんなことを?」
「先生がここで何かを気にされているようだったので」
「・・・・さすがはエミー。貴方は敏いですね。ええ、ここに犬の置物があるんですが大きすぎて邪魔なので置き場所を変えようかと考えていました」
「犬の置物?」
周りを見ても特に他の空間と違う影なども見えない。相変わらず私の視界は明るい白でぼんやりと物の形を結ぶのはエルフ先生の姿くらいだ。
「ええ、エミーのことを心配したユリウス殿下と聖女さまからのお見舞いです」
「ユリウス殿下とアストリアから?」
「お二人共大変な心配のなされようでしたよ。聖女さまは私がくるまではずっと寝ずの番をされていたようで。体調を崩されてしまって殿下がお体を心配されて今は宮殿で休まれてます。」
「アストリアが・・・・」
「犬の置物がいくつあってもエミーの役に立つとも思えませんがね。邪魔をしないならと置いておいてもよいかと思いましたが、大きすぎて目障りなんですよね」
「でも、私まだよく見えませんし。ベッドから離れた場所なら間違ってぶつかることもないでしょうし。殿下からの贈り物をお断りすると申し訳ないので」
「あぁ、エミー。貴方は本当に優しいですね。番犬にもならない犬なら要らないとおもいますが」
「ぇえっと、ペットを飼うことによって飼い主が癒やされるという話を聞いたことがありますから。役に立つたたないではないのではと。それに本物の犬でなくとも犬の置物を見て癒やされる人も居ると思います」
「あぁ・・・・エミーどうか変わらずにいてくださいね」
そういうと先生は私をそっと抱きしめた。いつものように先生から香る森の香りに包まれてその胸元に頬を寄せるとトクントクンと聞こえてくる先生の鼓動。
「ですが、そろそろ先生と呼ぶのはやめてください。もう貴方の教師ではないのですから」
「でも私にとっては先生は・・・・」
「ティリオン。これから先生ではなくティリオンと呼んでください」
ぐっと胸に引き寄せられて二人の隙間がなくなる。
「名前を呼んでくれないと離しませんよ」
「え、えぇ・・・・」
「さぁ、エミー」
ちゅっちゅっと私の頭にキスを落としていたずらっ子のようにクスクスと笑う。先生の手が私の背中をゆっくりとなでおりていくのにともなってゾクゾクとした刺激が背骨をくだる。背中の下の方、腰のあたりで手のひらがとまりビクリと背中が跳ねる。
「さぁエミー、名前を呼んでくれないとすごいいたずらをしてしまうかもしれません」
先生の指先があやしげな動きをする気配がしてその先のことを想像して頭に血が集まる。
「てぃ、ティリオンさま!」
「さまも要らないんですが」
真っ赤になっているはずの頬を両手で挟まれ上を向かされてしまう。
「リンゴみたいでかわいいですから勘弁してあげましょう」
そう言っておでこに柔らかなキスが落とされた。
「ふふふ。このリンゴおいしそうで本当に食べてしまいたい」
耳元で囁かれる声。そのまま、ふぅっと吐息をかけられてビクリと背中がまたはねる。
カプリカプリと食べる真似して頬をあまがみされる。
見えなくとも分かる、空気の甘さにくらくらとして先生の胸にすがりつく。
見、見えないから余計に恥ずかしい。もっともっと頭に血が登ってしまうぅ・・・・
手から力が抜けそうになった時、先生の腕が私をしっかりと支えた。
「エミー辛そうですから抱き上げますね」
胸の中に抱き込まれて横抱きの姿勢でベッドまで連れて行かれおろされた。
「犬の置物がいなくなってから食べさせてくださいね」
先生はそう耳元で囁いて唇に軽いキスを落として離れていったんだけど・・・・
え、え、え、え?
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
R18、アブナイ異世界ライフ
くるくる
恋愛
気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。
主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。
もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。
※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~
シェルビビ
恋愛
男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。
10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。
一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。
自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる