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41 辺境での出会い

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辺境に到着した私達を迎えてくれたのは辺境伯の騎士団と王都からも遣わされた魔法騎士の混成軍だった。



「この度は聖女様とユリウス殿下にはわざわざご足労を頂きまして。恐悦至極にございます」



 辺境伯の騎士団長は上背のある見るからに頑丈そうな騎士様で彼のまわりを赤いオーラが包んでいることから炎の魔法が得意な魔法騎士だろうと予想がついた。しっかりとした顎にワイルドな髭の強面のいかにも歴戦の騎士といった風格だ。



「堅苦しい挨拶はよしてくれ。アレストート団長。久しぶりだな、息災で何よりだ今回は無理を聞いてもらったらしいな」



「なぁに、殿下のためなら苦労もいといません。さぁご紹介下さい、なんせむさい男どもしかおりませんので。聖女様のような美しい女性は大歓迎です」



「アストリアと申します。アレストート団長。今回はご尽力いただきありがとうございます」



 ニコリと笑うアーティは軽く会釈をするだけの聖女としての振る舞いで応える。光の精霊に愛されてるアーティの周囲は明るい光に満たされていてちょっと眩しいくらい。今の彼女は王家に認められた聖女として俗世の地位と隔絶された振る舞いを許されているから、淑女の礼はそぐわない。シンプルな白地に黄色の刺繍をほどこした動きやすいツーピース姿だ。



 うん。よくできました。



 アストリアの後ろに控えながら思わず心のなかで合格マークを送る。わたしったら根っからのサポートキャラだわ。かくいう私は今日は分厚い前髪も横に流して止めて後ろでお団子をつくって侍女としてのお仕事をしやすいように第二王子に使える人たちのお仕着せを着ている。この服を着ていると、騎士たちには私が誰に使えているのか分かるので万が一にも変な考えを起こされることがないようにということだ。



 状況的に只今エロゲーだからね。うん。飢えた男どもの中にかわいい子羊ちゃんが現れると、そういったイベントが起こりそうだよねぇ。合意のない無理やり輪姦とか御免こうむるので注意が必要よね。ということで念の為の厚底メガネを一応装着中です。



 アーティとユリウス殿下そして騎士団長の後ろにはずらりと騎士たちが並んでいる。後ろの方には宿泊に使われる天幕も見えている。そして、辺境伯の騎士団長の次は王家の魔法騎士達をまとめる魔法騎士団長が挨拶をはじめたとき並ぶ騎士の中に視線を走らせていた。



 ちょろすぎシャルル君とひょっとしたらセクシー筋肉様がいるんじゃないかなって。



 いや、多分絶対いると思うんだけども、皆同じ鎧にマント姿でこれはなかなか難しい。しばらく視線を走らせていたんだけどざっと300人くらいいる騎士たちの中から二人を見つけることは出来なかった。



「さ、殿下と聖女様にはこちらで状況をご説明します。お付きの方たちはあちらの天幕へ」



 そう言われ殿下とアーティが近くの立派な天幕へ案内されていくのを見送っていたら騎士団長たちに続いて何人かその天幕に続いた。王族の殿下のいる場所にいることを許されるということは騎士団の中でも上の人物。副団長、中隊長以上の階級だろう。



 そしてそのうちの一人が天幕の入り口を閉じる時にこちらを見た。

 一瞬だけ彼の視線が優しさをはらみ、そして天幕は閉じられた。



 こちらをみたときに彼の口元が少しだけ緩んでいたような。



 一瞬だけしか確認できなかったけどあの彫りの深いワイルド系イケメンは・・・・めちゃくちゃ好みすぎて目が離せなくなっちゃうあのお姿は・・・・



 壁ドンされて緊張のあまり息ができなくなってただただ目に焼き付けていた鳶色の瞳。寝起きにも関わらず短時間でがっつり食べられちゃったあの朝の・・・・思い出すと体の奥がくぅっと。

 あ、やばい。



 うん。・・・・やっぱりセクシー筋肉様ですよね。



 後ろばっかり見てたから気づかなかった!かなり前列にいらしたんですね!!



「侍女殿はこちらへ」



 案内してくれるうすいグリーンの瞳の騎士見習いは一瞬私を見て目を見張った。って、これシャルル君じゃん!!でも彼は何も言わなかったので、私も無言で彼について少し離れた天幕へむかう。私よりも背が高いけれどまだ線の細い彼は筋骨隆々で上背のある騎士の中では小柄に見える。柔らかそうな明るい茶色の髪が耳にかかる程度に揃えられていて攻略対象なだけあって実に爽やかな姿に、学園での彼を思い出す。



 アーティに言われた言葉で真面目に騎士訓練をする前はちょっとすねた面倒くさい少年だったんだけど、うん、うん、元気にやってるみたいで嬉しいな。



 この時、気分はまるで親戚のおばちゃんだった私はシャルルくんが天幕を出る時に見せた気まずそうな顔の意味を理解してなかったんだよね。



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