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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

好きな相手に見られながら

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 コンコン、とドアをノックするように殿下が出窓のガラスを軽く叩いている。

 もしかしたらサフィニア様とマーコット様にその音は聞こえていなかったのかもしれない。
 けれどマーコット様の肩にのるクルルが羽をバサリと大きく広げた。
 クルルの様子にこちらを見上げたマーコット様と窓ガラス越しに目が合う。

 人懐っこい表情で笑うマーコット様がこちらに向かって手を振っている。
 手を振り返そうとして……ビクンッと身体が震えた。

 殿下……!?

 ワンピースの裾から入り込んだ殿下の手が、なぜか私の太腿を撫でている。
 出窓は私の腰くらいの位置にあるから不埒に動く殿下の手がマーコット様に見られる心配は無いけれど。

 無い、けれど……

 久しぶりに殿下の手が私に触れたから……
 肌が接しているところが、とても、熱い。

 ぁ……違う、触れているところだけじゃないかも。
 太腿で円を描くように殿下の手のひらが動くと、身体の芯までカーッと火照ってしまう。

「でん、か……」

 こんな事をされて怒らなければいけないのに。
 吐息のような声色になってしまって、殿下を咎める声に力が入らない。

「手を振り返さないと変に思われるよ、ミーネ」

 耳元で殿下に囁かれた。
 殿下の言葉に慌ててマーコット様の方へ手を振り返す。

「ぁ……ッ!」

 思わず声をあげてしまった。
 太腿の前側を撫でていた殿下の指が、ショーツのクロッチ部分から中へ侵入してきたから。
 マーコット様に振っていた手が、力なくダラリと揺れる。

「ほら、ちゃんと手を振らないと」
「ンぅ……殿下……なぜ、こんな事を……」

 なんとか右手を肩の高さまで上げて、外に向かって振った。
 背後に立たれているから、殿下の表情は見えない。

 父の件を調べるために勝手な事をしようとした私にひどく怒ってこんな事をしているの?

「なぜって? 好きな相手に見られながらだと身体の反応が違うと思うから、確かめたくて」

 好きな相手に、見られながら……?

 窓ガラスの向こうを見下ろすと、マーコット様に話しかけられている様子のサフィニア様が天使のように愛らしく微笑んでいる。
 私たちが上にいるとマーコット様から言われたのか、サフィニア様もこちらを見上げて手を振り始めた。

「おそらくいつもより気持ちが昂り、身体の準備ができるのも早いはずだ」 
「……ん……ぅ……ッ」

 ショーツの中に潜り込んだ殿下の指が、私の足の付け根にある割れ目の上をヌルヌル滑るから。
 殿下の指が、割れ目を往復するたびに。
 クチュクチュとショーツの中で微かな音がしている。

 必死に声を堪え、口をキュッと結び口角を上げ。
 外に向かって微笑んで、右手を振り続けた。

 手を振り始めてから、そんなに時間は経っていないはず。

 だけど、脚がガクガクしてきて……
 立っているのが、つらい。

「ミーネ……もうこんなになってる」
「んンッ!」

 ぬちゅ、と湿った音がして殿下の指が私のナカへ入るのと同時に。
 殿下の中心にあるモノが、うしろから腰のあたりにぐッと押しつけられた。

 服の上からなのに分かってしまう。
 殿下の、アソコ、が。
 ……すごく硬くて、大きくなってる……ッ。

 殿下……
 サフィニア様に見られているから、気持ちが昂っているのですか……

「そうそう、ミーネはマーコットを呼び止めるつもりだったのだろう?」

 指を私のナカに入れたまま、殿下は反対の手を窓ガラスへと伸ばし……そこにあるハンドルを回して、窓を開けた。





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