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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
真実を知りたい
しおりを挟むジョハン様とネイブルの背中をイニアナ様がパタパタ追いかけていく。
その三人の後ろ姿を私のすぐそばで見ていたサフィニア様が、口を開いた。
「ネイブル様はいつもミーネ様の事を気にかけていらっしゃいますよね……今もミーネ様がつらい思いをしないように、ジョハン様とイニアナ様を遠ざけてくださって」
「早くミーネ様以外にも目を向けられるようになるといいんですがねぇ。それにしてもあの様子だとジョハン様……留学中に必修だった武術をやっていなかったのでは?」
ベルマリーの発言に、サフィニア様が困ったような微笑みを浮かべた。
「そうかもしれませんね……。タジェロン様もおっしゃっていました。視察に来るたびにアールガード領でジョハン様を見かけるけれど留学中の必修科目の方はどうなっているのかと」
サフィニア様とベルマリーの話し声が、なんだか遠くに聞こえる。
頭の中が、先ほどイニアナ様に言われた言葉でいっぱいになっていたから。
殿下は私と離縁するためにアールガード領を何度も訪れ、父の不正について調べていたの?
でもそれならなぜ、私を国母にするための妊娠に協力しようと思ってくれたのかしら……
私の、ために……?
いいえ、そんなはずはない。
殿下は不正を許したりする人じゃない。
学園の頃からずっとそばにいたから、その事はよく知っている。
だけど……
タジェロン様は、しばらくのあいだ陛下と殿下と第一宰相と四人でこんを詰めて話し合うことが多そうだと言っていた。
それはまさか、殿下を説得するため……?
長年婚約者として一緒に過ごしてきた私に対して同情や友情を感じている殿下が……もしかして自分の信念を曲げ不正についてうやむやになさろうとしている?
そんな事をしたらタジェロン様が宰相ポストに推薦される今度の宰相会議にも、何かしら影響が出てしまうのでは?
会議で変に話が拗れたりしたら、殿下の立場だってきっと悪くなってしまう。
真実を、知りたい。
父のためにも、私自身のためにも、そして何より、殿下のために。
視察先のアールガード領にいらっしゃったサフィニア様なら、何かご存知なのかしら……。
「サフィニア様……」
「なにかしら、ミーネ様」
いつも通りの穏やかな笑みを向けられた。
サフィニア様の笑顔は、人をホッとさせる魅力を持っているといつも思う。
きっと殿下も、この笑顔が大好きなのだろう。
「殿下はこの一年、何度も何度もアールガード領を訪れていました」
「ええ、そうね。たびたびアールガード領へいらしていたわ」
「その理由を、サフィニア様はご存知なのでしょうか……。本当にイニアナ様がおっしゃっていたとおり、殿下は私の父の不正についてアールガード領で調べていたのですか……?」
サフィニア様の目をまっすぐ見つめる。
すると少し困ったような顔をしたあと、サフィニア様は目を伏せ首を横に振った。
「ごめんなさい、視察にいらした時の会議には参加していないので私は何も知らないの。マーコットならよく殿下とタジェロン様と話をしていたから、何か知っているかもしれないけれど」
マーコット様なら……
宰相会議はもう三日後。
マーコット様に話を聞くのなら、明日か明後日しかない。
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