上 下
44 / 98
甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

安心?

しおりを挟む


 密着していた殿下の身体が、離れていったと思ったら。
 シュル……と微かにリボンの解ける音がした。

 ……ぇ、もしかして、脱がされてる?

 肌を晒すのが恥ずかしくて抵抗しようとしたけれど、遅かった。

 夜着は脱がすためにあるような作りの物しかないから。
 簡単に身体から取り払われてしまう。
 おそらく下着も奪われてしまって、あるべき所にない。

 そうしたら脚を開かれて。
 何も着てないから恥ずかしすぎて閉じようとしたけど。
 たぶん殿下が脚の間にいるのだと思う、閉じられない。

「濡れているのが分かる?」

 脚の付け根にある割れ目をクチュクチュ音を立てて撫でられた。
 身体が勝手にビクッと弾む。

「っ、ㇺん……――」

 声を上げそうになってしまい、咄嗟に手で口を塞いだ。

 せっかく顔が見えないように覆っているのに。
 声を出したら、サフィニア様と違う、と殿下をがっかりさせてしまう。

「口は塞がないで。声を聞かせて」

 両手を優しく掴まれて、口から離された。

「っ声、出して……いいのですか?」
「たくさん聞きたい」

 殿下に触られると出てしまう声、いつもよりも高いから。
 もしかして、普段のサフィニア様の声と、似ていたりするのかしら。

「……俺の声が聞こえて、嫌だったりする?」

 なぜか不安そうな声で、そう聞かれた。
 そんな事、思うはずない。
 それに今は、姿が見えない分、声を聞いてないと、不安で。

「声、聞きたいです。安心する、から」

「……安心、ね……」

 ……殿下、不満そう?
 もしかして、怒っている?
 どんな表情をしているのか、確認したい。

「……目隠しをとってもいいですか?」
「それはダメだよ」

 そうよね、サフィニア様を想像したいから……。
 今日はこのままの姿で、子種をいただく行為をするのかしら。

「では……頭を、撫でていてくれませんか」
「なぜ?」
「そばにいるか分からないと、不安なので」

 殿下に頭を撫でてもらうと、安心するから。
 せめて、それだけでも。

「手が塞がってしまうのは困るな」

 殿下が、小さく笑った。
 些細な願いも叶わず、胸がキュッと切ない。

「では、俺の頭を撫でていればいい」

 両手を殿下に誘導された。
 サラリと指に触れたのは、おそらく殿下の髪。
 殿下の頭になんて初めて触れた。私のくせ毛と違ってサラサラの手触りが心地いい。

 もしかして今日は、殿下の頭を撫でながら子を宿すための営みができるのかしら。
 それなら、すごく嬉しい。
 挿入されるのは、破瓜の時以来で少し怖いから。
 今回も痛いと思うけど、殿下の髪の感触に集中していればきっと痛みも和らぐはず。

 そう思いながら殿下の頭を撫でていたら、その位置が少しずつ私のお腹の方へと動いていった。

 私の身体に殿下の子種を挿入するには、殿下の身体が私の足の方に移動し過ぎている気がする。

 だって殿下の頭が、私の股のあたりにあるから。

 突然、フッと風を感じて身体が跳ねた。
 窓は閉まっているし風なんて吹いていないのに。

 先ほどクチュクチュ音を立てられ濡れそぼった場所に、風を感じるのは何故――





しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...