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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

俺って父親?(ラッドレン視点・寝室に来る直前まで時間戻ります)

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 今日受けとった書類の確認を終え、ふぅ、と息を吐き時計を見る。
 いつの間にこんなに時間が過ぎていたのか。
 もうすぐ日付が変わる時刻だった。

 さすがに少し疲れたな……。

 書類を引き出しにしまい、鍵をかけた。

 この先起きるであろう事を考えると、気が重くなってくる。
 だが王太子として、この国の不正を看過することはできない。

 ミーネの卒業試験の件は、ただの噂として放置しておくにはあまりにも事態が悪くなりすぎた。
 たとえ宰相でも、然るべき処分を受け罪を償わなければならない。

 ミーネ……

 自分の事がきっかけで……、と心を痛めたりしなければいいが。

 ミーネはつらさを内に閉じ込め我慢しようとするから心配だ。
 たぶん自分では無意識なのだろう。

 今日だってそうだ。
 イニアナ嬢に、俺との婚約の事を揶揄されて。
 好きで婚約したわけじゃない、と言い返すこともせずに。
 ただ黙ってイニアナ嬢の言葉を受け入れていた。

 そんなミーネがいじらしくて、守ってあげたくて。
 思わずイニアナ嬢に対しきつい態度を取ってしまった。
 王太子として、自分の個人的な感情を表に出すべきではないのに。
 ミーネの事となると、理性が保てなくなってしまう時がある。

 今日の事で、ミーネがつらい思いを引きずっていなければいいけれど……。


 ミーネの事を考えていたら、無性に会いたくなってしまった。

 今日の午後からはずっと別々に過ごし、夕食も一緒に取れなかったから、なおさら会いたく感じるのかもしれない。
 視察先なら遠すぎて、会えなくても仕方ないと諦めがつくけれど。
 近くにいるのに一緒にいられないという状況は、拷問のようにつらい。

 ミーネはもう寝てしまっただろうか。
 それなら寝顔、だけでも……

 第二執務室からドアでつながる自分の部屋を通り抜け、夫婦の寝室の扉を開ける。

 ミーネはベッドで横になっていたが、まだ眠っていなかった。

 ベッドに浅く腰かけて、手を伸ばしミーネの頭を撫でる。

 少しくせのある柔らかな亜麻色の髪が、甘えるように俺の指に絡んでくる感触が好きだ。
 だからつい、ミーネといるとよく頭を撫でてしまう。
 しばらく撫でていると、安心したように目を閉じる瞬間も、好きだ。
 
 目を瞑ったミーネの口元が、幸せそうに微笑んでいる。

 可愛い……。
 安心しきったような、この表情。
 俺の他にはきっと、ミーネの両親くらいしか知らない顔。

 そんな表情を見せてくれるのが嬉しい。
 嬉しい、の、だが、

 ……もしかして俺って、ミーネにとって父親のような存在なのだろうか。

 ふ、と昼間ミーネが見せた表情を思い出す。
 ネイブルに話しかけられて、頬を赤らめて。
 家族や友人に見せるのとは違う、恥じらいのある……まるで、恋人に見せるような表情を。





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