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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
遅めの朝食(ミーネ視点に戻ります)
しおりを挟む寝室にあるゆったりとしたソファに座り、遅めの朝食をとる。
ラッドレン殿下と、二人きりで。
朝食のメニューは、パンとイチゴとバナナ。
寝室の隣にある殿下の私室の、もうひとつ奥にある第二執務室に用意されていたもの。
本当は朝食用ではなく昨晩、視察先から急遽戻った殿下のために夜食として用意されていたらしい。
それ以降は人払いをしているからこちらから声をかけるまで誰も来ないよ、と殿下が言う。
普段食堂で一緒に食べる時とは違い、二人きりで食べる初めての朝食。
給仕がいない、それは構わないのですが……
……殿下、一人掛けのソファです、これ。
いくら大きめのサイズとはいえ、この座り方はいかがなものでしょう。
朝食の載った小さめのローテーブルの向こうに同じソファがもうひとつあるにもかかわらず、私は殿下の膝の上に座らされていた。
殿下の左腕で背中を支えられ、まるで横抱きにされているような状態。
ベッドから横抱きにされて連れて来られたから、必然的にそうなってしまったのかもしれないけれど。
結婚してから初めて一緒のベッドで寝て、朝起きたら殿下に抱きしめられていて。
それだけでも、私にとっては大事件なのに。
殿下の指で身体の敏感な所を翻弄され、背中から首をたどり耳まで舐められて……
何度も気を失いそうになって……いえ、もしかしたら少し失っていたかもしれないけど……
必死に耐えていたら、ぐったりとして身体に力が入らなくなってしまった。
そのため殿下になされるがまま。
殿下は私に服を着せると抱き上げて。
今ここに座っている。
殿下が私のためにクローゼットから用意してくれた服は、胸からお臍にかけて三か所のリボンを結べばいいだけの簡単に着られる閨の服。
……簡単に着られるという事は、簡単に脱げてしまうという事で。
なんだか、落ち着かない。
長さは足首まで充分にあるけれど、油断していると前が開いて太腿が見えてしまう。
昨日殿下に脱がされた下着は見当たらなくて、つけてないから気をつけないと。
しかもこの服、生地が薄くて薄くて、胸の先端、とか、下の毛のあたり、とか他に比べて色の濃い所がうっすらと透けている。
本当に、落ち着かなくて。
心臓がドキドキ跳ねているように感じる。
それに心臓が騒がしい理由は、これだけじゃない。
座ってからずっと、私の太腿あたりを押してくる硬くて熱い何か。
おそらく殿下の……だと思う。
でも意識してしまうと自分の身体の奥の方がなぜかジュクジュク疼くので、その存在についてはなるべく考えないようにしている。
そのうえ殿下は腰に大きめの布を巻きつけただけで上半身、裸。
王太子で人から護ってもらう側であるにもかかわらず、殿下は日々の鍛錬で鍛えているから。
まるで騎士のように逞しいその身体は、眩しすぎて直視することができない。
そんな殿下の膝の上に座り私は今、朝食を食べている。
いえ、食べている、では無いかも。
食べさせられている、だわ。
殿下はパンをひとくちの大きさにちぎると、私の口元へと持ってくる。
「ミーネ、口を開けて」
本当は、殿下の手から直接食べるなんて行儀が悪い事だけど。
まだ体が本調子じゃなくて、手を動かそうとしても力が入らなくて。
私はまるで、親鳥がくれる餌を待つひな鳥のように口を開け、殿下がくれるパンを食べる。
私が口でパンを受け取るたびに、殿下が嬉しそうに微笑むから。
ふたりきりだし、少しくらい行儀が悪くてもいいかな、と考えてしまう。
殿下は優しいから、こうやって人のお世話をするのが好きなのかもしれない。
パンを食べ終えると、今度はイチゴを口元に持ってきてくれた。
「大きいですね。どうしましょう」
殿下が手にしている真っ赤な大粒のイチゴ。
美味しそうだけど、とても一口では食べられそうにない。
「ナイフが無いから切ることもできないし、このまま齧ってしまえばいいよ」
殿下は私の唇にイチゴを近付けキスさせるみたいに、チョン、と触れさせた。
イチゴの甘い匂いがする。
口を開けて、といった感じに再びちょんちょん、とイチゴで唇に触れてきた。
小さくちぎったパンを食べさせてもらっていた時よりも大きく口を開けてイチゴをかじる。
かじった瞬間、じゅるッと音を立ててしまった。
はしたなくて、少し恥ずかしい。
殿下はジッとこちらを見ているし。
行儀悪いなって、思われてないといいけど。
「ミーネ、美味しい?」
みずみずしい果汁が口の中いっぱいに広がって、とても甘い。
「美味しいです」
「よかった。まだあるから、たくさん食べて」
差し出されるがままに、イチゴを口にする。
気付いたら殿下の指がイチゴで赤く染まっていた。
「ごめんなさい、殿下の手がベトベトになってしまいましたね」
「舐めてしまえばいいさ」
殿下が悪戯っぽい表情で笑った。
親しい人といる時にしか見せない表情。
こんな顔を見せられると、自分は特別なのかと勘違いしてしまいそうで困る。
少しだけ舌を出した殿下が、赤い果汁のついた指を舐めながらチラリと私を見た。
「っ!?」
ボンッ、と火が点いたように顔が熱くなってしまう。
だって、殿下が、昨晩……
私の敏感な突起に触れる直前、指を舐めていたのを、思い出してしまって。
恥ずかしい、のに。
殿下の蠱惑的なしぐさから目が離せなくなってしまって。
だから、気が付いた。
「殿下、肘の方まで果汁が垂れそうです」
「ぁぁ、本当だ」
肘を自分の顔に近付けようとしたところで、殿下の動きが止まる。
「自分の肘は、舐める事ができないんだね、知らなかったよ」
困ったように笑うと、殿下は私の顔を覗き込んできた。
「ミーネが、舐めてくれる?」
「ふぇッ!?」
まさかそんな事を言われると思わなかったので、口から変な声が出てしまった。
殿下の腕を舐めるなんて、不敬だから絶対にしちゃいけない。
でも……ベトベトにしてしまったのは、私。
……舐めてきれいにするべきでしょうか?
だけど……舐めて、なんて冗談だったり、しますか?
チラ、と殿下の方を見たら目が合って、肘を私の顔に少しだけ近付けてきた。
舐めてって言ったの、やっぱり本気みたい。
舌を出して、おずおずと殿下の肘につける。
そのまま、つーッと手首に向かって舌を這わせイチゴの汁を舐めた。
もしかしたら腕に小さな傷があって、沁みたのかもしれない。
吐息を漏らすように、殿下が小さく呻いたから。
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