上 下
62 / 70

61 注意:少しお下品かも?

しおりを挟む


 ヴェルク様に知られることなく、ゾマ様の側近のトルタル様と話をしたい。
 今度の満月の日にやってくる、魔族の襲来を防ぐヒントを探るために。

 魔族が魔界を出てこちらの世界に来たら、人間との争いは避けられない。
 聖女のいないノワール王国の人々のために結界を張っているヴェルク様だもの、魔族と人間が争う事になったら絶対に悲しむ。その前に手を打たないと。

 そして手を打つために動くのは秘密裏に行わなくちゃ。ヴェルク様は魔族だから……、人間の私が助けてほしいなんて言って、困らせたりしちゃいけない。
 ヴェルク様を人間と魔族の板挟みにしてしまう事態は、何としても避けなければ。





 金の魔王城へ戻るため、見送ってくださる陛下とともに、子ども姿のレオン様と並んで祈りの間へと歩みを進める。

 祈りの間の扉の前に着いたところで、陛下とレオン様よりも一歩先に進み扉に触れた。
 聖女として祈りを捧げるために、毎日訪れていた場所だったから。
 扉を開けるのは自分の役割のような気がして、自然と身体が動いていた。

 他の部屋のものよりも重厚な扉に手のひらをあて、ギギギギ……と押し開けていく。

 扉を開けると目の前に広がる荘厳な雰囲気が好きだった。
 祈りを捧げるのに相応しい厳かな祭壇。
 その祭壇で煌めく先がピンと尖った巨大な水晶。

 何度ここを訪れても、祈りの間に来ると気持ちが引き締まりその神聖さに心が震える。


 ……はずだったけれど。


 扉を開けて、固まってしまった。

 祭壇の手前に、中腰で立つ男性と座り込む女性の姿。

 女性の着衣は乱れ、男性はズボンが下着ごと膝まで下りてお尻が丸見え。

 そして男性……デセーオ王太子殿下は、中腰のままボタンの外れた自分のシャツの裾をギュッと掴み身体を捩らせながら悶えていて。
 恍惚とした表情で快楽に支配されたような声をあげていた。

「ゔぅんッ♡ んあッ♡ ゔ、ァアッ♡」

 よく見るとデセーオ王太子殿下の股間には、赤、緑、赤、緑、と変化し激しく点滅するプルプルとしたゼリー状の物体が、男性の象徴を包むようにくっついている。 

 その点滅のしかたは、発情期のゴリゴンの目によく似ていた。

 座り込んだ女性……テータ様は乱れた着衣を直すことも忘れたように、ただ呆然と殿下の姿を眺めている。


「あちゃ~、覚醒しちゃったねぇ」

 子ども姿のレオン様が、私のうしろから祈りの間を覗き込んでいた。


 ど、どういう事ですか、この状況!?


 デセーオ殿下とテータ様を指差しながらアワアワと口を動かして、目線でレオン様に疑問を投げかける。

「あ、あれね、ゾマが研究していたスライム。精液が大好物みたい」

 せ、精液が大好物なスライムって……
 ゾマ様、なんて変態チックな研究をなさっているんですかっっ!

「普段は宝石に擬態しているんだけど、箱を開けた状態で生体の性欲を察知すると覚醒しちゃうらしいよ」

 そう言われて祭壇の方へ視線を向けると、殿下がレオン様から取り上げた煌びやかな箱が床に転がっているのが見えた。

「あ、お腹いっぱいになったのかな」

 ポト、ポト……と殿下の股間にくっついていたスライムが少しずつ床へ落ちたと思ったら、うねうねと動いて箱の中へ戻っていく。

 でも殿下の陰茎の先端にはまだ少しスライムが残っていて、ちゅぅぅっ、と何かを吸うような音が微かに聞こえた。

「きゃぁぁぁぁ!」

 先ほどまで呆然としていたテータ様が叫び声を上げる。

 先端に残っていたスライムがポトリと落ちた瞬間、殿下の陰茎から勢いよく放出された白濁液が放物線を描きながらテータ様の頭上へと降り注いだから。

「ねぇ、息子さんのムスコさんが大変な事になってるけど、どうするの、あの人達」

 殿下たちを指差したレオン様が振り返りながら陛下を見上げた。
 私もつられて陛下の方へ目を向ける。
 陛下は特に動揺する様子を見せることもなく、ただ静かに首を横へ振った。

「よかったら、処遇については俺様に任せてみない?」

 レオン様が、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 祈りの間でこんな事をしている姿を陛下に晒してしまっては、デセーオ王太子殿下の王位継承権剥奪もやむを得ないだろう。
 婚約期間中に殿下の行動を改めさせることができなかった自分にも責任があるような気がして、心が痛んだ。

「デセーオ、沙汰は後ほど言い渡す。それまでは部屋から出ずに謹慎せよ」

 悲しみを帯びた陛下の低い声が祈りの間に響く。







 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 

 【お詫びとお知らせ】

 お気に入り登録のままお待ちくださった読者様、本当にありがとうございます。

 デセーオ殿下のちょっとお下品なお仕置きシーンについて内容は元々決まっていたのですが、ノーチェの世界観と異なるため少し悩んでおりました。
 悩んだ結果最終的にあまり変更しておりませんので、不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません。

 お口直し代わりに以下の短編にて、切なく甘めな恋愛シーンを掲載しているため、もしよろしければお立ち寄りください。

【R18】王太子に婚約破棄された公爵令嬢は純潔を奪われる~何も知らない純真な乙女は元婚約者の前で淫らに啼かされた~

 また、今後も長編と並行して短編を投稿する可能性があります。
 長編が亀更新の中恐縮ですが、ご了承いただければ幸いです。




しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...