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しおりを挟む黒の魔王城と違って、華やかな印象のお部屋。
壁には、この大陸の地図が飾られている。
クルーティス城にも飾られているこの地図。
おそらくノワール城とセルヴィル城のどこかにも飾られているはず。
金の魔王城にまであるなんて、知らなかったけれど。
ヴェルク様のお城にもあるのかしら。
これは3国の暗黙の協定。
隣国の領地に侵略して、この地図を変えることのないように、という。
ここペラフィーム大陸は、ほぼ円に近い形をしていて、クルーティス、ノワール、セルヴィルの3国の領地面積はだいたい同じくらい。
ケーキを三等分にカットした感じで、時計でいうと中心から2と6の方向に伸びる線で囲まれたところが私の住んでいたクルーティス王国。
6から10の間がヴェルク様のいらっしゃるノワール王国、残りの10から2、つまり北側に位置しているのはサティ様の夫である銀の魔王ゾマが支配するセルヴィル王国。
中心から6時の方角に生い茂る魔の森、10時の方角に流れる暴れ川、2時の方角にそびえる未踏の山脈が、3国それぞれの国境とおおむね重なっている。
円の中心は白い。そこは魔物の住むところ。
白い中心のすぐ外側には、それぞれの国を支配する金、銀、黒の魔王城。
そして魔王城のすぐ外側に接しているのがそれぞれの国の人間の王の城。
王城がなぜ危険な魔物の住む魔王城と隣り合わせとなっているのかは、どの国でも王が魔物から人間を守っていると国民に力を知らしめるためだと前に聞いたことがある。
実際、クルーティス王国では陛下が金の魔王レオンと貢ぎ物等の交渉をすることで、魔物が暴走するのを抑えられていると思う。
もし魔王がその気になったら私の張った結界など難なく破り、人間を支配できるはずだから。
ここに来てから、考えていることがある。
ヴェルク様のお城から金の魔王城に来た時の鏡のように、おそらくクルーティス城と金の魔王城をつなぐ秘密の通路もあるはずだと。
一対一で魔王と交渉される陛下。
おひとりで城の外に出ている様子は今まで無かった。
きっと秘密の通路を行き来していたのだと思う。
私も秘密の通路を使ってクルーティス城に行き、もう一度デセーオ殿下と話がしてみたい。
殿下が使ったお金はどこから手に入れたものなのか、確認しなければ。
陛下やセリウス第二王子のためにも、大問題となる前になるべく穏便に解決したいから。
コンコン、と扉がノックされた。
先ほど案内してくれたプルプルうさぎさんがお茶を持って入ってくる。
「おおおおお待たせして、もももも申し訳ありません。レレレレレオン様はお取込み中で、もももももう少しお待ちください」
お茶を置いて部屋を出て行こうとするプルプルうさぎさん。
「あの、お手洗いに行きたいのですが、場所を教えていただけますか?」
上手くいけば、城の中の様子を探って秘密の通路を見つけられるかもしれない。
「リリィ、ひとりで行ってはダメだ。我が一緒に行こう」
ヴェルク様が? それでは自由に歩けないし、クルーティス城に行くための秘密の通路を見つけたいなんてバレたら反対されるに決まってる。
「殿方と一緒にお手洗いなんて恥ずかしいです。お断りします」
「む……、仕方ない、ラパン、リリィのことを頼む」
「かかかかかしこまりました。ヴェヴェヴェヴェヴェルク様」
このプルプルうさぎさん、ラパンっていう名前で女の子なのかな。
うう、本当は場所だけ聞いてひとりで行きたかったけど。
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