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ふたりきりの車内
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勇太君のとは違うけど、創一郎さんの車も今まで見たことのないカッコイイ車。
運転している創一郎さんを見るのは初めて。横顔とハンドルを握る姿が、すごく素敵でドキドキした。
運転中だからか、創一郎さんは私の方をほとんど見ないで会話する。
「花、なんで勇太とホテルになんて行ったんだよ」
「ランチしながら仕事の報告を、することになって」
「ランチにしては、時間が長すぎると思うけど」
「勇太君の話が楽しくて、いつの間にか時間が経ってて、そのまま甘いもの食べようかってなって、お茶してました」
「……あ、そ。楽しくて、ね。それはよかった」
よかった、と言っている割に、創一郎さんの口調はとげがあるように鋭い。
「そういえば勇太は車で行ったみたいだったけど、花はホテルまでどうやって行ったの?」
「あの、勇太君が、車で家に迎えに来てくれたんです」
「ふーん」
その後は、特に会話をすることは無かった。
今日はなんだか、沈黙が重く感じられる。
気のせいなら、いいんだけど……。
マンションの地下駐車場に着いた。車を停めてシートベルトを外した創一郎さんは、腕を伸ばして私のシートベルトも外してくれる。
そしてガクンッと私のシートの背もたれを後ろに倒すと、そのまま私の上に覆い被さってきた。
「ひゃッ」
身体が密着して、顔が近くて、自分の心臓の音を痛いくらいに感じる。
「花、男の車にひとりで乗ってこうされたら逃げられないだろ。いいか、絶対、絶対に、俺以外の車に乗るな」
創一郎さんの声、怒ってる。
娘を心配する、お父さんみたいに。
「……返事は?」
「はい……ごめんなさい」
「……いい子だ」
身体を離して、私の頭を撫でる。
「勇太に、何かされてない?」
「? 何かって、何ですか?」
創一郎さんは困ったような目で笑い、今度はゆっくりと私に覆いかぶさり、シートと私の背中の間に腕を差し込んで、私を優しく抱きしめる。
「ごめん、花。安心したいから、少しだけこうしてて」
ちょっと泣きそうで甘えた感じの、創一郎さんの声。
副社長室で、膝枕をした時のことを思い出した。
最近疲れてるから、誰かに甘えたかったり、するのかな。
「創一郎さん……私の指、しゃぶってもいいですよ」
「へ……なんで?」
創一郎さんが少しだけ顔を上げる。
……うわ、目がすごく、近い。
「安心するかな、と思って。保育所でも、何かをしゃぶって安心したように眠る男の子は多いです」
背中にまわされた腕に、グッと力が入る。
「そういうこと、勇太にも言ったりしてない?」
「? 言いませんよ。創一郎さんは大人なのに甘えん坊だから、特別です」
フッと小さく創一郎さんが笑った。
「甘えん坊でもいい。それなら、今回は耳にしとく」
え? 耳?
創一郎さんは私の髪に指をとおしてかきあげ、耳朶を口に含む。
チロチロと舌先で耳朶を弾き、唇で、ちぅ、と吸った。
「……ぅン」
耳を舐められてるのに、なぜか太腿の辺りがソワソワして、膝をもぞもぞと擦り合わせてしまう。
耳の裏側を這う舌の感触にビクッとした瞬間、一台の車が駐車場に入ってきて、ここから遠い場所に停まった。
創一郎さんは私の首筋にチュッとキスをしてから、ゆっくりと身体を起こし、私の頬に触れる。
「花、誰かに見られたら嫌だから、少し落ち着いたら行こう。花のこんな表情、俺以外に見せたくない」
……他の人に見せられないほど、変な表情、してるのかな、私。
穴があったら、入りたいよぅ。
運転している創一郎さんを見るのは初めて。横顔とハンドルを握る姿が、すごく素敵でドキドキした。
運転中だからか、創一郎さんは私の方をほとんど見ないで会話する。
「花、なんで勇太とホテルになんて行ったんだよ」
「ランチしながら仕事の報告を、することになって」
「ランチにしては、時間が長すぎると思うけど」
「勇太君の話が楽しくて、いつの間にか時間が経ってて、そのまま甘いもの食べようかってなって、お茶してました」
「……あ、そ。楽しくて、ね。それはよかった」
よかった、と言っている割に、創一郎さんの口調はとげがあるように鋭い。
「そういえば勇太は車で行ったみたいだったけど、花はホテルまでどうやって行ったの?」
「あの、勇太君が、車で家に迎えに来てくれたんです」
「ふーん」
その後は、特に会話をすることは無かった。
今日はなんだか、沈黙が重く感じられる。
気のせいなら、いいんだけど……。
マンションの地下駐車場に着いた。車を停めてシートベルトを外した創一郎さんは、腕を伸ばして私のシートベルトも外してくれる。
そしてガクンッと私のシートの背もたれを後ろに倒すと、そのまま私の上に覆い被さってきた。
「ひゃッ」
身体が密着して、顔が近くて、自分の心臓の音を痛いくらいに感じる。
「花、男の車にひとりで乗ってこうされたら逃げられないだろ。いいか、絶対、絶対に、俺以外の車に乗るな」
創一郎さんの声、怒ってる。
娘を心配する、お父さんみたいに。
「……返事は?」
「はい……ごめんなさい」
「……いい子だ」
身体を離して、私の頭を撫でる。
「勇太に、何かされてない?」
「? 何かって、何ですか?」
創一郎さんは困ったような目で笑い、今度はゆっくりと私に覆いかぶさり、シートと私の背中の間に腕を差し込んで、私を優しく抱きしめる。
「ごめん、花。安心したいから、少しだけこうしてて」
ちょっと泣きそうで甘えた感じの、創一郎さんの声。
副社長室で、膝枕をした時のことを思い出した。
最近疲れてるから、誰かに甘えたかったり、するのかな。
「創一郎さん……私の指、しゃぶってもいいですよ」
「へ……なんで?」
創一郎さんが少しだけ顔を上げる。
……うわ、目がすごく、近い。
「安心するかな、と思って。保育所でも、何かをしゃぶって安心したように眠る男の子は多いです」
背中にまわされた腕に、グッと力が入る。
「そういうこと、勇太にも言ったりしてない?」
「? 言いませんよ。創一郎さんは大人なのに甘えん坊だから、特別です」
フッと小さく創一郎さんが笑った。
「甘えん坊でもいい。それなら、今回は耳にしとく」
え? 耳?
創一郎さんは私の髪に指をとおしてかきあげ、耳朶を口に含む。
チロチロと舌先で耳朶を弾き、唇で、ちぅ、と吸った。
「……ぅン」
耳を舐められてるのに、なぜか太腿の辺りがソワソワして、膝をもぞもぞと擦り合わせてしまう。
耳の裏側を這う舌の感触にビクッとした瞬間、一台の車が駐車場に入ってきて、ここから遠い場所に停まった。
創一郎さんは私の首筋にチュッとキスをしてから、ゆっくりと身体を起こし、私の頬に触れる。
「花、誰かに見られたら嫌だから、少し落ち着いたら行こう。花のこんな表情、俺以外に見せたくない」
……他の人に見せられないほど、変な表情、してるのかな、私。
穴があったら、入りたいよぅ。
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