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美人の秘書さん

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 ふふふん♪

 会社の前のパン屋さんで買った、ふたり分のサンドイッチを胸にエレベーターで最上階へ向かう。
 目指す部屋は、一番最初に面接で訪れた副社長室。

 今日は創一郎さんから初めてのお昼のお誘い。
 『総務の相澤さん』から保育所の私あてに内線がきて、提出した書類に不備があったのかなぁ、と思って電話にでたら創一郎さんだった。
 『花、はい、と、わかりました、だけしゃべってね』と言われて、その通りに電話対応する。
 そうしたら、副社長室で、一緒にお昼を食べることが決まった。
 
 薬局に寄って痛み止めも飲んだから、体調もだいぶいい。
 足取り軽く副社長室前まで行き、扉をノックして社員証兼カードキーを扉横の認証機にかざす。
 私のような一般職員のカードキーだけでは、この扉は開かない。
 中にいる人に、訪問者が誰か分かるだけ。なのでこのまま鍵が解除されるのを待つ。

 どうぞ、と扉を開けてくれたのは……勇太君。
 そしてその奥にもう一人、写真でだけ見たことのある、あの美人の秘書さんが、いた。

 実際に動いている彼女は、写真よりもさらに美しい。
 背は靴を履かなければ勇太君より少し低いくらい? 女性にしてはかなり高い方。ヒールの高い靴を履いているから、勇太君と並んで立つと彼女の方が高い。
 海外でモデルをやってますって言われても、みんな納得すると思う。

「花ちゃん、こんな所に来るなんて、どうしたの?」
 
 勇太君が、人懐っこい笑顔で聞いてくる。

「あなたが噂の花ちゃんなのね。勇太、花ちゃんは創一郎とこの部屋でランチですって。ごめんね、花ちゃん。創一郎少し遅れるから、もう少しここで待っていてくれる?」

 青みがかったきれいな瞳をした、栗色のロングの髪がふわりと美しい秘書さんが、眩しいくらいに麗しい微笑みで話しかけてくるから、女性同士なのに思わず見惚れてしまった。

 『創一郎』って、呼ぶんだ……。

「えー、いいなぁ。僕も一緒にお昼食べたい」
「勇太、あなたはお昼に会食の約束があるでしょう。そろそろ出た方がいいわ」

 おじさんと一緒の食事なんか美味しくないよー、と言いながら渋々といった感じで勇太君は部屋を出て行った。
 美人秘書さんは、私が持っている袋に気が付くと「そこのパン美味しいわよね、私も大好き」と嬉しそうに笑う。
 他にも美味しいお弁当のお店やお薦めのカフェを教えてくれた。
 話していると、好きな物を共有したいっていう彼女の素直な気持ちがよく伝わってくる。
 
「花ちゃんと仲良くなれてよかった。私、弟しかいないから、妹ができたみたいで嬉しい」

 ふふふ、と可愛らしく微笑む美人秘書さん。

「私の事は、スージーって呼んでね、花ちゃん」

 勇太君のように人懐っこい笑顔で笑う。
 なんだかスージーさん、顔とスタイルがいいだけじゃなくて、中身もとっても素敵な女性。

「あ、立ち話でごめんなさい。花ちゃん、今コーヒーを淹れるわね。そこに座ってて」

 そう言われて応接用のソファに、ちょこんと腰をかける。

「そういえば、花ちゃん今日女の子の日だったわね。ハーブティーの方がいいかな。苦手じゃないかしら?」

 「はい」と頷く。
 うわぁ、創一郎さん、そんなことまで話してるんですね。
 ふたりは何でも話せる、仲なんだな……。

「モニターの報告は全然急いでないから、体調がよくなったら、また使ってみてね」

 そう言いながら私の前にハーブティーを置く。
 カップからふわりと漂ういい匂いに、なんだか癒される。

「あ、そうそう、これをお願いしようと思っていたんだった」

 スージーさんはスーツのポケットから、メジャーを取り出した。

「次の次に送るものの関係で、詳しくサイズを知りたいから、下着も脱いで正しいサイズを測ってもらいたいの」

 取り出したメジャーを、スージーさんが私に渡す。

「測る場所はこのメモのとおり。いったん私、退出するわね。この部屋はオートロックで、カードキーは私と創一郎と勇太しか持ってないから、ここでなら下着を脱いでも大丈夫よ」

 スージーさんは窓のブラインドをぴっちりと閉めてから「それじゃ、またあとでね」と言い、部屋を出て行った。
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