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おまけの話(成瀬君視点)※本編より半年前の内容になります。
しおりを挟む社長室に呼び出された。
部屋の中には、日本のトップ企業相澤グループの社長と俺のふたりきり。
「悪かったね、突然呼び出したりして」
目の前にいる社長は、俺の親父の学生時代からの友人でもある。
ふたりとも同じくらいの規模の会社の社長同士ということもあって、今でも切磋琢磨しあう良き友人でありライバルでもあるらしい。
甘ったれな三男の俺を自分の企業に就職させて甘やかしたらダメになると考えた親父は、俺を鍛えるために相澤グループへ就職させた。
社長は俺と同い年の息子がいるとは思えないほど見た目が若く、男の俺から見ても格好いい。
相当モテるはずなのに、若い頃に配偶者を亡くして以来ずっと独身を貫いていて浮いた噂も無いのが不思議なくらいだ。
「実は3か月後に創一郎をフランスから日本へ異動させようと考えていてね。副社長のポストに就かせようと思っている」
創一郎が日本に……。
「成瀬君は大学も一緒でよく知っている仲だし、4月から副社長秘書として創一郎を助けてもらえないだろうか」
社長の息子の創一郎とは、フランスで同じ大学に通っていた。
親と一緒で創一郎も、かなりモテるのに浮いた噂がない不思議な男。
かといって同性愛者というわけでもなさそうで、おそらくもう心に決めた相手がいるのだろう。
「お話はありがたいのですが、まだ営業部で学びたいことがあるのでお断りさせていただきます。申し訳ありません」
営業の仕事が楽しいのもあるけれど、なにより異動して桜井と離れたくない。
「そうか……。残念だけど仕方が無いね。フランスからは源太と勇太も一緒に来るからよろしく頼むよ」
源太と勇太は創一郎の従兄弟。兄の鈴木源太は同じ学年で大学も一緒だった。
「そうそう、桜井さんだったかな、君が前に自分の営業サポートとして異動させてほしいと私に直談判してきた女性は」
桜井は、2年前に社長に頼んで俺の営業サポートにしてもらった。
今では無くてはならない大切な存在になっている。
本当にあの時社長にお願いしてよかった。
「彼女が異動してから、君の営業成績すごいね。順調みたいでよかったよ」
桜井とは同期入社だったけれど、最初から気になっていたわけじゃない。最初の頃はその他大勢のうちのひとりといった感じで全然気にならなかった。
ところがある日、突然地味な外見に変わったことでやけに気になってしまう。
同期の飲み会では隅の方でひとりで飲んでいることが多いことに気づき話しかけてみると、なんていうか、ピュアで汚れてなくて綺麗だと思った。
もう少しゆっくりと、時間をかけて話してみたい。
社長に直接掛け合って総務部にいた桜井を自分の営業サポートに異動してもらった。
「君のお父さんは君の受け身な性格を心配していたけれど、そんな事はない。むしろ貪欲なくらいだ」
俺もまさか自分がそんなわがままを言うタイプだったとは思わなかったから、自分で自分に驚いている。
今まで自ら何かを強く希望するなんて、そんな事なかったのに。
「それとも、彼女がそう変えたのかな」
俺の営業サポートになった桜井は、俺のために献身的に仕事をしてくれた。
時間のかかる仕事や、細かくて何度もやり直しが必要な根気のいる仕事をお願いしたり、時にはかなり無茶な要望もしてしまったと思う。
桜井はこんな感じのデータができるだけたくさん欲しいという俺の要望に応え、俺が納得するまで資料を作成し直して、その結果いつも俺が想定していた以上の事をしてくれる。
そんな彼女のために、成果を残したいと思い前向きに仕事に取り組むことができた。
俺の営業成績がトップなのは自分の力じゃない。桜井がいてくれたからだ。
「結果が出るのを楽しみにしているよ。彼女とならこれからもいいパートナーでいられると思う」
社長が楽しそうに微笑む。
「あ、仕事の方でも、ね」
も、ってなんですか、社長。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【あとがき&本編に出てこなかったちょっとした裏話】
最後までお付き合いくださり感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
最終的に「結婚を承諾せざるを得ない状況を作る事」に成功した成瀬君ですが、金曜残業の時点では送り狼になるつもりは全くありませんでした。
本当に桜井を送ったら会社へ戻るつもりで、翌日家に帰った時にデートに誘おうと考えていたのです。
なので帰る時の大雨は成瀬君にとって、まさかの出来事でした。そのため、「ゴム」が無く彼は激しく後悔します。
雨が降らなかったら、もっとのんびりペースでお付き合いするふたりになっていたのかも。
ちなみにヒロインが嫌がった口へのキスですが、お風呂でのぼせていた時に口移しで水を飲ませるため、ヒロインが寝ている間に成瀬君は何度もしていました。これは人命救助、と自分に言い訳しながら。
感想欄でご質問いただいたふたりの名前について、桜井の下の名前は『成美(なるみ)』ちゃんです。自分の名字と被るので、成瀬君は『桜井』と名字呼びするのが気に入っています。いずれは自分だけが使う愛称で呼びたいと考えているようです。
本編で『俺が桜井になってもいい』と言っていたのは、『なるせなるみ』になるのが桜井は嫌かもしれないと、チラリと考えたからかもしれません。
成瀬君の名前は、読者様のイメージと異なるかもしれないため今回は非公開とさせていただきます。
イメージが異なってもいいから名前を知りたいという方がいらっしゃいましたら、作者の拙作『【R18】大学卒業祝いに俺の童貞をもらってほしい!?~年下の幼馴染からお願いされた件~』に登場する男の子と一文字違いの名前(最後が「実(み)」)になりますのでご確認いただければ幸いです。
こちらの他にもいくつか小説を投稿していますので、もしよかったら作者名「弓はあと」で検索してみてください。
お時間がありましたら閲覧していただけると嬉しいです。
今後もどうぞよろしくお願いいたします♪
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再びの感想、本当にありがとうございます!
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いつでも諸手を挙げて大歓迎ですが慌ただしい年の暮れ、ご無理のない範囲でお越しいただければと思います♪