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承
しおりを挟む――本当に舐めるんですか、お嬢様?
バクンバクンと心臓の音がうるさい。
白とピンクを基調としたお嬢様のベッドの上で、仰向けになっている俺。
まさかまた、お嬢様のベッドを使う日がくるとは。
お嬢様のベッドで横になったのなんて、小学生の時以来だ。
5歳の時に両親を事故で亡くし、身寄りのなかった俺は父の友人だった天王寺社長に引き取られた。
ちょうどその頃、天王寺社長も奥様を病気で亡くされた時期だったと聞いている。
俺が引き取られてすぐの頃は、母親を亡くした悲しさからかお嬢様はわがまま放題で。
人前で泣くことが無かった代わりに、横暴な態度がすごかった。
巻き込まれたくないので、俺はお嬢様に近づかないようにしていたくらい。
でもある日、夜中にトイレに起きた俺が、おねしょをして廊下で困り果てていたお嬢様に声をかけた事がきっかけで。
お嬢様は急に可愛い一面を俺に見せるようになった。
夜になるとお嬢様に手をひかれて、お嬢様のベッドで一緒に眠っていたあの頃。
昼間、皆の前では泣くことが無かったけれど、夜は寂しくなるのかお嬢様はこっそり泣いていた。
お嬢様が泣いている時は俺が慰めて。
たまに俺が泣いている時はお嬢様が慰めてくれた。
ちなみに俺が好きなお嬢様の仕草、一位と二位はこの頃からずっと変わらない。
二位は寝起きに目を擦りながら「かいり、おはよ……」と言う姿。
一位は夜中に寝惚けて俺の胸に顔をスリスリしてくるお嬢様。
もうそんな仕草は、この十年くらい見てないけれど。
いつの頃からかお嬢様と一緒のベッドにいると脚の付け根がムズムズしてくる事に気づき、少しずつ少しずつ距離を置くようになったから。
それなのに今、二十歳の俺はお嬢様のベッドに横たわっていて。
シャツのボタンを、ひとつ、またひとつ、とお嬢様に外されている。
ヤバい、脚の付け根がムズムズしそう……
お嬢様の方を見ることができなくて、顔を横に向けた。
さっきまでお嬢様が手にしていたバイブと謎の液体が入った瓶が、ベッドの上に転がっている。
「っ!」
胸を擽られたような気がして、慌てて自分の胸を見た。
背中まで伸びたお嬢様の黒髪が、シャツのはだけた俺の胸にサラリとかかっている。
お嬢様の舌が、黒髪の隙間から見えた――。
ちろ、とほんの少し乳首を舐められただけなのに、ビクッと身体が大きく揺れてしまう。
そのままペロ、ペロ、とお嬢様の舌が、俺の乳首に、触れて。
ぁ……勃っちゃったよ…………
別に乳首を舐められても、くすぐったいだけでそんなに気持ちよくないけど。
お嬢様が俺のを舐めている、という姿が、なんというか凄い、クる。
しばらく俺の乳首を舐めていたお嬢様は、満足のいく濡れ具合いになったのか今度はジーッと乳首を見つめているようだった。
髪の毛に隠れて目は見えないけど、顔が動かないからたぶん見ているんだと思う。
そんなに近くでじっくり見られると、ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。
俺の胸に触れているお嬢様の前髪をスッと掬い、おでこが見えるように少し持ち上げてみる。
それに気づいたお嬢様が、上目遣いで俺を見つめてくるから。
ズキュン、と音を立てて心臓を射抜かれたかと思った。
上目遣いは俺の好きなお嬢様の仕草、第三位。
しかも大きな黒縁のついたレンズ越しじゃなくて、メガネが少しずれて直接目が合う上目遣いは、レア中のレア。
乳首を舐められるという行為に耐えた俺に、ご褒美だろうか。
神様、お嬢様、ありがとうございます。
「戒理……もひとつお願いしても、いい?」
上目遣いで首をコテンと傾げるのは、反則です、お嬢様。
合わせ技一本で俺の負けに決まってるじゃないですか。
「俺は……何をすればいいのでしょう?」
「口での奉仕について、知りたいの。見せてくれる、戒理?」
ん?
クチデノホウシ……?
口で、の、奉仕!?
「え、え、え、口での奉仕って、お嬢様が俺のをフェラするんですか!?」
見せるけど、それなら俺、喜んで見せるけど
ズボンの中パンパンでもう臨戦態勢の、コレ
俺が前髪を押さえてあげているからお嬢様の顔がよく見えた。
おでこまで、真っ赤。
可愛い。
バイブ持ってても恥じらう様子の無かったお嬢様が、照れてる。
この照れた表情、これから俺のをフェラすること、想像したから……?
「や、やだっ、違うわよ。戒理がバイブを舐めたり咥えたりするところを見せてほしいの」
なんだ、違うのかっっ
って、バイブにフェラする俺……?
想像するだけで、シュールな絵面だな、おい。
絶対に、やりたくない。
「ダメ?」
うーん……
どうしたら、諦めてくれるかなぁ……
「お嬢様が下着脱いで、股の所でバイブ持ってくれるならいいですよ。それならお嬢様もされる側の目線で見られるし、いいんじゃないですか」
前髪を掬っておでこが見えるくらい持ち上げていたから、お嬢様が驚いたように目を見開いているのがよくわかった。
やば、諦めさせるにしてもこの発言はさすがにセクハラ過ぎたか。
嫌われた……かな。
お嬢様に嫌われるかもと考えたからか、腹の底がヒュッと寒くなった気がする。
そんな俺に向けられたお嬢様の返事は、予想外に斜め上からのものだった。
「なるほどね、戒理。いい考えだと思うわ」
――え、お嬢様はそれでいいの?
いや冷静に考えて、ダメだろ――
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