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7 花が舞う
しおりを挟むリシャードの長い指が、乳白色の柔らかい花びらを摘まみ上げると、フルーラの胸の薄桃色の先端があらわになった。
「――花もきれいだけど、ときどき君を隠してしまうのは困るな」
何も身にまとっていないフルーラは、恥ずかしそうに身じろぎする。
寝台の上には綾なす模様のように花々が散らばり、そこに横たわっているフルーラの裸身は、夜に咲くという優美な花のように、薄暗がりの中で白い輝きを放っていた。
「リシャード……もう、胸はいや……」
か細い声でフルーラが請う。薄桃色のそこは、リシャードによってすっかり尖らされていた。
「本当に?」
リシャードは膨らみを優しく掴むと、確信ありげにその先端をぺろりと舐める。
「あ、っん」
弾けるように、蜂蜜色の丸い花がいくつも現れた。
「こんなに可愛らしい花がたくさん降ってくるのに?」
フルーラは涙目で唇を噛む。
花のせいで、自分でも知らなかった快い場所や触れ方を、息をつく暇もなくリシャードに見つけられてしまう。
「こ、これ以上されたら、どうにかなっちゃいそうだから……」
「なればいい」
リシャードは深いくちづけをするときのように、片方の先端を唇で包み込んで舌でなぞり、もう一方は指先で転がした。
「いっ、いやって言っ……あっ、あ、やあっ」
リシャードは開けたシャツからのぞく胸板を汗ばませ、花々に導かれるようにフルーラの滑らかな肌のそこかしこに唇を這わせていく。
「――ここも好き?」
「……っ」
フルーラは必死で声を押し殺すが、膝頭にくちづけられながらその裏の皮膚が薄いところをくすぐられると、小さな青い花たちが嬉しそうに舞ってしまう。
「我慢してても分かるんだから、思い切り声を出せばいいのに」
そう言いながら、リシャードは掴んでいたフルーラの膝をそっと割り開いた。
「やぁ……!?」
橙色の細かい花が散り、どこかほっとしたようなリシャードの声が上がる。
「――ああ、朝露が降りた花みたいだ」
「見ないでっ」
「薄暗いし、そんなにはっきりとは見えないよ」
閉じようとするフルーラの脚の間に、リシャードは身体を割り込ませた。
「あっ……」
露をこぼす場所にリシャードの指先が触れると、フルーラはびくっと身体を揺らした。
ふっくらとした花弁の薄紅色の花たちがくるくると降ってくる。
「いやあ……っ」
羞恥に染まったフルーラが身を硬くすると、「ルラ」とリシャードは優しく声を掛けた。
「思い出に残る夜なんだから、『いや』じゃなくて『好き』って言ってくれよ……」
フルーラの花芯のすぐそばでリシャードは囁く。
「大好きだよ、フルーラ」
「あ……」
『思い出に残る夜』――そう、今夜はリシャードと過ごすことができる最初で最後の夜。
二度とは持てない二人きりの時間を共にしているのだと改めて痛いほど感じたフルーラの瞳には、新しい涙が浮かんでくる。
「……リシャード」
閨で愛しい名前を呼べるのもこの一夜だけ。フルーラは膝の力を緩めた。
「大好き……」
それに応えるように、リシャードはフルーラの敏感な部分を舌でくすぐる。
「ああっ……、すき……好きっ」
フルーラは、自分が頭を乗せている枕の端をぎゅっと握った。
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