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しおりを挟む……やっとお出ましか。
そのフェロモンを発しているのはミーアではない。その様子は、今までの彼女からは到底考えられない程、酷く淫靡な光景だった。
突然変容した存在をはっきり視認しようと、もう一本蝋燭に火を付ける。
ミーアの姿形は保っているが、髪と瞳の色が淡い桃色に染まっている。涎だらけの口内に指を入れると、八重歯が尖っていた。さっきの接吻の時にはこんな風にはなっていなかったのに。口内に入った指をペロリと舐められ、すぐに引き抜いた。
このまま淫魔を手籠にして目的を果たしたい。一族をもっと強くするために、この魔族の血が欲しいのだ。今が絶好の機。精液に反応して本性を現したようだが。
自分からゆっくり近づいてきて、俺の唇に触れる。さっき無理矢理こじ開けた口が、今度は俺の閉ざした唇を開けようと、小さな舌で下唇を舐め上げる。
「……淫魔の分際で、この俺を誘惑するか。おい、なんとか言ったらどうなんだ」
そのままちゅ、ちゅ、と啄むようなキスをしてくる。翻弄されるのが癪で、後頭部の髪を掴むと、そのまま深く口づける。
俺のモノの上に座り、熱く熟れた陰部を密着させ入れないまま腰をゆらゆら動かし始めた。あ、あ、あと喘ぎながら硬い花芯や自分の気持ち良いところにあてているようだった。
生殺しのつもりか。
部屋中が、淫魔の濃いフェロモンで充満する。数十年前に、大きな争いのあと、すでに全滅したものと思っていたが。
どうしたものか、このままここで殺してしまった方が世のためなのだが。先ほど一方的にとはいえ体を繋がせていたミーアには違いなく、情も全くない訳ではない。殺意が鈍る。
目の前の、ミーアの姿で微笑みながら腰を揺らす淫魔を見つめる。
中に思い切りぶち込みたい衝動をなんとか耐えながら様子を見ていると、唐突に淫魔が口を開いた。
『……おぉ、おぉ、可哀想に。わらわの感度で、こんな強い刺激は辛かったろうに。こんな小さな体、身ひとつで全て受け止めて、よく今の今まで気を保てていた』
今までの誘うような動きは、ミーアの感度を探っていたらしい。
『しかも、お前人間のくせになかなか凶悪なものを持っておる。この白濁も濃厚でわらわ好みだ』
『気付いているだろうが、見た目は少女でも感度は淫魔のわらわ並に高められている。まぁ、この様子を見ると随分お楽しみだったようだが』
厭らしく微笑みながら、レギウスへ尋ねる。
『わらわの子が欲しいか、人間』
まるで嘲笑うかのように、目を細めながら核心をついてきた淫魔。
「あぁ、お前との子どもが欲しい」
取り繕う必要もないため、そう正直に答えると淫魔を布団の上へ押し倒した。
『正直な奴だな』
そう言って笑いながらも、淫魔の手はレギウスの広い背中へ回されている。
「魔人としての器をなくし意識だけになったとしても、この体を孕ませれば魔の耐性を持った子が生まれるだろう」
この状態ではロマンチックな言葉は皆無だ。レギウスは目的だけ単刀直入に伝えた。
『ああ、可能だろうな』
「さすれば、我が一族は更に強化できる」
『はは、ここを酒池肉林にでもするつもりか』
「性欲が旺盛なのは悪いことじゃない。子孫繁栄には大事なことだ」
『たわけが、淫魔の性欲をなめるな。性に耽って貪るようになり、働かなくなるぞ』
「それも良いな、モンスター狩りも飽きてきたところだ」
『はっ、面白い男だ』
♯♯♯
その頃、ミーアは深層意識の暗い海のようなところで、紫色のモヤに遭遇していた。
紫色のモヤの正体は淫魔なのだが、ミーアが知る由もない。
ミーアの体を奪って自分の体を実体化させたい淫魔は、ミーアの深層意識に侵食し体を乗っ取ることが目的だった。
目的を果たそうと紫色のモヤはミーアの体にまとわりついて、どんどん増長していく。
ミーアは、なんとなく自分の大事な何かを奪われそうな気がして、すかさずそのモヤに尋ねた。
『私の体が欲しいの?ごめんね、あげられないの』
どうして?と尋ねられた気がして、続けてモヤへ話し続けた。
『もう戻らないと。私、やらなきゃいけないことがあるから』
『え、あいつが好きなのかって?あいつは、お前のことただの道具とかして見てないって?』
おかしなことに、淫魔の声が聞こえる。さっきの行為からもそれは自分でも自覚している。
自分が追い詰められる様子を喜んでいるように思えた。あの獣のような目で見つめられると、恐怖で身が震える。
だけど、それでもあの人が自分を助けてくれた人には違いない。
『分かってる。でも、いいの、それでも。だって、命の恩人だから。私ができることはなんでもしたい』
『だから私の体、返して』
そのミーアの意志だけで、また淫魔を封じ込める。淫魔は、もう何世紀と生きてきたが、こうやって力を弱らせる度人間の中へ入って精気を貪り復活を遂げて来た。
人間の体など、自分を療養する仮住まい、体を休めるベッド位にしか思っていなかったのに。
この少女は違う。
今までの人間の体が乗っ取り自由な傀儡としたら、この少女はまるで強固な牢屋。
鍵を何重にもして自分を深いところに閉じ込める。なぜ、こんな平凡な少女のどこにそんな力があるというのだ。
淫魔は、またしばらく世に出られないことを悟り、ゆっくり意識を手放した。
少女にまとわりついていた紫色のモヤが晴れていく。
モヤの正体も分からないまま、ミーアはまた光を取り戻した。
ぼんやりしていた視界がだんだん明瞭化し、意識もはっきりしてくる。
……あぁ、そうだ、気を失ったんだ。
なんだか変な気分だ。頭がぼーっとする。
体は重い鉛がついたかのようにだるいのに、心地良い感覚に包まれている。
体は追い詰められて限界だというのに、彼が求めれば自分はまた、いや、だめ、と抵抗しつつもまたこの身を差し出すだろう。彼に求めてもらえること自体は嬉しいのだ。
中に出されたことを思い出して、彼をちゃんと満足させられることができたと、ちゃんとお役目を果たせたと心底ほっとした。
ちゃんと求めてくれている。自分も、だめだめ、言っていないで彼を喜ばせたいのに与えられる快感が壮絶過ぎて慣れない体が全くついていかない。思わず逃げたくなってしまう。
もっと、ちゃんと彼に尽くしたいのに。
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