上 下
34 / 72

34.親スノーベアーの怪我の確認

しおりを挟む
 チラッとお腹のキズを見る。詳しく見ないとなんとも言えないけど、でも今見えている感じだと、やっぱりお母さんの薬と僕の回復魔法でどうにかできそうだな。
 お母さんの薬は凄い効き目だから、持って行けって何本も持たされていたから良かった。

 次に僕は背中の方へ回ろうとする。だが、そんな僕の足に子スノーベアーはくっついたままで、抱っこちゃん人形みたいになっていて。その姿が可愛いし、くっ付いていたい気持ちも分かるんだけど、今だけは離れていてほしい。ここはみんなに頼もう。

「みんな、この子と一緒に、ちょっと向こうに行っててくれえるか? 僕はなるべく早くお父さんスノーベアーを治療するから。そうだな、後で治療が終わったら、クッキーをあげるから、その話しでもして待っていて」

『クッキー!! 分かった!! ほら、一緒に向こうに行こう!!』

『クッキー!! とっても素晴らしい物なんだぞ!!』

『くっき~、くっきぃ~♪』

『クッキー?』

『うん!! クッキー!!』

『クッキーのこと教えてやるぞ!! 話してる間にささっと治療は終わっちゃいはずだぞ!!』

『くっき~、くっきぃ~♪』

 クッキーに釣られて、子スノーベアーが俺僕から離れて、みんなとちょっと離れた木の方へ。うん、これで治療に専念できる。
 僕は軽くなった足を軽く振ってから背中の方へと回った。すると確かに子スノーベアーの言った通り、ちょっと太めの線のような傷が。

 だけど見た感じ、そこまで酷い物ではなく、これは僕の初級回復魔法で十分なものだった。みんなの言うことじゃないけれど、ささっと治るだろう。
 
 その後は、傷のある場所以外の背中部分を、ついでに全部診てしまうことに。傷については、肩も腰も問題なしと。それからお尻の方も問題ないし。うん、これは良い感じだな。後は痛みか。

「なぁ、背中やお尻、足の裏なんか、痛みはあるか?」

『……』

「おい、起きているだろう? 子供があんなに心配して怪我を治してくれと、会ったこともない、しかもどちらかといえば敵の僕に、必死にお前を助けて欲しいと訴えてきたんだぞ。このままだと本当に最悪なことになりかねない。……あの子を1人にするつもりか」

『……背中には痛みはない。が、足以外に腕に少々痛みがある』

「分かった!! しっかり診て、しっかり治療するから安心してくれ。見た感じお腹の怪我もしっかりと治せそうだからな」
 
 親スノーベアーが答えてくれた!! これで更に治療が捗るぞ!! 親スノーベアーが返事をしてくれた腕を見る。更に詳しく聞くと、左腕の中間位が痛いらしい。ちょうど左を上に倒れてくれていたから助かった。

 すぐに左腕を調べると、骨折はしておらず、こちらも僕の初級回復魔法で何とかなるだろう。

 それからついでに足を見ることに。足も左足で、足首に痛みがあるとのことで、そこを調べた。
 すると骨折はしていなかったが、捻挫にしては腫れが酷いなと。そこで回復魔法についている鑑定を使い調べれば、骨にヒビが入っている事が分かった。

 鑑定魔法には、物を鑑定する能力、その人物の情報や能力を調べる能力など色々あるんだけど。回復魔法を使う人には、治療に関する鑑定能力を、回復魔法を授かった時に一緒に授かっている。

 そしてその鑑定能力の力は、回復魔法の力が高ければ高いほど、詳しくその人の病状を知る事ができるんだ。僕は中級の回復魔法だから、病状もそこまで詳しくは鑑定できない。だけど骨折やヒビくらないならしっかりと鑑定する事ができる。

 だから足首にヒビが入っている事を確認できたんだ。しかもちょっとのヒビだったから、これも僕の回復魔法で治せるだろう。

「他に痛みは?」
 
『他は腹が痛いだけだ』

「そうか。じゃあお腹を確認したら、傷の具合によるけど、順番に治療を始めて。分かっているところの治療が終わったら、全体の確認をするからな」

『分かった。……すまない面倒をかけて』

「気にするな。ただ、治療をした後、攻撃しないでくれると助かる。僕は良いけど僕の家族には手を出さないで欲しい」

『そんな事をすると?』

「いや、一応言っておいただけだ。あの子スノーベアーは、人を恐れていなかった。お前がどんな教育をしているか知らないが、誰でも彼でも敵として教えているってわけじゃなさそうだからな」

『魔獣にも人のも、種族が同じだったとしても、色々だからな……くっ』

「話しは後にしよう。さぁ、次はお腹の怪我を」

 足のヒビを確認しながら少し話した後、僕はお腹を見ることに。

「水を傷にかける。少し滲みるけど我慢してくれ。血で傷がよく見えないんだ」

 水魔法で全体的に水をかける。親スノーベアーは少し体を動かしたが、我慢をしてくれて、その後は静かにしていてくれた。

 かなりの範囲怪我しているように見えたが、血にせいでそう見えただけらしい。それほど大きな傷ではなかった。そして傷の形は、背中の傷と同じような、太い線のような傷だ。

 違いはその傷の深さだ。背中は浅かったが、お腹の方の傷は5センチくらいの深さの傷で、そのせいでお腹は血だらけに。だが、これならば。俺は親スノーベアーに良い報告をする。

「この傷なら、ほとんど傷を目立たずに治す事ができるよ。良かったな!!」

『そうか……、そうか!!』

 親スノーベアーの顔がさっきまでは苦痛の表情だったけど、今は苦痛の表情の中に安堵の表情も。
 俺も内心ホッとしていた。チラッと見た時に、大丈夫だろうと思っていたけど、実は怪我が酷すぎて、やっぱり治療は無理だった、なんてことにならなくて。

 よし、そうだな。治ると分かっているのなら、先に酷い傷から治してしまうか。そうすれば残りの治療は、そこまで苦痛を感じないで済むはずだ。

「よし、じゃあ、治療を始めるぞ!!」



      *********

お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
『異世界でチート無双! いやいや神の使いのミスによる、僕の相棒もふもふの成長物語』
皆様の応援で3位でファンタジーカップをスタートすることができました。
皆様、本当に、本当にありがとうございます!!
これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。

お知らせです。
第4回次世代ファンタジーカップ、2作品目
『もふつよ魔獣さん達といっぱい遊んで事件解決!! ~ぼくのお家は魔獣園!!~』を
今日の18:00より連載いたします。

こちら動物園ならぬ魔獣園での、
3歳児ちびっ子と、もふもふ、かっこいい魔獣達との、
わちゃわちゃ、ワクワク、ハラハラで楽しい毎日と、魔獣園で起こる事件も解決?
な、物語になっております。

是非ことらの作品もよろしくお願いいたします。
こちらの作品、今日は10話更新予定です。

どうぞどちらの作品もよろしくお願いしたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

水の中でも何処でももふもふ!! あたらしい世界はもふもふで溢れていました

ありぽん
ファンタジー
転生先は海の中? まさか!? 水の中でももふもふを堪能できるなんて!! 高橋碧(たかはしあおい)は、小説の設定で時々みる、ある状況に自分が直面することに。 何と神様の手違いで死んでしまったのだった。 神様のお詫びとして新しい世界へ送られ、新しい生活を送ることになった碧。しかし新しい世界へと転生すれば、またもや神様のせいでまずい状況に? でも最悪な始まりをむかえた碧を、たくさんのもふもふ達がいやしてくれ。 もふもふパラダイスのこの世界で碧は、まったり? ゆっくり? もふもふを堪能できるのか。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

処理中です...