上 下
26 / 72

26.無事に契約した後は、子ムーンラビットの名前を考えよう

しおりを挟む
「う~ん」

『きゅう……』

 今僕と子ムーンラビットはソファーの上で向かい合って座りながら、あることを考えている。それは子ムーンラビットの名前だ。

 色々考えておこうなんて2人で言っていたけど、結局2人共、良い名前を考えていなくて今悩む羽目に。だから学校が休みの今日、しっかりと考えちゃおうってことで、今2人で悩んでいるところだよ。

 でも子ムーンラビットの名前が決まったからと言って、ゆっくりは出来ない。何故なら後から契約したお父さんムーンラビット達の名前も考えないといけないから。

「なにがいい?」

『きゅう……、きゅ』

 ママによると、難しいって言っているらしい。

「まだ考えてるのか? なんかその辺にヒントとかあるだろう。例えば畑に生えている花の名前をつけるとか、草の名前をつけるとか」

 パパ、少し静かにしてて。というか何で草? 花ならかわいい名前の花があるから分かるけど、草? 

 ちなみに畑に生えている草で、1番たくさん生えている草の名前は、その名も雑草だ。地球にも雑草って言葉はあるけれど、こっちの雑草はれっきとした名前で。どこにで、どんな環境でも、背丈バラバラに生えてくる草だから、雑草と名付けられたらしい。

 そんな草の名前を、かわいい子ムーンラビットに付けられるわけがない。あ、そうそう、子ムーンラビットはかっこいい名前でも可愛い名前でも、どっちでも良いって。だからその辺は自由の考えられるから楽だ。

 横からのパパの言葉を無視して、さらに名前を考える僕達。ムーちゃん、ムンちゃん、ラビなど、ムーンラビットからいくつか名前を考えたんだけど、どうにも2人共しっくりこなくて。

 何か良いものはないかな? そう思いながら僕は子ムーンラビットを見る。そこで目に入ったのが、子ムーンラビットの三日月型の怪我の痕だ。今では子ムーンラビットのチャームポイントになっていて、子ムーンラビットが気に入っている傷痕。

 う~ん、三日月か。三日月ってそのまま名前にするのはなぁ。なんか違う気がするし。そういえば三日月は英語でなんて言ったっけ? 確かえ~と、クレ、クレ、クレセントムーンだったか? 

 クレセントムーンから名前を取るのはどうだろう。クレじゃなくて、セントでもなくて、セレン!! ちょっと順番は変わっちゃうけど、セレンなんてどうだ!! 子ムーンラビットは三日月大好きだから良いと思うんだけどな。

「セレン! セレンはどう?」

『きゅ?』

「あのねセレンは……」

 俺は三日月の説明をする。するとどんどん表情が明るくなってきた子ムーンラビット。説明が終われば、飛び跳ねて喜ぶまでに。ママによれば、自分の大好きな三日月が名前になるなんてと、かなり気に入ってくれたようだ。

「良くそんな言葉知ってたな? どこでそんな言葉知ったんだ?」

「あ、うん、えと、図書館で読んだの、どっかの国の言葉だって」

 危ない、危ない、まさか地球の言葉だなんて言えないもんな。図書館に通ってて良かった。

「どうかな?」

『きゅうぅぅぅ!!』

「気に入ったって、その名前が良いと言っているわよ」

 ついに子ムーンラビットの名前が決まった。今日から子ムーンラビットの名前はセレンだ!!

「セレン!! なまえははセレンでけってい!!」

『きゅうぅぅぅ!!』

 と、2人で喜んだ時だった。魔獣契約をした時みたいに、僕と子ムーンラビットの体を白い光が包んだんだ。ただ契約の時ほど強く光ったわけじゃなくて、弱く光って、しかもすぐに消えて。

「なんでひかった? けいやくしてないのに」

『なんでひかったのかなぁ?』

「ね、なんだったんだろう? まっ、いっか。それよりもなまえきまってよかったね」

『うん!! とってもすてきななまえ、ありがとう!!』

「ぼくがかんがえらなまえ、きにいってくれてありがとう!!」

「……ねぇ、アーベル? これ、どうなるか分からないから、ママお話ししていなかったのだけど。あなた今、セレンとお話ししていなかった? 完璧に会話ができていたのだけど」

 え? ママ、何を言っているの?

「いま、はなした?」

『おはなしした?』

 その瞬間、バッ!! とお互いを見る僕とセレン。え? え? 確かにしっかりと言葉が分かった? 今まで『きゅう』って鳴き声だったのに!! 今の可愛い声はセレンの声!?

「いま、セレン。おはなしした? っていった? ええと、ぼくのことばわかる?」

『いま、アーベル、おはなしした? ってきいた? ぼくのことばわかる? っていった?』

「……」

『……』

「セレンッ!!」

『アーベルッ!!』

 僕とセレンは抱き合います。何で? 何で急に言葉が分かるようになったの!? 理由を知りたかったけど、今は嬉しすぎて。やっとママの話しを聞いたのは、だいぶ経ってからだったよ。

 それでママによると、魔獣契約した人達によって、それぞれ違うんだけど。契約する事で契約した者同士、言葉が分かるようになることが。
 しっかりとした、こうすれば分かるようになるっていうのは、まだ解明されていないんだけど。どうもそれにはお互いの絆が関係しているらしくて。

 でもちょっとやそこらの絆じゃダメなんだよ。本当に硬い絆で結ばれた物同士が、話せるようになるみたいで。その喋れるレベルも違うんだ。
 少し分かるようになるだけ、半分くらい分かる、ほとんど分かる、完全に分かる。という感じで、それぞれ違うんだよ。ぜんぜん分からない人達もいるみたい。

 だからママはこの話しをして、僕達が話せるって喜んで、結局話せなくて悲しむといけないって。僕達にこの事を話していませんでした。

「もしかしたら、名前をつけた事で更に絆が深まって、話せるようになったのかもしれないわね。それにしても完全に話せるようになるなんて。あなた達は最高の家族ね」

 まさか、話しもできるようになるなんて。これで更に色々なことができるようになっやんじゃ。僕はしっかりとセレンを抱きしめます。セレンもしっかりと抱きついてきて。

 これからどんな未来が待っているのか、それは流石に分からないけど。でもきっと僕とセレンなら、どんな困難だって2人で乗り越えていけるはず。
 辛いこと、苦しいこと、でもそれ以上の楽しくて嬉しくて幸せなことが、いっぱい待っているはず。

『ねぇ、アーベル』

「ん? どうしたの?」

『これからいっぱい、いろいろなことしよ。きっとたのしいこといっぱい!!』

「うん!! そうだね!!」

 セレンも同じ気持ちだったみたい。

『あしたははたけであそぶ!! まずそれから!!』

「うん!!」

 さぁ、明日から新しい生活の始まりだ!!

 
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ
ファンタジー
夢を見て、実益を求めて冒険者になる者は多い。 その中で成功している、強者として名を馳せる特級の冒険者はひと握り。 男は、優雅な佇まいで冒険者だと自称するがその振る舞いは只者ではない。 その力、余裕のある態度。全てを見通すかのような老成の男。 見た目は穏やかであるただの冒険者の優雅な生活?!そうは呼び辛い日々。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

処理中です...