ライトノベルの悪役魔獣使いだった俺、現代に転生し新テイム能力で今の世界を突き進む

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38話 出来事とに反して「おえぇ」の練習?

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 俺は急いでシャドウギルドのメンバーから離れると、人があまり来ない場所へと向かった。最悪な事があったからな。最後は人がいたとしても、2、3人くらいしかいない場所で、ゆっくりさせてあげたかったんだ。

 まぁ、そこにいる奴らも、あの厚化粧女のような奴だった場合は、アーチー達をポケットから出さずに、また別の場所へ急いで移動するが……。

 そう思いながら、10分ほどで予定していた場所へ着いた俺。心配していたような事は何もなかった。人は誰1人おらず、魔獣も1匹もいなかったんだ。

「よし、出てきて大丈夫だぞ。誰もいないから、好きな事ができる」

 俺が声をかければ、すぐにポケットから顔だけ出してきたアーチーとフェリックス。そうして周りを確認してホッとため息を吐くと、今度こそポケットから出てきて地面に降りた。

「2人とも、触られていないから、怪我はしていないと思うが、他は大丈夫か? 怖いとか、気分が悪いとか、今日はもうこのダンジョンから出たいとか、何かあるか?」

『オレは大丈夫っチュ!! フェリックスは大丈夫だっチュか?』

『うん、ぴっ! げんきっぴっ!!』

「そうか。はぁ、悪かったな、すぐにあの場所から移動できなくて。あの女の接近を許してしまって」

『カズキ、悪くないっチュ。ササッ!! とした動きで、守ってくれたっチュ!! あの人間の女が悪いっチュよ。他の人もあの女のこと怒ってたっチュ。声、聞いてたっチュ』

『みんなおこってたっぴっねぇ。あのにんげんだけ、おかしいっぴ。……おかしい? おにいちゃん、ぼくあってるっぴ?』

『あってるっチュよ。あの女だけおかしかったっチュ。それに、カズキ、オレ別に怖くなかったっチュ』

『ぼくもっぴっ!!』

『怖いよりも気持ち悪かったっチュ。話し方とか、動きがクネクネしてて、おえぇって感じだったっチュ。おえぇっチュ』

『おえぇっぴっ』

『でも、今はもう側にいないから、おえぇもなくて元気っチュ。新しい果物食べれば、もっと元気っチュ!!』

『ぼくもっぴっ!!』

「そうか。……次も同じように団体が近くに来た時は、すぐに避けられるよう気をつける。お前達がおえぇってならないようにな」

『うん、それが良いっチュね!』

『おえぇっぴっ!』

『もう少し、こう羽を伸ばして、首を伸ばしておえぇの方が良いっチュよ』

『こうっぴっ?』

『ちょっと違うっチュ。後で教えてあげるっチュ。人間以外にも気持ち悪い魔獣や物があるかもしれないっチュからね。その時にしっかりおえぇってする練習っチュ』

『うん、ぴっ!!』

 怖がっておらず、怯えてもいなかったから安心した。うん、安心はしたが、おえぇの練習って何だ? そんな練習してどうするんだよ。2匹ともやる気満々だし。
 母さん達にそんな姿見られたら、俺が何を言われるか、そしてやられるか。可愛い2匹に、何教えてるのよ!! ってな。

 そうして最初の、おえぇの原因がいなくなって、果物を食べればもっと元気になる、から。おえぇの練習のために元気にならないと、と。理由が変わったアーチーとフェリックスは、新たな果物を発見すると、すぐにそれを食べ始め。俺もアーチー達の隣に座り、一緒に果物を食べ始める。

 今回はアーチーとフェリックスに、何もなくて本当に良かった。一応解決済みだが、叔父さんには報告しておいた方が良いだろう。
 はぁ、それにしても最悪だった。もっと周りを気にして、しっかりと対応できるようにならないと。

 俺1人の時は、誰に何を言われようと別に構わなかった。が、今は、守るべき大切な家族、アーチーとフェリックスがいるんだ。あんなに接近されて、しかも触られそうになるなんて。アーチー達を守ると言っておきながら、まったく本当に何をしているのか。

 これからはもっと、気を引き締めて行動しないと。それに急に近づいて来られた時のために、対応する力をもっとつけなければ。それにはアーチー達のおえぇの練習ではないが、俺も今まで以上に、しっかり訓練をしよう。

 そうすれば、もしかしたら対抗するよりも、すぐに逃げなければいけない、という状況になった場合も、逃げるためにその力を使えるだろう。

 ……それにしても、あれは何だったのか。あの厚化粧女。あいつに腕を掴まれた瞬間、ブワッと何かいやな感覚が、俺を襲ってきた。悪に満ち溢れ、ドス黒くネチネチしていて、体にまとわり付いてくるような何か。

 あれと似たような物を、俺は昔見た事があった。そう、あの前世で俺を殺した、あの聖女。俺は死ぬ直前、今日厚化粧女から感じた嫌な感覚を、あの聖女の周りに見ていたんだ。

 他の人間がどうだったのか、俺と同じ物を聖女に見ていたのか。今では確かめる事はできないが、記憶を思い出した時、あの聖女の体に確かに、ドス黒い物が包んでいたのを俺は見ていた。

 まさか、その聖女と同じ物を、厚化粧女から感じるとは。あれにはもう2度と関わらない方が良いだろう。いや、絶対に関わらない方が良い。

 次からダンジョンに入る時は、他に誰が入っているのか、入る予定なのかを確認し。シャドウギルドの名を見た場合は、その日のダンジョンを取りやめるか。変更ができるならば変更して、別のダンジョンへ行く事にしよう。

『カズキ、この果物、今日1番美味しいっチュ!!』

『うん、おいしいっぴっ!!』

「そうか、美味しいか!」

『これ、毎日食べられたら嬉しいっチュねぇ』

『カズキ、もってかえっていいっぴっ?』

「ああ、じゃあ沢山持って帰ろう。食べ終わったらみんなで採ろうな」

『いっぱい持ってかえるっチュ!!』

『うれしいっぴっ!!』

 元気な2匹にホッとする。しかし……、この果物。これなら……。
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