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57.ラピーが気づいた俺のある事

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『レイナママ!!』

『分かったよ!!』

『たぶん?』

 俺を置いてけぼりで、話をまとめたシャイン達がレイナさんを呼ぶ。何が分かって、でもたぶんなのか。しっかりとシャイン達の話しを聞かないと。

「みんなどうしたの? 私達は今、これからの話しをしているから、もう少し待っていてくれるかしら」

 シャイン達に呼ばれたレイナさんはそう言って、すぐにクランシーさんとカシミールさんと、話しを再開しようとした。それはそうだ。現在進行形で、あのおかしなオークジェネラルが、俺達を追いかけているんだから。

 急に、『分かった』や『たぶん?』って言われても、何のことかわからず。それよりもこれからどうするか決めないとって、待っててって言うよな。

『レイナママ聞いて! あいつが追いかけて来ているの、どうしてか分かったかもしれないの!』

『そうだぞ! とっても大事な事なんだぞ!!』

『たぶん?』

 みんながどうにか、レイナさんに伝えようとしてくれているのは分かる。分かるんだけど、どうにもラピーの『たぶん?』のせいで、レイナさん達に本気にされていないような? 

『もう、ラピーがたぶんって言うから、本気にしてもらえないんじゃないの?』

『そうだぞ。これは大切な事なんだから、しっかり聞いてもらわなくちゃだぞ!』

『それに、これに気づいてくれたのはラピーだんだから。せっかく気づいた事を、聞いてもらえないんじゃ、しょうがないじゃん」

 ラピーの『たぶん』が余計って思っていたのは、俺だけじゃなかったみたいで、シャイン達がラピーを注意した。そうそう、ラピーが何かを気づいてくれたんだから、しっかり聞いてもらわないと。

『そか』

『そうだよ。お願いレイナママ、僕達のお話し聞いて。大切な事なの』

『とっても大切な事なんだぞ。ラピーが気づいた大切な事!』

『ぼく、気づいた。うんうん、ぼくが気づいた』

 ラピーが何回も頷く。それからシャインとフラフィーが、何回もお願いして。3匹共とても真剣な顔をしていた。

 そしてそんな真剣な3匹に、レイナさんはほんの少しだけ黙った後、クランシーさんの方を振り向いて、言ってくれたんだ。

「今の皆の姿。本当に大切な話しがあるようです。時間があまりありませんが、3匹の話しを聞いてもよろしいでしょうか?」
 
 ってね。今のこのメンバーの中じゃ、クランシーさんが1番偉くて、指揮をとっているからな。ちゃんとクランシーさんには許可を取らないとって感じだろうか。
 そして自分達の事をお願いしてくれてレイナさんに、シャイン達も頷き合って。俺のお腹の上で1列に並ぶと、クランシーさんに話しを聞いてって、お願いをした。

「そんなの頼まなくとも話は聞く。今の3匹はいつもと違って真剣なのは分かっているからな。いつもミルバーンを相手にしている時とはまったく違うのだから。それで、何が分かったと?」

 真剣か真剣じゃないか。その判断が、シャイン達がミルバーンの相手をしている時の姿、っていうのもどうなんだ? と思いながらも。クランシーさんがみんなの話しを聞いてくれて良かったよ。

 そして話始めるシャイン達。ラピーが話すと、また余計な事を言って揉めるといけないって。それからシャインの場合は、フラフィーよりも音で、相手に伝えることが多いってことで。代表してフラフィーが話すことになった。

 まぁ、ミルクの時のミルバーンへの説明が、みんなほとんど音でだったもんな。ラピーは別として。俺としてはシャインもフラフィーも、あんまり変わらない気もしたけれど。ここはフラフィーに任せようと、俺も何も言わなかった。

 そしてそんなフラフィーだけど、フラフィーはその後、しっかりと説明してくれたんだ。

 それはフラフィー達3匹も、関係していることだった。いや、もちろんあのオークジェネラル達とフラフィー達が、関係あるわけじゃないんだけど。理由が関係あるっていうか。そしてもしかしたら、他にも関係している人達がいるかもしれないらしくて。

 俺とフラフィー達が出会った時、フラフィー達は俺に何かを感じで、それでずっと一緒に居たい、家族になりたいって思ってくれただろう? そしてそれをアイラさんは運命だって。でもその運命とは別に、フラフィー達は、俺のある物を感じていたんだ。

 それがさっき、僕達は温かいぽかぽかが大好き、とっても幸せな気持ちのなる、とラピーが話していたことで。そしてもしかしたら、このポカポカで幸せな気持ちになる物を、あのおかしなオークジェネラルは、狙っているんじゃないかって言うんだよ。

 ポカポカ、幸せになる? 俺は初めて聞く話しで。それはレイナさんも同じだったらしく、すぐに聞き返したレイナさん。

「ポカポカと幸せって、どういう事なの?」

『えとね、たぶんティニーからは、僕達が会う前から、ポカポカが溢れていたんだよ。だってティニーを見つけた時には、溢れていたから。太陽のポカポカみたいに、とっても気持ちが良いポカポカだよ』

『お昼寝の時のポカポカと一緒』

『昼寝のポカポカ、大事だもんな』

『ちょっと2人共、喋らないでよ。話しが止まっちゃうでしょ!』

 慌てて口を押さえるシャイン達。もう! と怒りながら話しを続けるフラフィー。危うくお昼寝の話しに変わるところだった。

『それで、そのポカポカは特別なポカポカで。僕達はそのポカポカを感じると、とっても幸せな気持ちになるんだよ。それからなんか力が湧く感じがするの。そんなポカポカが、ティニーから、ずっと溢れてるんだ』

「ポカポカ……、溢れる……。それは今もティニーから溢れているの?」

『うん、今も! えっとねぇ、寝てる時もだよ』

「寝ている時も? ずっと止まらずに?」

『そういえば止まったことないかも』

「止まらないポカポカする物……。一体何かしら?」

『それでねそのポカポカなんだけど。僕達だけがポカポカで、幸せに感じるんじゃないんだよ。僕達の他にもそれを感じられるみんながいるんだ』

「それはどんな人達なの?」

『エルフの里にいた魔獣達はほとんど全員? あっ、でも。力が弱い子達は、分かってなかったかも。それで時々、分かるみんなは、僕達の家の周りに集まって来て、ティニーから溢れたポカポカを浴びに来てたんだ。それで元気になったら、次の子達と交代』

「集まっていたって、確かにこの頃、家の周りに魔獣が多いと思っていたけれど」

『みんなが来るほど、ティニーのポカポカは大人気なんだよ。それでね、もしかしたらなんだけど。もしかしたら、あのおかしなオークジェネラルも、ティニーのポカポカに気づいて、ここまで来たのかも』

 気づいて? ん?
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