異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

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47.走るの大好きカウロウの

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 白いロウカウの走りに、最初はやっぱり驚いていた俺。景色を楽しむ余裕なんてなくて。だけど俺以外のちびっ子達は、大盛り上がりだった。それは避難しているとは思えないほどに。シャイン達まで一緒になって喜んでいたからな。

『いけいけ!!』

『もっと速く!!』

『飛ばされないなら安心だから、もっと速く』

 あ、うん、もっと速くなのね。でもこれ以上早く走ったら、完璧に景色が見えなくなるんじゃ? シャイン達を見ていてようやく落ち着いて来た俺。周りを眺めれば、木々が凄い勢いで僕達のは横を過ぎて行っている。

 たぶんこれ以上速く走れたら、何かの物体が目の前を通り過ぎたって。何が通り過ぎたか、まったく分からなくなると思うぞ?

『なぁなぁ、避難が終わっても、これに乗りたいぞ!』

『僕も!! こんなに楽しいのがあったんだね!』

『ぼくもこれなら良い』

「ばあう、あうぅ?」
 
『速すぎて、何かにぶつからないのか?』
 
『狭い場所だと、けっこう木を倒してるよね。それに大きな大きな石を割ったり』

『でも直してる』

 え? 直してる? 何を? 俺達の話しを聞いていたレイナさんが説明してくれた。カウロウとエルフは昔からの付き合いなんだけど。昔からカウロウは、その辺を走り回っては、色々な物にぶつかって倒したり、粉々に割ったりしていたらしい。木とか大きな岩や石をね。

 それであまりにもぶつかるのに、いつもケロッとしているから、心配になったエルフ達がカウロウを調べたんだよ。でもカウロウには、傷の1つも付いていなくて。魔獣と話ができたエルフ達はカウロウに、体のどこか、痛い場所はないかって。それも確認した。

 それに対してカウロウの答えは。『え? 何が?』だったらしい。それからも定期的にカウロウに平気かどうか聞いたけど、毎回答えは一緒で。だからよっぽど体が丈夫なんだ、ってことでまとまったらしい。

 それ以来、保護されて来たカウロウは、しっかりと体調を調べるけれど。普通に生活しているカウロウのことは、あまり気にしていないって。もちろん風邪とかで具合が悪い時なんかは、すぐの治療をしてあげるけど。

 ただ、何でもぶつかって進むカウロウ、わざわざぶつかる事はないからな。エルフの里の一部はカウロウが動きやすいように、余計な木が切ってあって。その切った木で、みんなの家を建てたり、必要な施設を建てたり。

 例えばこの避難通路な。この避難通路も、本来なら何もしなくてもカウロウは大丈夫だけど。一緒に避難している俺達が、結界を張っているからって。カウロウが木にぶつかったり岩にぶつかったりすれば、縦揺れ横揺れが発生して、そのせいで怪我をする可能性が。

 だから避難経路は綺麗に道を整備し、その周りを木で包みトンネルみたいにして、周りからバレないようにカモフラージュしてあるらしい。木々の間を通っていると思ったら木のトンネルだった。

 でも子供達が怖がらないように、そのトンネルに色々素掛けがしてあるらしく、みんなそれを楽しんでいるようで。カウロウはこれを楽しんでと言ったらしい。俺はまだ目が慣れていなくて分からないんだけど。

 それでカウロウのために切った木だけど、ほらエルフの里では全て、無駄にしないで使っているけど。
 自然で生きているカウロウは? 毎回毎回走って木を倒しているわけで。じゃあその木は? それにそれだけ木を倒していたら、森が禿げちゃうんじゃないかって思うだろう?
 
 それが違ったんだ。俺はそれを聞いて驚いた。倒した木を元通りに植え直すらしいんだ。走ることが大好きなカウロウ。この大きさだけど、速さはかなりのものだろう? だから見かけによらず、小回りも効くみたいで、木々が少ない場所なら問題なく走るらしい。

 じゃあ木々が多い場所で、木を倒したら? 後でまとめて魔法で植え直すんだ。ぶつかればもちろん枝は折れるし、大きく木を割ったり、途中から折ったりするんじゃなく、丸々1本綺麗に倒したり。

 そうして通った場所がしっかりと分かるほど、色々と破壊しながら走った後は。自分が倒した木をぜんぶまとめて魔法で持ち上げ、完璧に木を回復させると、元の場所に立たせ。
 さらに魔法を使って、その木の周りにしっかりと土をか伏せて。後はしっかりと踏み固めれば元通りの森に。植え直した木は、ちょっとやそっとじゃ倒れないって。岩や石は、後から何処からか運んでくるらしい。

 こうして自然のカウロウ達は走るのを楽しんでいるんだ。まさかの方法だったよ。木を植え直すって。確かにラピーの言った通り、『直してる』だった。

 ただその走っているカウロウに巻き込まれると、カウロウの速さで凄い風が発生して、精霊達や小さな魔獣達はみんな飛ばされちゃうんだよ。
 みんな分かっているかあんまり文句は言いたくなけど、走る時は大きな声で鳴いて知らせてくえるとか、木を揺らして教えてくれるとか、何かしてくれとは言っているみたいだ。

『ね、それさえしてくれれば、全く問題ないのにね』

『カウロウはみんなに怒られないし、俺達はこれで楽しめるし。楽しいばっかりになるのにな』

『今度また、みんなで注意しに行く』

 そんなカウロウの話しを聞き終わった時だった。あれだけ俺達の周りを、ビュンビュン流れて行っていた景色が、ゆっくりになってきて。どうしたのかと思ったら、もうすぐ避難場所へ着くらしい。
 流石にこの速さで急には止まれないようで、走り始める時は最初からこのスピードだったけど。止まる時は徐々にだった。

 よく見えるようになってきた周りを確認すると、確かみ木に囲まれていて、トンネルになっていた。そしてそのトンネルの木の壁にの所々に、木で作られた魔獣の人形が付いていて。
 そう、森の中を再現しているみたいになっていたんだ。もしかしたら他にも何か仕掛けがあるかもしれない。

 なるほど。これなら小さい子達は避難の時でも、少しは安心できるんじゃないかな。それにしても、さっきまでの速さで見えてるのは凄いな。

 更にスピードが落ちて、かなりゆっくりになってきた。そうしたらシャインがレイナさんの頭に乗り進行方向を見て。

『あ!! 扉が見えたぞ!!』

 ろ。どうやら避難場所へ着いたらしい。静かに白いカウロウが止まる。避難中何も起きなくて良かったよ。後からくるエルフ達も、何も問題が起きないと良いけど。

「さぁ、順番に降りるぞ」

 しっかりと止まると、すでに避難場所にいたエルフが俺達の周りに寄ってきた。
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