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第13話.始まる2匹の喧嘩(話し合い)

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「うに? いぃ」

 今のは、モコモコ? 小さいね、って言ったんだ。いや、本当に小さい。これじゃあ、いくら生まれたばかりの、今側に居てくれるモコモコや、他のモコモコと一緒に居たとしても、隠れちゃって気づかないな。

 母さんはそのままそっと手を動かして、モコモコをテーブルまで運んでくれる。そして小さなモコモコは、テーブルの匂いを嗅いだ後よちよちと、俺の側まで歩いてきてくれた。今の状態は、右に最初のモコモコ、左に小さなモコモコがいる感じだ。

 そうして今度は俺の匂いを嗅いだ後、あのしっぽ振りをしてくれて。それが終わればモコモコと同じ、俺に寄り添ってくれようとした。だけど、ここでストップがかかった。

 スロップをかけたのは、お店の人でも母さんでもない。最初のモコモコが、小さいモコモコにストップをかけたんだ。こう前足を上げて、ストップみたいにして。ぷぴっ!! と今までで1番強く鳴いてね。

 そうすると小さいモコモコは止まったんだけど。

『ぷぅ、ぷぷぷ、ぷぅ、ぷぅぅぅ』

 と何か文句を言っているようにブツブツ言い始める、小さいモコモコ。それに続いて最初のモコモコが、

『ぷぴ、ぷぴぴっ! ぷっぴぃ、ぷぴぃ!!』

 と何かを話し。これはどう考えても揉めている感じだ。何でこんなに揉めているんだ? 止めなくて大丈夫なのか?
 可愛いモコモコに囲まれて嬉しいけど、これ以上酷い喧嘩になって、もし取っ組み合いの喧嘩をしたら? 心配になって母さんとお店の人を見る。

 ところが2人とも、ただただモコモコ達のやり取りを見ていて。俺が声を出せば母さんは。

『もう少し静かにしていられるかしら。なるべ邪魔はしたくないのだけれど』

 そう言ったんだ。どういう事だと思っていたら、母さんとお店の人が話し始めて。どうもモコモコ達は何かを決めたり、揉めたりした時は、こうして話し合って、色々決めるらしい。自分達が納得するまでだ。その辺、しっかりとしている生き物らしい。

 ただ話し合いは、すぐに終わるようで。真剣に話し合いをしている割には、その話し合いが早く終わるため、本当に話し合いをしているのか? と議論になったこともあるようだ。
 
 でも、この話し合いを、邪魔した人達が何人か居るらしいんだけど、モコモコの話し合いを邪魔すると、モコモコ達は邪魔をするなと、その人達に魔法を放ったらしい。それもけっこうな勢いで。そのため話し合いが始まると、誰もその話し合いの邪魔はしなくなったらしい。

 けっこい物騒だな、モコモコ!! 邪魔をされると魔法を放つって。それを聞いた俺は、話し合いが終わるまで静かにしていることにした。攻撃されたくないからな。

『まぁ、まだ赤ちゃんだから、魔法は使えないけれどね。魔法が使えるようになるのは、2年くらい経ってからかしら』
 
『そうですね。ですが魔法の代わりに、蹴りや体当たりはしてきますからね』

 何だ、心配した。小さいモコモコは魔法が使えないらしい。と、いうか使えるようにのか。凄いな。

 と、凄いし、でも今の魔法の心配はなくなったけど、結局は蹴りや体当たりをされるのか。うん、やはり静かにしていよう。それと今2年って言葉が出たよね? この世界も日数ってどうなっているんだろう。地球と同じなら楽なんだけど。

 俺はそんなことを考えながら、モコモコ達の話し合いが終わるのを待つ。ぷぴぷぴ、ぷうぷう。様子を見ていたら、最初のモコモコの表情がどんどん酷くなっていき、小さいモコモコの表情は、どんどん怒っている表情へと変化して。

 あ~あ~、最初のモコモコ。あれ絶対おでこの所シワが寄ってるよ。いや、見えないけどさ、最初よりもモコモコのおでこの毛が、こう集まってる感じがするんだ、それでおでこの所、シワが寄っているように見える。

 そして口元は、笑っている時の口元を三角って表すと、今は逆三角になっていて、しかもその逆三角が、少し斜めっていて、ケッ!! って感じに見える。あんなに可愛い顔をしていて、最初はまったり顔だったのに。モコモコ、そんな顔もできるんだな。

 小さいモコモコは表情こそ、そこまで変わらなかったが。怒っている顔が、さらにその強さを増したっていうか。漫画とかで怒っているのを表現する時、こう顔の中心を暗く描くことがあると思うんだけど。

 小さなモコモコもそんな感じで、怒っている顔にドスが効いてきたっていうか。もし人間でこんな怒る人がいたとしたら、なるべくその人のことは怒らせないようにしよう、って考えるだろうくらい、小さいモコモコは怒っていた。

『ぷぴっ! ぷぴぴぃ!! ぷっぴぃ!!』

『ぷう!! ぷうぅ! ぷぷぷ! ぷぅぷぅ!!』

『なかなか終わらないわね』

『そうですね』

『モコモコ達の喧嘩は、こんなに長かったかしら』

『いえ、いつもだったらもう終わっていることなのですが』

『ぷぴ!! ぷぴぴ!! ぷっぴぃ!!』

『ぷう!! ぷぅぅぅ!! ぷっぷぅ!!』

 うん、モコモコ達の喧嘩……、じゃなかった、話し合いが始まってどれくらい経ったんだろう。俺もそろそろ静かにしているのがキツくなってきたんだが。何を話し合いしているか分からないけど、そろそろ話し合いは止めて、可愛いモコモコに戻ってくれないかな?

 でも、それからも続いた話し合い。が、ここで俺の我慢の限界が来てしまった。ここへ来る前、起きてからすぐにお尻を綺麗にしてもらったが、赤ちゃだからトイレを我慢できず。トイレが済めば、お尻の不快感で、俺は泣き出しそうに。

「ふぇっ、ふぇぇぇ」

『あら、おしっこかしら。そろそろ限界よね。動いても大丈夫かしら』

『どうでしょうか。手を出したシェリアーナ様が攻撃を受ける可能性が。しかしその前に』

『そうよね。グレンヴィルが攻撃を受ける可能性の方が高いわよね』

 不味いぞ! 俺のせいで母さんが攻撃を受ける可能性が!?
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