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最終話 3年後
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3年後
ドアに掲げられた看板を見る3人。
「とうとう来たかという感じですね」
「いよいよですね」
「感慨深いものがあります」
古川さんと蓮にこの話を持ちかけたのが5年前。
その5年の間に蓮が大学在学中に公認会計士の資格を得た。
そして話を持ちかけた張本人が落ちるわけにはいかず、いつ以来か?というくらいの猛勉強をし、翌年俺も無事公認会計士の資格を得た。
蓮は大学卒業後就職し、3年ほど監査法人で実績を積んだ。
俺は古川さんに紹介してもらった会計事務所を手伝い、会計士として学んでいた。
古川さんは独立を視野に入れて得意先をどこまで引き継げるか模索していた。
仕事に関してはそこまで大きなトラブルはなかったが、問題は誰が代表になるかだった。
俺は実績があるという点を重視して古川さんにお願いしたかったが、そうすると事務所の名称が税理事務所及び税理士事務所になる。
この名称だと税理のみの印象を受ける可能性があるためやや不利だ。
会計士は税理業務も行えるので会計士が設立した事務所は会計事務所及び会計士事務所を名乗れる。こちらの方が万能な印象になるのは確かだ。
古川さんは名称には拘らないというが、私と蓮はそこが引っかかりなかなか決められなかった。
三木さんになんとなくその話をしたら
「くだらない、名前なんてどうでもいいだろ?」と一蹴された。そしてこうも言われた。
「古川さんを見くびるなよ」と。
その意味はすぐ分かった。
何度かの話し合いの場で古川さんは
「この3人の中で公認会計士が二人いて税理業務も監査業務も会計士が出来るから、税理士だけの俺なんて…とかいうと思った?税理士は俺だけだよ。専門としては俺が一番特化してるからね」と言い切った。
その通りだ。
こういう時にスパッと言えるのが古川さんのいいところだ。
三木さんの言っていた意味が理解できた。
やはり代表は古川さんしかいないということでそう決まった。
もう一つの問題は会社名。
これは問題というほどでもなかった、案外あっさり決まった。
3人で案を持ち寄り、せーので見せ合った時に同じようなワードが重なっていた。
『三』『星』『光』『輝』
古川さんは
「3人とも『Starlight』で世話になっていたし、三木さんには頭上がらないんで」と言うと、蓮も
「俺も同じです。原点を忘れたくないです」と言う。
「俺も全く同じです」
思うところは同じだったので漢字を組み合わせて決めた。
『三つ星会計事務所』
「『つ』は要らなかったですかね?」
「いや、ひらがなが入ることで柔らかくなっていいと思います」
「そうですね」
設立して最初に挨拶に向かったのは勿論『Starlight』だった。
長谷見さん、由良さんが
「ご無沙汰しております」と歓迎してくれた。
中に通されるとオーナー美輝としての三木さんが待っていた。
名刺交換もそこそこに三木さんは
「来てもらって早々に悪いが、税理、会計全般で顧問契約を結びたい。頼めるか?」
「精一杯やらせていただきます!」と3人で
頭を下げる。
三木さんは笑いながら
「考案者、出汁茶漬け食ってけ。弓田さんが用意してくれてるぞ」と蓮の頭をくしゃくしゃ撫でる。
蓮がほんのり涙ぐんでる、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「もう泣かないって決めたんです、強くなります」とあの日俺と約束した。
君は強くなったよ。
それでも涙脆いから時々涙が落ちそうになるけど、たまにならいいじゃないか。
だって見てごらんよ、古川さんびしゃびしゃに泣いてるよ。
「揶揄わないでくださいよ~」と泣き笑いしてる古川さんを見て、蓮の目から涙がこぼれる。
「わっ!八雲さんいる!伊央も!なんでみんな泣いてんの?」と相変わらず賑やかなのは愛斗くんだ。
そうか俺も泣いてたのか。
こんな嬉し泣きなら大歓迎だ。
ドアに掲げられた看板を見る3人。
「とうとう来たかという感じですね」
「いよいよですね」
「感慨深いものがあります」
古川さんと蓮にこの話を持ちかけたのが5年前。
その5年の間に蓮が大学在学中に公認会計士の資格を得た。
そして話を持ちかけた張本人が落ちるわけにはいかず、いつ以来か?というくらいの猛勉強をし、翌年俺も無事公認会計士の資格を得た。
蓮は大学卒業後就職し、3年ほど監査法人で実績を積んだ。
俺は古川さんに紹介してもらった会計事務所を手伝い、会計士として学んでいた。
古川さんは独立を視野に入れて得意先をどこまで引き継げるか模索していた。
仕事に関してはそこまで大きなトラブルはなかったが、問題は誰が代表になるかだった。
俺は実績があるという点を重視して古川さんにお願いしたかったが、そうすると事務所の名称が税理事務所及び税理士事務所になる。
この名称だと税理のみの印象を受ける可能性があるためやや不利だ。
会計士は税理業務も行えるので会計士が設立した事務所は会計事務所及び会計士事務所を名乗れる。こちらの方が万能な印象になるのは確かだ。
古川さんは名称には拘らないというが、私と蓮はそこが引っかかりなかなか決められなかった。
三木さんになんとなくその話をしたら
「くだらない、名前なんてどうでもいいだろ?」と一蹴された。そしてこうも言われた。
「古川さんを見くびるなよ」と。
その意味はすぐ分かった。
何度かの話し合いの場で古川さんは
「この3人の中で公認会計士が二人いて税理業務も監査業務も会計士が出来るから、税理士だけの俺なんて…とかいうと思った?税理士は俺だけだよ。専門としては俺が一番特化してるからね」と言い切った。
その通りだ。
こういう時にスパッと言えるのが古川さんのいいところだ。
三木さんの言っていた意味が理解できた。
やはり代表は古川さんしかいないということでそう決まった。
もう一つの問題は会社名。
これは問題というほどでもなかった、案外あっさり決まった。
3人で案を持ち寄り、せーので見せ合った時に同じようなワードが重なっていた。
『三』『星』『光』『輝』
古川さんは
「3人とも『Starlight』で世話になっていたし、三木さんには頭上がらないんで」と言うと、蓮も
「俺も同じです。原点を忘れたくないです」と言う。
「俺も全く同じです」
思うところは同じだったので漢字を組み合わせて決めた。
『三つ星会計事務所』
「『つ』は要らなかったですかね?」
「いや、ひらがなが入ることで柔らかくなっていいと思います」
「そうですね」
設立して最初に挨拶に向かったのは勿論『Starlight』だった。
長谷見さん、由良さんが
「ご無沙汰しております」と歓迎してくれた。
中に通されるとオーナー美輝としての三木さんが待っていた。
名刺交換もそこそこに三木さんは
「来てもらって早々に悪いが、税理、会計全般で顧問契約を結びたい。頼めるか?」
「精一杯やらせていただきます!」と3人で
頭を下げる。
三木さんは笑いながら
「考案者、出汁茶漬け食ってけ。弓田さんが用意してくれてるぞ」と蓮の頭をくしゃくしゃ撫でる。
蓮がほんのり涙ぐんでる、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「もう泣かないって決めたんです、強くなります」とあの日俺と約束した。
君は強くなったよ。
それでも涙脆いから時々涙が落ちそうになるけど、たまにならいいじゃないか。
だって見てごらんよ、古川さんびしゃびしゃに泣いてるよ。
「揶揄わないでくださいよ~」と泣き笑いしてる古川さんを見て、蓮の目から涙がこぼれる。
「わっ!八雲さんいる!伊央も!なんでみんな泣いてんの?」と相変わらず賑やかなのは愛斗くんだ。
そうか俺も泣いてたのか。
こんな嬉し泣きなら大歓迎だ。
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