いきたがり

秋臣

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心ここに在らず

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「なにこれ!伊央が作ったの?本当に?食っていい?」
伊央くんから筑前煮と漬けを貰って帰り、冷蔵庫に入れておいたら三木さんに見つかり、これはなにかと聞かれたので伊央くんの家でご飯をご馳走になり、持たせてもらったと伝えた。
いそいそと筑前煮を温め、
「八雲さーん、出汁ってどうやって取るの?」と聞くが俺もわからない。
「嶋さん、出汁の取り方ってわかる?どうやるの?何が必要?」
三木さんは嶋さんがいないと生きていけないだろうなと思うことがよくある。このマンションのコンシェルジュだがほぼ三木さん専属と言っても過言ではないし、もしかしたらそうなのかもしれない。
しばらくすると嶋さんは出汁パックを手に現れ、
「本格的にやりたい所ですがお急ぎのようでしたので、少し簡単にさせていただきます」と言って出汁パックで出汁を取ってくれた。
ついでに器にご飯を盛り、漬けを乗せ、出汁をかける。出汁パックと一緒に持ってきた三つ葉とわさびを添え三木さんと俺に出してくれた。
温めた筑前煮も出してくれる。
「嶋さん、ありがとう。一緒に食べない?」
「私は結構ですので温かいうちにどうぞ」と戻っていった。

俺は伊央くんのところで食べてきたので、嶋さんが作ってくれた出汁茶漬けだけいただく。
「なにこれ!美味いな!」
筑前煮はさっき食べたので味は分かっていたが、漬けが美味い。
酒の後だと特に美味いだろうな。
「これ本当に伊央が作ったの?」
「はい。いつも世話になってる礼だと言って夕飯をご馳走してくれました。全部伊央くんの手作りです。刺身も自分で三枚に下ろしてました」
「やるねえ、あの顔でこんな料理スキルまで持ってんの?最強だな。
あ!いいこと思いついちゃった!
月1くらいでこれ店で出してみようかな」と出汁茶漬けを指差す。
「酒の後、こういう飯食いたくならない?」
「なりますね」
「でしょ?長谷見と由良に相談してみようかな。あと伊央にも聞いてみないと。レシピ教えてくれるかな」
三木さん、本気だな。
「で、なんでそんな顔してんの?八雲さん」
「え?」
「なに?気づいてないの?帰ってきてからずっと呆けてるし、心ここに在らずよ?」
そう言われて思い当たる原因を思い出し途端に顔が熱くなる。
「なになに?今度は顔真っ赤になってるし。なんなの?」
「いや…なんでもないです」
「ふーーん」
俺のネクタイを緩め、Yシャツの上から乳首をなぞる。
「口より体に聞いた方が早そうだね」と言って冷酒を煽り、俺にも口移しで飲ませた。
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