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施し
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「どうぞどうぞ、さあ入ってください」
なぜ俺は死にに来たのに知らない男のキャンピングカーに連れ込まれかけてるんだ?
状況が全く理解できない。
いや、待て。
なにを警戒する必要がある?
普通なら警戒するのは分かる、犯罪に巻き込まれるとか乱暴されるとか、最悪殺されるとかだからだろ?
今の俺には願ったり叶ったりじゃないか。
命を終えられるなら手段や方法なんてもはやどうでもいい。
それなら頭のおかしいこいつに殺されてもそういう運命と受け入れればいい。
そう思ったら妙に気が楽になり、俺はキャンピングカーに乗り込んだ。
単純に寒かったのだ。
さあ、殺すなら殺せ。
ただし強請ってもなにもないぞ、全て無くしてきたからな。
エンジンをかけ車を暖める。
次第にじんわりと体に血が巡るのを感じる。
生きてるってこういうことか、悪くないな。でももうそういうのはいい、終わらせる。
「はい、コーヒーどうぞ。インスタントですけど」
「いただく義理ないです」
「まあコーヒー1杯くらいいいじゃないですか。同じ自殺志願者よしみで」
相変わらずわけがわからない男だが、かじかんだ手は既にカップを包んでる。鼻も積極的に香りを楽しんでる。
「…いただきます」
「どーぞ」
コーヒーの苦味と淹れたての熱さが体中に染み渡る。
昨日から食べてないので、空きっ腹にも染みる。
俺はコーヒーを飲み終え、
「ごちそうさま、お邪魔しました」
とキャンピングカーを降りようとした。
「ちょっとちょっと待って!お腹空いてない?俺空いてんだけど」
「朝食食べればいいんじゃないですか?
山道降りればファミレスとかコンビニとかあると思いますよ」
「一緒に行きましょうよ」
「行かないです。もう自殺志願者のよしみはいいでしょ?一人になりたいんですよ」
ドアを開ける。
ピーーッ バタン!
ほえ?ドアが閉まる。
彼がリモコン片手にニヤッと笑う。
「なんなんですか?なにがしたいんだよ。なんで尽く邪魔するんだ」
努めて冷静に言ったつもりだが、もうそろそろ我慢の限界だ。
「だから飯行きましょうって言ってますけど?」
「行かないって俺も言ってます」
「そうですか…わかりました」
ガチャン
なんの音?
待て、動いてないか?
彼が運転席に座りキャンピングカーを運転している。
さっきの音はドアロックの音か。
「お前止めろ!」
「停めますよ、ファミレスかコンビニに着いたらね」
こいつ頭をおかしい。
話が全く通じねえ。
車に閉じ込められ、しばらくするとピーピーピーと車をバックさせ始めた。
なに?窓の外を見るとファミレスの看板が見えた。
「着きましたよ!飯食いに行きましょう」
「……」
「どうしました?」
「…れる…」
「え?」
「…漏れる…」
「漏れ?ああトイレね!キャンピングカーだから付いてますよ、あのドアです」と小さなドアを指差す。
先に言え!
小さなドアに飛び込むと、あははは~とでかい笑い声がドア越しに聞こえた。
「間に合いました?」
くそ、死ね。
いや、いい。今夜俺は死ぬからお前とは永久におさらばだ。
「じゃ飯食いに行きましょ」
「行かねえよ」
「え?ファミレス着きましたよ?」
「行くなんて言ってないし、俺は金持ってない」
六文銭は使うわけにはいかないのだ。
というか一文銭6枚なんて現代で使える店などないだろう。しかも火葬場ではお金は燃やせないから受け付けてもらえない。印刷した紙のお金だとおもちゃみたいだし味気ないから一文銭で用意したけど、素直に現代の慣習に従うべきだったかもしれない。
「死ぬの邪魔しちゃったお詫びに奢らせてください」
なんでそんな施しを受けなきゃならない!と俺の口が言う代わりに、腹がぐうぅぅぅぅ─といただきますを言っていた。
「あなたの体は正直すぎて面白い!さあ行きますよ!」
俺の腕を掴みズルズルと強引に引きずっていく。もうどうにでもなれ。
なぜ俺は死にに来たのに知らない男のキャンピングカーに連れ込まれかけてるんだ?
状況が全く理解できない。
いや、待て。
なにを警戒する必要がある?
普通なら警戒するのは分かる、犯罪に巻き込まれるとか乱暴されるとか、最悪殺されるとかだからだろ?
今の俺には願ったり叶ったりじゃないか。
命を終えられるなら手段や方法なんてもはやどうでもいい。
それなら頭のおかしいこいつに殺されてもそういう運命と受け入れればいい。
そう思ったら妙に気が楽になり、俺はキャンピングカーに乗り込んだ。
単純に寒かったのだ。
さあ、殺すなら殺せ。
ただし強請ってもなにもないぞ、全て無くしてきたからな。
エンジンをかけ車を暖める。
次第にじんわりと体に血が巡るのを感じる。
生きてるってこういうことか、悪くないな。でももうそういうのはいい、終わらせる。
「はい、コーヒーどうぞ。インスタントですけど」
「いただく義理ないです」
「まあコーヒー1杯くらいいいじゃないですか。同じ自殺志願者よしみで」
相変わらずわけがわからない男だが、かじかんだ手は既にカップを包んでる。鼻も積極的に香りを楽しんでる。
「…いただきます」
「どーぞ」
コーヒーの苦味と淹れたての熱さが体中に染み渡る。
昨日から食べてないので、空きっ腹にも染みる。
俺はコーヒーを飲み終え、
「ごちそうさま、お邪魔しました」
とキャンピングカーを降りようとした。
「ちょっとちょっと待って!お腹空いてない?俺空いてんだけど」
「朝食食べればいいんじゃないですか?
山道降りればファミレスとかコンビニとかあると思いますよ」
「一緒に行きましょうよ」
「行かないです。もう自殺志願者のよしみはいいでしょ?一人になりたいんですよ」
ドアを開ける。
ピーーッ バタン!
ほえ?ドアが閉まる。
彼がリモコン片手にニヤッと笑う。
「なんなんですか?なにがしたいんだよ。なんで尽く邪魔するんだ」
努めて冷静に言ったつもりだが、もうそろそろ我慢の限界だ。
「だから飯行きましょうって言ってますけど?」
「行かないって俺も言ってます」
「そうですか…わかりました」
ガチャン
なんの音?
待て、動いてないか?
彼が運転席に座りキャンピングカーを運転している。
さっきの音はドアロックの音か。
「お前止めろ!」
「停めますよ、ファミレスかコンビニに着いたらね」
こいつ頭をおかしい。
話が全く通じねえ。
車に閉じ込められ、しばらくするとピーピーピーと車をバックさせ始めた。
なに?窓の外を見るとファミレスの看板が見えた。
「着きましたよ!飯食いに行きましょう」
「……」
「どうしました?」
「…れる…」
「え?」
「…漏れる…」
「漏れ?ああトイレね!キャンピングカーだから付いてますよ、あのドアです」と小さなドアを指差す。
先に言え!
小さなドアに飛び込むと、あははは~とでかい笑い声がドア越しに聞こえた。
「間に合いました?」
くそ、死ね。
いや、いい。今夜俺は死ぬからお前とは永久におさらばだ。
「じゃ飯食いに行きましょ」
「行かねえよ」
「え?ファミレス着きましたよ?」
「行くなんて言ってないし、俺は金持ってない」
六文銭は使うわけにはいかないのだ。
というか一文銭6枚なんて現代で使える店などないだろう。しかも火葬場ではお金は燃やせないから受け付けてもらえない。印刷した紙のお金だとおもちゃみたいだし味気ないから一文銭で用意したけど、素直に現代の慣習に従うべきだったかもしれない。
「死ぬの邪魔しちゃったお詫びに奢らせてください」
なんでそんな施しを受けなきゃならない!と俺の口が言う代わりに、腹がぐうぅぅぅぅ─といただきますを言っていた。
「あなたの体は正直すぎて面白い!さあ行きますよ!」
俺の腕を掴みズルズルと強引に引きずっていく。もうどうにでもなれ。
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