レンガの家

秋臣

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同じ匂いがする人

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くくく。
半井さんが笑ってる。
「ごめん、ちょっと思い出しちゃった」

「あいつもさ、学生時代にみんなで飲んでる時にレンガ最強説を語り出したんだけど、建築学科の奴に『構造を知らない奴はこれだからな」ってやっぱり論破されて、取っ組み合いの大喧嘩になったことがあったよ」
ふっ
「でも、ここの内装はその時に論破したそいつがやってくれたんだ。
今、建築士やってて『構造は俺に任せろ、お前の理想を好きなようにイメージしたら俺が完璧に仕上げてやる』って頑張ってくれた」

半井さんが俺を見る。
「今永くん」
「はい」
「俺、深影が君に惚れてるって聞いた時、どんな男なんだろうってちょっと興味持ったんだ。でもわかった気がする。
根幹的な部分が同じなんだな」
「え?」
「自分と同じ匂いがする人っているんだよね、それだね」
「同じ匂い...」
「深影、それを嗅ぎ取ったのかもな。
それなら惚れるのもわかる。
そういう本質なところは理屈じゃないし、そういう感覚って説明できないんだよな」
感覚….
「さっき今永くんが泣いてたのもそういうことなんじゃないかな?
深影に同じ匂いを感じたんじゃない?」
「….正直いうとよくわからないんです。
でもさっきの話を聞いて嬉しかったのは本当です。
レンガが好きなのが『三びきのこぶた』がきっかけだなんて俺だけだと思ってたので...」
「それはそうな、深影と今永くん以外、聞いたことないよw」
「そこだけは嬉しかったです」
「そこだけw 君は陽南ちゃんのことが大好きなんだろ?」
「はい」
「きっぱり言い切ったな、それでいいと思うよ。深影もそれはわかってる。
でも悪いやつじゃない。
今までのことも陽南ちゃんを傷つけたくてしてるんじゃないんだ。結果的にそうなってしまってたら意味ないけど。
今永くんが嫌じゃないなら、その似ている根っこの部分を似ていて嬉しいって思ってあげてよ」
「陽南、怒りませんか?嫌がることしたくないんです」
「この前ここでバチバチにやり合ってたけど、あの二人仲はいいんだよ。
そんなことで壊れるような兄妹じゃないよ」
「俺も陽南のお兄さんなので嫌いになりたくないんです」
「あははは!今のままだと相当危ういけどな。まあレンガ好きとしてはいい友達になれるんじゃないかな?」
「陽南を通して検討します」
「陽南ちゃんと深影が君を好きなのがよーくわかった」
「自分のことはよくわからないです」
「そうだよな、でも俺も今永くん好きだなって思うよ、恋愛的な意味じゃなくてね。
俺とは友達になってみない?店としてはお客さんで来てくれても嬉しいし、ここに来ればレンガ堪能出来るよW」
ふっ
懐に入るのが上手いのは半井さんも同じだ。
「そこは是非よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。
いつでもおいで、待ってるよ」
「ありがとうございます」
「深影来るまでいる?」
「いえ、来る前に帰ります」
「あいつ、また振られたなw」


店のドアが勢いよく開く。
「おせーぞ」
「悪い、渋滞した」
深影がキョロキョロしてる。
「今永くんか?」
「そう、いる?」
「帰ったよ」
「やっぱりか...」
「残念でした、俺もそろそろ帰るよ。
拓海は買い出し行ってる」
「遅くなって悪かった」
「いや、気にすんな。それより今永くん、
いい男だな」
「話した?」
「友達になったよ」
「なんでよ!?」
「流れで」
「いいなあ、俺友達にすらなってないのに!」

深影、今はダメでも今永くんとは友達になれるよ、きっと。
でも恋人は諦めろ。

「はんちゃん、何にやにやしてんのよ?」
「別に~」
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