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大公殿下は怖くない
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昼下がり、レオカディアはゲーザを探し歩いた。
イシュトヴァーンが砦を留守にしている時の方が気兼ねなく彼の話を聞けるだろうが、ゲーザも行動を共にしていることが多い。そう考えると僅かな時間も無駄にはできない。
すれ違った使用人に「ゲーザという男はどこにいるの」と声をかけると、怯えた様子で逃げられてしまった。よほどレオカディアの表情が鬼気迫るものだったか、それとも――もしかして、バルトール語が通じていないのか?
(貴賓の身のまわりには言葉が分かる者を配置するのが普通だけれど、わたくしは歓迎されていないのかしら。いいえ、根拠も無いのに悲観するべきではないわ。バルトールでもオルドグ語を話せるのは学者くらいだった。オルドグでも同じような状況で、十分な人員を集められなかったのかもしれない)
そうだとしたら、どうしてイシュトヴァーンは完璧なバルトール語を身につけているのだろう――頭によぎった疑問は、目当ての人物を見つけた拍子に霧散した。
オルドグ人にしては細身で小柄な青年に、レオカディアは背後からオルドグ語で呼びかけた。
『ゲーザ、ディアドラさまのことを聞きたいのだけれど。大公殿下の母君の名前よね?』
『はあ。あのクソ女の何が聞きたいんで……はっ!?』
気怠そうに答えかけた青年は言葉の途中で勢いよく振り向いた。よく日に焼けて褐色になった顔の中で、丸い目がこれ以上無いほどに見開かれている。
『どうしてお前がオルドグ語を喋ってる!?』
『昔から勉強は好きなの。暇つぶしにオルドグ語も学んでいたわ』
『バルトールの女が!?』
『そんなにおかしなこと? 大公殿下だって綺麗なバルトール語を話されるじゃない』
『あいつには事情が……って、それはいい。暇つぶしに勉強か。同じバルトールの姫なのに、あの女とは大違いだな』
『あの女?』
『ディアドラのことだ。いいだろう、お前には知る義務がある。あの女をオルドグに寄越したお前らにはな』
最初の衝撃が去って我に返ったらしいゲーザは、レオカディアを眼光鋭く睨み据えてきた。
『ディアドラは……見た目は美しかったんだろうな。俺にはよく分からないが。だが、あれは毒花だった』
バルトールとオルドグの盟約の内容は『王家の姫』を嫁がせること。これまでは、数の限られた王女ではなく、国王の姪や従姉妹姫が嫁ぐことがほとんどだった。
イシュトヴァーンの母親であるディアドラは現バルトール国王の従妹に当たり、美貌で知られた令嬢だった。その彼女がオルドグの花嫁に選ばれた時、人々は大いに嘆き――同時に深く納得した。彼女の結婚が『放蕩娘の厄介払い』であることは誰の目にも明らかだったからだ。
『イシュトの親父どの……前大公だな、前大公に嫁いだ時に、ディアドラの腹にはもう他の男の子がいたんだよ。お気に入りの愛人だった護衛騎士との子がな』
『はあっ!?』
友好のために嫁いだ女が他の男の種を持ち込むなんて、許されるわけがない。そのまま発覚しなければオルドグ大公家の血を一滴も引かない大公が誕生しかねないのだ、『喧嘩を売ってきた』と見なされて開戦のきっかけとなっても文句は言えない。
(そうか。そんなことがあったから、大公はわたくしに……)
イシュトヴァーンはレオカディアが連れてきた侍女や騎士を帰し、初夜の床では処女かと尋ねてきた。レオカディアにとっては『当たり前』すぎて侮辱にも思えた行動は、ディアドラに悩まされたオルドグにとっては『当たり前』ではなかったのだ。
『嫁いですぐ腹が大きくなって咎められたあの女は涙ながらに前大公に『これは――されて出来た子だ』って言ったそうだ』
『今、なんて?』
『ろくな言葉じゃないが『男に襲われる』という意味だ』
『ああ、『強姦された』って言ったのね』
『そうだ。だから自分は悪くない、って。前大公も嘘には気づいていただろうが、そう言われちゃ責めるわけにもいかない。親父どのは許した。……あのクソ女は、それで懲りるどころか調子に乗りやがった』
『何をしたの』
『恥知らずなことをたくさん。その後何年か経って、ディアドラは愛人と逃げた。それっきり行方知らずだ』
『逃げた……? ディアドラさまは病死したと聞いているけれど』
『そう言い繕うしかなかった。不名誉極まりない話だからな』
親父どのの顔に泥を塗りやがって、と吐き捨てたゲーザは前大公のことをとても慕っているのだろう。イシュトヴァーンとの気安さを見るに、彼も前大公から我が子同然に可愛がられていたのかもしれない。
『そりゃ俺だって、遠い異郷の知らない相手に嫁いだこと自体は可哀想だと思う。でも、それが何度も夫を裏切って子を虐げる理由になるか? そんなに嫌なら最初から逃げておけば、嫁がなければ、親父どのもイシュトも苦しまなくて済んだのに』
『虐げた……暴力を振るうとか?』
『暴力もだし、言葉と態度の方が酷かった。……イシュトがバルトール語を身につけたのは、母親が『オルドグの言葉なんて聞きたくない』と癇癪を起こすからだ。言葉が通じるようになったところで微笑ましい親子の会話なんざ無かったが』
イシュトヴァーンはバルトール語を話せる。彼の母語と大きく異なる難解な言語の単語も文法も発音も完璧に理解している。だが、話した経験はろくに無いのだという。
話し相手になるはずだった母親は、彼と関わることを拒絶したからだ。
『あの女はオルドグ人を『野蛮な獣』と呼んだが、獣だって自分の仔くらいは育てる。親を亡くした仔を群れで育てる獣だっている。あれは獣にも劣る女だ』
『言われても仕方ないわね』
『そうだろう? 俺はあのクソ女が大嫌いだし、今ごろ行き倒れて獣の餌にでもなってりゃいいと思う。オルドグを愚弄してあんな不良品を押しつけてきたバルトールのことも、あの女と同じバルトール人のことも嫌いだ。もちろん、血が近いお前のこともな!』
ぎらついた目を向けてくるゲーザは、まるで仔を守ろうと威嚇する手負いの獣のようだった。イシュトヴァーンは彼にとって主君であると同時に大切な友人でもあるのだろう。友を不幸にする者は許さないと、ゲーザの目が雄弁に語っている。
『……でも、イシュトはお前を気に入ったらしい。バルトールにはあいつの『条件』を満たす姫なんてどうせいないと思ったんだが、お前が引っかかるなんて』
『え?』
心底面白くなさそうな声だった。ゲーザは不満を隠そうともせず零した。
『あいつは昔から『バルトールの姫を誰か娶らなきゃならないなら母に似ていない女がいい』って言っていた。心が強くて賢くて体も頑丈で誠実な女がいい、って。それをバルトールにも言った。そうしたら、お前が選ばれた』
『え……』
どきりとした。『選ばれた』なんて話は誰からも聞いていない。
健康で子が産める女なら誰でもよかった大公が、誰からも望まれなかった残り物のレオカディアを押しつけられたのではないのか?
ああ、でも、振り返ってみれば、初対面でのイシュトヴァーンの言い方は少しだけ妙だった。
『レオカディアという王女は聡明だと聞いていたが、随分と頭の回転が鈍いのだな』
オルドグに嫁ぐのがレオカディアに決まってから情報を集めたのであれば『レオカディア王女はこういう人物らしい』という評になるはずだ。あれではまるで『レオカディアではない方の王女』の存在も知った上で『賢い方の名前がレオカディアらしい』と認識していたように聞こえる。
『バルトールの売り文句なんて信用しちゃいなかったが、お前はイシュトにとってまずまず合格点だったんだろう。……頼むから、お前はあいつを裏切らないでくれ』
じろりと睨んできたゲーザに肩をすくめて返す。
彼も察している通り、レオカディアがオルドグに嫁ぐことになったのは消去法でしかない。レオカディアがイシュトヴァーンの要望と一致するような評判を得ていたのはあくまでも偶然で、残ったのがナーディアでもクラウディアでもそれ以外の誰だったとしても、国王や宰相は『これが大公殿下お求めの『強くて賢くて頑丈で誠実な姫』でございます』と差し出しただろう。
それでも気に入られたということは、レオカディアはイシュトヴァーンのお眼鏡に適ったのだろうか。自分は彼に『強くて賢くて頑丈で誠実な女』だと認められたのか――女性として一般的な褒め言葉ではないけれど、じわじわと嬉しく思えてきた。
だが、気に入られたというのなら、納得のいかないことがある。
『……わたくし、彼に『未経験なせいで局部が狭くて挿入しにくい』と文句をつけられたのだけれど』
『そりゃ『可愛い嫁を大事にしたいのに壊してしまいそうで怖い』って思ったからそう言ったんだろう』
『他にも『わたくしが慣れるまで動かずに待って』と言ったのに『言い訳はするな、黙ってろ』みたいなことを……』
『はあ? お前、そんなこと言ったのか? イシュトが可哀想だ、『健気に耐える妻のふりで煽られると興奮してひどくしてしまうからやめてほしい』って意味に決まってるだろ?』
『『ふり』なんてしてないし、煽ってないし、決まってないわ! 紛らわしい!』
レオカディアだって初めてで不安だったのに、夫に不出来さを詰られた上に強引に事を進められて怖かった。
思うところがあるなら言葉を惜しまずに言ってほしかった、と愚痴を零すと、ゲーザは居心地悪げに視線を彷徨わせた。
『あー、それは……いや、まあ、お前の気持ちも分かるが。興奮して頭に血が上ってる状態で、難解な他所の言葉で愛を囁けってのは、イシュトには無理というか酷というか』
『……それもそうね』
『これは身内の欲目だが、あいつは素知らぬ顔で心にもないことを言えるほど器用じゃない。ひどいことを言われたと思ったのなら、たぶん誤解がある』
だから許してやってくれないかと頼み込んでくるゲーザに笑ってしまう。下手に出ながらも贔屓目を隠すつもりもないらしい。
友人に愛されているのね、と夫を思い浮かべて、なんとなく分かる気がしてしまった。
『やばかった! 嫁が可愛すぎた!!!』
あの時盗み聞いた彼の言葉に悪い気はしなかったし、愛嬌さえ感じてしまったから。
違う文化で育った違う人間なのに、何も努力せずに分かり合えるわけがない。言いたいことがあれば伝える。分からないことがあれば分かるまで聞く。それを心に留めるようになってから、レオカディアの日常は刺激的なものになった。
「あんっ! そこ、悦いいわっ!」
はしたなく嬌声を上げて自分の弱点を知らせるレオカディアを見て、イシュトヴァーンは目を細めた。
「指で責められると貴女はすぐに悦ぶな。そんなに好きなら続けるか? 子を孕むのには役に立たない行為だが」
聞くと一瞬『役目のことも忘れて快楽に耽っている淫らな女だ』と馬鹿にされたのかと身構えてしまうこの言葉も、意味するところはきっとこんな感じだ。
『前戯でちゃんと感じさせられてよかった。無理させず気持ちいいことだけをして終わった方がいいか。でも、子作りをしないと嫁は大公妃としての立場を無くすし……オレも挿れたいし。挿れてもいいかな』
なんとも健気じゃないか。彼だってとっくに勃起しているくせに、レオカディアを気遣っている。気遣っている割に格好をつけきることが出来ない程度には余裕無く妻を求めている。
(可愛いひとね)
白い肌のバルトール人よりは顔色の変化が分かりにくいが、彼の耳は赤く染まっている。
母性本能をくすぐられて胸をキュンと高鳴らせたレオカディアは、いい子で待っていた夫に『よし』を与えてやった。
「殿下、わたくしに御子を授けてくださいませ」
「っ、貴女がそう望むのなら」
『よかった、嫁にはオレの子を産む気があるんだ。挿れて射精して夫婦らしいことをしても許される。彼女は許してくれる!』
性急にねじ込まれた陰茎に息をつめる。そもそもの大きさが合っていないとしか思えない逸物は、胎を深く抉って内臓を押し上げられるような違和感を与えてくる。苦しげにはくはくと呼吸をするレオカディアを、イシュトヴァーンはじっと見ていた。
(あ、まずい……気づかれた!)
「苦しいだろうが、これが貴女の役目だ。分かっているな?」
『レオカディアは責任感が強くて頭がいい。バルトールのためなら嫌悪しているオレが相手でも受け入れてくれる。……受け入れるしかないって彼女は分かってるんだ。苦しめているオレが今更何を言っても気に障るだろうし、謝るのも……』
――だから、言うべきことは言え! 余計なことは言うな、もう少し言葉を選べ!
鬼畜発言にしか聞こえない発言を繰り返す夫の頭を叩いてやりたいが、落ち込んでしまった彼の心と陰茎の元気を回復させるのが先だとレオカディアは口角を引き攣らせた。
「いいえ、大公殿下、わたくしは殿下のことをお慕いして、」
「余計なことは言うな」
『見え透いた嘘を吐かれると悲しくなる』
「めんどくさっ……ごほん、『余計なこと』ではありません」
「なんだと」
「雰囲気作りは大事でしょう? 子作りに積極的になれるように、必要なことだから言っているの」
「必要……」
「そう。あなたも夫として協力すべきよ。わたくしと同じように、言って。わたくしのことが好きだ、って」
「……好き、」
「そうよ。言いなさい」
「貴女が好きだ。好きだ……っ!」
言葉を覚えたばかりの幼子のように、イシュトヴァーンはそれだけを繰り返した。
流暢なバルトール語の中に置くと際立つその単語の拙い発音は、彼が『好き』と言い慣れていないことを、彼がこれまで『好き』を捧げる相手を持たなかったことを悟らせて、レオカディアを少し悲しませた。同時に湧いた彼への愛おしさは尽きることが無い。
「ええ、わたくしもあなたが好き。だから、あなたは安心してわたくしを好きでいればいいの」
わたくしが全部受けとめてあげるから。
耳元で囁くと、腕の戒めはいっそう強くなる。眉を顰めた彼が喉奥で低く唸ると同時に、身のうちを灼くような熱い奔流がレオカディアの胎に注ぎ込まれた。
(……ああ、また難しい顔をしちゃって)
相変わらず二人の間にピロートークは無い。それでも少し前までは事後のイシュトヴァーンは嬉しそうな雰囲気を漂わせていたのに、最近の彼は顰めっ面で黙り込むようになった。
(何なの、言わなきゃ分からないわ。言いなさいよ、わたくしが聞いてあげるから。でも、今はねむい――)
指の一本すら動かせないほど疲れ果てて眠りに落ちる寸前、レオカディアは夫が泣きそうな子どものように顔を歪めたのを見たような気がした。
『講評が欲しいのに、どうして何も言わなくなってしまったのかしら。ゲーザ、主人思いで友人思いなあなたなら彼の気持ちが気になって仕方ないはずよね? あなたから水を向けて聞き出しなさい』
『身内の情事の詳細を聞かされる俺の気持ちも気にしろ!』
翌朝になるとイシュトヴァーンの様子は普段通りに戻ってしまって問いただす隙が無い。だが、レオカディアはそんなことで諦める女ではない。協力者として抱き込んだゲーザから情報を得ようとすると、大声で喚かれた。まったく、こんな話をしているところを他人に聞きつけられたらどうしてくれるのか。
『はあ、あなたって気が利かなくて使えない男……』
『お前は人使いが荒くて恐ろしく可愛くない女だな。はあ、本当にイシュトは趣味が悪い。……でも確かに最近のあいつは俺にも何も言わないし、いつ見ても浮かない顔で心配になる』
『何か悩みがあるのかしら』
『お前が何かしたんじゃないか?』
『ゲーザこそ何をしたの?』
『決めつけるな!』
『こちらの台詞よ』
「――楽しそうだな」
どこがだ。互いに罵り合う醜悪極まりない光景だろう、と反射的に言い返しかけたレオカディアは、絶対零度の声の主に気づいて、ぎこちなく振り向いた。
「子を一人も産まないうちから不貞か? レオカディア」
元から厳つい顔立ちに険しい表情を浮かべて、いっそ『凶悪』とも言える顔をした夫がそこに立っていた。
イシュトヴァーンが砦を留守にしている時の方が気兼ねなく彼の話を聞けるだろうが、ゲーザも行動を共にしていることが多い。そう考えると僅かな時間も無駄にはできない。
すれ違った使用人に「ゲーザという男はどこにいるの」と声をかけると、怯えた様子で逃げられてしまった。よほどレオカディアの表情が鬼気迫るものだったか、それとも――もしかして、バルトール語が通じていないのか?
(貴賓の身のまわりには言葉が分かる者を配置するのが普通だけれど、わたくしは歓迎されていないのかしら。いいえ、根拠も無いのに悲観するべきではないわ。バルトールでもオルドグ語を話せるのは学者くらいだった。オルドグでも同じような状況で、十分な人員を集められなかったのかもしれない)
そうだとしたら、どうしてイシュトヴァーンは完璧なバルトール語を身につけているのだろう――頭によぎった疑問は、目当ての人物を見つけた拍子に霧散した。
オルドグ人にしては細身で小柄な青年に、レオカディアは背後からオルドグ語で呼びかけた。
『ゲーザ、ディアドラさまのことを聞きたいのだけれど。大公殿下の母君の名前よね?』
『はあ。あのクソ女の何が聞きたいんで……はっ!?』
気怠そうに答えかけた青年は言葉の途中で勢いよく振り向いた。よく日に焼けて褐色になった顔の中で、丸い目がこれ以上無いほどに見開かれている。
『どうしてお前がオルドグ語を喋ってる!?』
『昔から勉強は好きなの。暇つぶしにオルドグ語も学んでいたわ』
『バルトールの女が!?』
『そんなにおかしなこと? 大公殿下だって綺麗なバルトール語を話されるじゃない』
『あいつには事情が……って、それはいい。暇つぶしに勉強か。同じバルトールの姫なのに、あの女とは大違いだな』
『あの女?』
『ディアドラのことだ。いいだろう、お前には知る義務がある。あの女をオルドグに寄越したお前らにはな』
最初の衝撃が去って我に返ったらしいゲーザは、レオカディアを眼光鋭く睨み据えてきた。
『ディアドラは……見た目は美しかったんだろうな。俺にはよく分からないが。だが、あれは毒花だった』
バルトールとオルドグの盟約の内容は『王家の姫』を嫁がせること。これまでは、数の限られた王女ではなく、国王の姪や従姉妹姫が嫁ぐことがほとんどだった。
イシュトヴァーンの母親であるディアドラは現バルトール国王の従妹に当たり、美貌で知られた令嬢だった。その彼女がオルドグの花嫁に選ばれた時、人々は大いに嘆き――同時に深く納得した。彼女の結婚が『放蕩娘の厄介払い』であることは誰の目にも明らかだったからだ。
『イシュトの親父どの……前大公だな、前大公に嫁いだ時に、ディアドラの腹にはもう他の男の子がいたんだよ。お気に入りの愛人だった護衛騎士との子がな』
『はあっ!?』
友好のために嫁いだ女が他の男の種を持ち込むなんて、許されるわけがない。そのまま発覚しなければオルドグ大公家の血を一滴も引かない大公が誕生しかねないのだ、『喧嘩を売ってきた』と見なされて開戦のきっかけとなっても文句は言えない。
(そうか。そんなことがあったから、大公はわたくしに……)
イシュトヴァーンはレオカディアが連れてきた侍女や騎士を帰し、初夜の床では処女かと尋ねてきた。レオカディアにとっては『当たり前』すぎて侮辱にも思えた行動は、ディアドラに悩まされたオルドグにとっては『当たり前』ではなかったのだ。
『嫁いですぐ腹が大きくなって咎められたあの女は涙ながらに前大公に『これは――されて出来た子だ』って言ったそうだ』
『今、なんて?』
『ろくな言葉じゃないが『男に襲われる』という意味だ』
『ああ、『強姦された』って言ったのね』
『そうだ。だから自分は悪くない、って。前大公も嘘には気づいていただろうが、そう言われちゃ責めるわけにもいかない。親父どのは許した。……あのクソ女は、それで懲りるどころか調子に乗りやがった』
『何をしたの』
『恥知らずなことをたくさん。その後何年か経って、ディアドラは愛人と逃げた。それっきり行方知らずだ』
『逃げた……? ディアドラさまは病死したと聞いているけれど』
『そう言い繕うしかなかった。不名誉極まりない話だからな』
親父どのの顔に泥を塗りやがって、と吐き捨てたゲーザは前大公のことをとても慕っているのだろう。イシュトヴァーンとの気安さを見るに、彼も前大公から我が子同然に可愛がられていたのかもしれない。
『そりゃ俺だって、遠い異郷の知らない相手に嫁いだこと自体は可哀想だと思う。でも、それが何度も夫を裏切って子を虐げる理由になるか? そんなに嫌なら最初から逃げておけば、嫁がなければ、親父どのもイシュトも苦しまなくて済んだのに』
『虐げた……暴力を振るうとか?』
『暴力もだし、言葉と態度の方が酷かった。……イシュトがバルトール語を身につけたのは、母親が『オルドグの言葉なんて聞きたくない』と癇癪を起こすからだ。言葉が通じるようになったところで微笑ましい親子の会話なんざ無かったが』
イシュトヴァーンはバルトール語を話せる。彼の母語と大きく異なる難解な言語の単語も文法も発音も完璧に理解している。だが、話した経験はろくに無いのだという。
話し相手になるはずだった母親は、彼と関わることを拒絶したからだ。
『あの女はオルドグ人を『野蛮な獣』と呼んだが、獣だって自分の仔くらいは育てる。親を亡くした仔を群れで育てる獣だっている。あれは獣にも劣る女だ』
『言われても仕方ないわね』
『そうだろう? 俺はあのクソ女が大嫌いだし、今ごろ行き倒れて獣の餌にでもなってりゃいいと思う。オルドグを愚弄してあんな不良品を押しつけてきたバルトールのことも、あの女と同じバルトール人のことも嫌いだ。もちろん、血が近いお前のこともな!』
ぎらついた目を向けてくるゲーザは、まるで仔を守ろうと威嚇する手負いの獣のようだった。イシュトヴァーンは彼にとって主君であると同時に大切な友人でもあるのだろう。友を不幸にする者は許さないと、ゲーザの目が雄弁に語っている。
『……でも、イシュトはお前を気に入ったらしい。バルトールにはあいつの『条件』を満たす姫なんてどうせいないと思ったんだが、お前が引っかかるなんて』
『え?』
心底面白くなさそうな声だった。ゲーザは不満を隠そうともせず零した。
『あいつは昔から『バルトールの姫を誰か娶らなきゃならないなら母に似ていない女がいい』って言っていた。心が強くて賢くて体も頑丈で誠実な女がいい、って。それをバルトールにも言った。そうしたら、お前が選ばれた』
『え……』
どきりとした。『選ばれた』なんて話は誰からも聞いていない。
健康で子が産める女なら誰でもよかった大公が、誰からも望まれなかった残り物のレオカディアを押しつけられたのではないのか?
ああ、でも、振り返ってみれば、初対面でのイシュトヴァーンの言い方は少しだけ妙だった。
『レオカディアという王女は聡明だと聞いていたが、随分と頭の回転が鈍いのだな』
オルドグに嫁ぐのがレオカディアに決まってから情報を集めたのであれば『レオカディア王女はこういう人物らしい』という評になるはずだ。あれではまるで『レオカディアではない方の王女』の存在も知った上で『賢い方の名前がレオカディアらしい』と認識していたように聞こえる。
『バルトールの売り文句なんて信用しちゃいなかったが、お前はイシュトにとってまずまず合格点だったんだろう。……頼むから、お前はあいつを裏切らないでくれ』
じろりと睨んできたゲーザに肩をすくめて返す。
彼も察している通り、レオカディアがオルドグに嫁ぐことになったのは消去法でしかない。レオカディアがイシュトヴァーンの要望と一致するような評判を得ていたのはあくまでも偶然で、残ったのがナーディアでもクラウディアでもそれ以外の誰だったとしても、国王や宰相は『これが大公殿下お求めの『強くて賢くて頑丈で誠実な姫』でございます』と差し出しただろう。
それでも気に入られたということは、レオカディアはイシュトヴァーンのお眼鏡に適ったのだろうか。自分は彼に『強くて賢くて頑丈で誠実な女』だと認められたのか――女性として一般的な褒め言葉ではないけれど、じわじわと嬉しく思えてきた。
だが、気に入られたというのなら、納得のいかないことがある。
『……わたくし、彼に『未経験なせいで局部が狭くて挿入しにくい』と文句をつけられたのだけれど』
『そりゃ『可愛い嫁を大事にしたいのに壊してしまいそうで怖い』って思ったからそう言ったんだろう』
『他にも『わたくしが慣れるまで動かずに待って』と言ったのに『言い訳はするな、黙ってろ』みたいなことを……』
『はあ? お前、そんなこと言ったのか? イシュトが可哀想だ、『健気に耐える妻のふりで煽られると興奮してひどくしてしまうからやめてほしい』って意味に決まってるだろ?』
『『ふり』なんてしてないし、煽ってないし、決まってないわ! 紛らわしい!』
レオカディアだって初めてで不安だったのに、夫に不出来さを詰られた上に強引に事を進められて怖かった。
思うところがあるなら言葉を惜しまずに言ってほしかった、と愚痴を零すと、ゲーザは居心地悪げに視線を彷徨わせた。
『あー、それは……いや、まあ、お前の気持ちも分かるが。興奮して頭に血が上ってる状態で、難解な他所の言葉で愛を囁けってのは、イシュトには無理というか酷というか』
『……それもそうね』
『これは身内の欲目だが、あいつは素知らぬ顔で心にもないことを言えるほど器用じゃない。ひどいことを言われたと思ったのなら、たぶん誤解がある』
だから許してやってくれないかと頼み込んでくるゲーザに笑ってしまう。下手に出ながらも贔屓目を隠すつもりもないらしい。
友人に愛されているのね、と夫を思い浮かべて、なんとなく分かる気がしてしまった。
『やばかった! 嫁が可愛すぎた!!!』
あの時盗み聞いた彼の言葉に悪い気はしなかったし、愛嬌さえ感じてしまったから。
違う文化で育った違う人間なのに、何も努力せずに分かり合えるわけがない。言いたいことがあれば伝える。分からないことがあれば分かるまで聞く。それを心に留めるようになってから、レオカディアの日常は刺激的なものになった。
「あんっ! そこ、悦いいわっ!」
はしたなく嬌声を上げて自分の弱点を知らせるレオカディアを見て、イシュトヴァーンは目を細めた。
「指で責められると貴女はすぐに悦ぶな。そんなに好きなら続けるか? 子を孕むのには役に立たない行為だが」
聞くと一瞬『役目のことも忘れて快楽に耽っている淫らな女だ』と馬鹿にされたのかと身構えてしまうこの言葉も、意味するところはきっとこんな感じだ。
『前戯でちゃんと感じさせられてよかった。無理させず気持ちいいことだけをして終わった方がいいか。でも、子作りをしないと嫁は大公妃としての立場を無くすし……オレも挿れたいし。挿れてもいいかな』
なんとも健気じゃないか。彼だってとっくに勃起しているくせに、レオカディアを気遣っている。気遣っている割に格好をつけきることが出来ない程度には余裕無く妻を求めている。
(可愛いひとね)
白い肌のバルトール人よりは顔色の変化が分かりにくいが、彼の耳は赤く染まっている。
母性本能をくすぐられて胸をキュンと高鳴らせたレオカディアは、いい子で待っていた夫に『よし』を与えてやった。
「殿下、わたくしに御子を授けてくださいませ」
「っ、貴女がそう望むのなら」
『よかった、嫁にはオレの子を産む気があるんだ。挿れて射精して夫婦らしいことをしても許される。彼女は許してくれる!』
性急にねじ込まれた陰茎に息をつめる。そもそもの大きさが合っていないとしか思えない逸物は、胎を深く抉って内臓を押し上げられるような違和感を与えてくる。苦しげにはくはくと呼吸をするレオカディアを、イシュトヴァーンはじっと見ていた。
(あ、まずい……気づかれた!)
「苦しいだろうが、これが貴女の役目だ。分かっているな?」
『レオカディアは責任感が強くて頭がいい。バルトールのためなら嫌悪しているオレが相手でも受け入れてくれる。……受け入れるしかないって彼女は分かってるんだ。苦しめているオレが今更何を言っても気に障るだろうし、謝るのも……』
――だから、言うべきことは言え! 余計なことは言うな、もう少し言葉を選べ!
鬼畜発言にしか聞こえない発言を繰り返す夫の頭を叩いてやりたいが、落ち込んでしまった彼の心と陰茎の元気を回復させるのが先だとレオカディアは口角を引き攣らせた。
「いいえ、大公殿下、わたくしは殿下のことをお慕いして、」
「余計なことは言うな」
『見え透いた嘘を吐かれると悲しくなる』
「めんどくさっ……ごほん、『余計なこと』ではありません」
「なんだと」
「雰囲気作りは大事でしょう? 子作りに積極的になれるように、必要なことだから言っているの」
「必要……」
「そう。あなたも夫として協力すべきよ。わたくしと同じように、言って。わたくしのことが好きだ、って」
「……好き、」
「そうよ。言いなさい」
「貴女が好きだ。好きだ……っ!」
言葉を覚えたばかりの幼子のように、イシュトヴァーンはそれだけを繰り返した。
流暢なバルトール語の中に置くと際立つその単語の拙い発音は、彼が『好き』と言い慣れていないことを、彼がこれまで『好き』を捧げる相手を持たなかったことを悟らせて、レオカディアを少し悲しませた。同時に湧いた彼への愛おしさは尽きることが無い。
「ええ、わたくしもあなたが好き。だから、あなたは安心してわたくしを好きでいればいいの」
わたくしが全部受けとめてあげるから。
耳元で囁くと、腕の戒めはいっそう強くなる。眉を顰めた彼が喉奥で低く唸ると同時に、身のうちを灼くような熱い奔流がレオカディアの胎に注ぎ込まれた。
(……ああ、また難しい顔をしちゃって)
相変わらず二人の間にピロートークは無い。それでも少し前までは事後のイシュトヴァーンは嬉しそうな雰囲気を漂わせていたのに、最近の彼は顰めっ面で黙り込むようになった。
(何なの、言わなきゃ分からないわ。言いなさいよ、わたくしが聞いてあげるから。でも、今はねむい――)
指の一本すら動かせないほど疲れ果てて眠りに落ちる寸前、レオカディアは夫が泣きそうな子どものように顔を歪めたのを見たような気がした。
『講評が欲しいのに、どうして何も言わなくなってしまったのかしら。ゲーザ、主人思いで友人思いなあなたなら彼の気持ちが気になって仕方ないはずよね? あなたから水を向けて聞き出しなさい』
『身内の情事の詳細を聞かされる俺の気持ちも気にしろ!』
翌朝になるとイシュトヴァーンの様子は普段通りに戻ってしまって問いただす隙が無い。だが、レオカディアはそんなことで諦める女ではない。協力者として抱き込んだゲーザから情報を得ようとすると、大声で喚かれた。まったく、こんな話をしているところを他人に聞きつけられたらどうしてくれるのか。
『はあ、あなたって気が利かなくて使えない男……』
『お前は人使いが荒くて恐ろしく可愛くない女だな。はあ、本当にイシュトは趣味が悪い。……でも確かに最近のあいつは俺にも何も言わないし、いつ見ても浮かない顔で心配になる』
『何か悩みがあるのかしら』
『お前が何かしたんじゃないか?』
『ゲーザこそ何をしたの?』
『決めつけるな!』
『こちらの台詞よ』
「――楽しそうだな」
どこがだ。互いに罵り合う醜悪極まりない光景だろう、と反射的に言い返しかけたレオカディアは、絶対零度の声の主に気づいて、ぎこちなく振り向いた。
「子を一人も産まないうちから不貞か? レオカディア」
元から厳つい顔立ちに険しい表情を浮かべて、いっそ『凶悪』とも言える顔をした夫がそこに立っていた。
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