英雄の詩

銀河ミヤイ

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第一章「伝説の英雄」

第11話「覚悟」

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 ニュウジャー地区の中心にある公会堂という地区のシンボルに身を潜めていた大柄の男達は、地区の人達を人質にしていた。


「いいか、男共は兵士女共は奴隷としてこれから新生魔王軍の為に働いてもらう!」


腕に赤い腕章を着けた男がそう言う。彼の名は、アン。新生魔王軍の下級戦士をまとめる第21番隊隊長の一人である。彼らは、戦力となって使い捨てられる人間を兵士又は奴隷とする為にやってきた。既にニュウジャー地区は制圧されている状態だった。


「この王女様がどうなってもいいのかな?」


そして、彼らの後ろには未だに意識を失っている状態のアリスが紐で身動きができないくらいに縛られている状態で吊るされていた。アンは、彼女の顎をクイッとしながら今にも痛めつけ様なオーラを出して地区の住民の殺意を無理矢理を殺した。


「ハハハッ、それでいいんだよ。」


そういいながらアンは、大声で笑い出した。

















「だめだ、こっちも居ない」


ドラゴンが光輝にそう報告する。既に公会堂以外は捜索し終えた光輝達は、ゆっくりと公会堂に近づくと琥珀が急に止まった。


「どうした?」

「はい、あそから人の声が」


琥珀は、特別に耳がいい訳では無いが、助けを求める声は一回も漏らしたことが無いくらい敏感だった。そんな琥珀のことを信じた光輝は、フェニックスやドラゴンをその場に待機させて琥珀と共にその声が響く建物へ向かった。


「誰かいるのか?」


思いっきり扉を開けた光輝は、呼び掛けるが誰も返事をしない。琥珀の勘違いじゃないのかと疑ったが辺りを心配そうに見回す琥珀を見て光輝は、一旦仮面を外してからもう1回大声を出した。


「俺たちは助けに来た、誰かいるなら返事してくれ!」


すると、奥から「ガタッ」と言う音が響くとしばし間隔が空いてから一人の少女がボロボロな制服を着たままゆっくりと光輝の前へやってきた。


「嘘、光輝??」


茶色い髪をした少女は、前に立つ光輝を見ると彼の名前を一発で言い当てたことに初めは驚いた光輝だが、よくよく見ると中学時代の同じクラスだった赤坂 真由あかさか まゆがいた。


「赤坂、どうした?」


真由は、読んでいた相手が光輝だと判断するとそのまま勢いよく彼の懐へめがけて飛び込んむとそのまま抱きついた。余程怖かったのか、彼女は涙を流しながら大声で泣いていた。
 しばらくそのままにしていると真由は、落ち着くと光輝から離れて状況を教えてくれた。新生魔王軍と名乗る連中がやって来て地区を攻撃されてこの有り様だと言う。幸いな事に真由は、部活をしていて襲撃の時には家にいなかったらしい。


「__分かった、情報ありがとうな。」


光輝は、そう言うと再び顔を仮面で覆った。その姿を見た真由は、驚いた顔をしていた。


「光輝、それは……!?」

「__待たせたな、俺はもう自分にも魔王軍にも逃げないって決めたんだ!」


真由にそう言い残すと外でまたしている3体の使い魔達と共に光輝は、再び公会堂へと目指した。
 公会堂の門番には、リザードマンが2匹いた。彼らは、どんな音でも聞き取る力があるのか近づく度に警戒を強めていた。


「じゃあ、ドラゴン……頼む!」


ドラゴンは、コクっと頷き物陰からリザードマン達の方へ向かった。


「な、何者だ!?」

「貴様に名乗る名前はない!」


そう言い残すと、ドラゴンはリザードマン達や闇に落ちた彼らが嫌う聖なる炎を口から放ち焼き払うと光輝達は、そのまま公会堂の門をぶち壊して突撃した。


「新生魔王軍!貴様らの好きにはさせないぞ!!」


光輝の声が公会堂の中に響き渡ると誰もが光輝の方を見た。その中後ろに気を失っているアリスに対して襲いかかろうとしていたアンの姿を見た光輝は、どこかプチンと切れる感覚がした。


「お前達……絶対許さねぇ!フェニックス、縛られている人達を守れ!!琥珀とドラゴンは、雑魚の処理を頼む!!俺は……あの腐った男をぶっ殺す!!」


そう言うと光輝の瞳がそれぞれ赤くなると、自らの身体に超加速スーパーアクセルという名の加速魔法を掛けて一気にアンの前まで接近するとエクスカリバーを振り下ろすも、アンはそれを躱した。


「俺の一撃を躱すなんて……やるじゃん。」


光輝は、そう言うも再びエクスカリバーを構えた。アンは、召喚魔法を使用して斧の武器を手に取ると光輝に近づき斜め下から斧を振り上げて彼に攻撃した。いくら平民だった人だとしてもエクスカリバーの存在は知っていたらしく、それに当てないように必死に振っていた。


「__ぬるい……ぬる過ぎるぜ!!」


光輝は、そう呟くとアンから一旦距離を置くと右手を伸ばしてアンに向けていた。


「喰らえ、バブルボム!!」


水系の爆発魔法バブルボムを使用してアンに牽制をした。爆散する水によって彼は、視界を失い身動きが取れなくなった。


「ウインドカッター!」


風系の切断魔法ウインドカッターを使い先にアリスの救出へ向かった。


「アリス、アリス!!」


鎖や縄などを解くと光輝は、意識をなくしているアリスに何度も問いかけた。すると、アリスはゆっくり目を開けると仮面を着けた光輝の姿に驚いた。


「……光輝?」

「あぁ、俺だ。」


アリスは、あまり出来事に光輝の胸に顔を伏せた。辛い過去と似た経験をさせられたのだ。泣きたくなるもの分かるし、アリスにこんな事をさせたアン達を許す訳にはいかなかった。その気持ちは、ケンとしてではなく……影野光輝として……


「アリス、黙ってて済まなかった。」


光輝は、仮面を取りアリスに素顔を見せた。アリスも最初は、頬を膨らまして拗ねた顔をしていたが助けに来てくれたことに嬉しかったのか少し笑顔になった。


「今度も……守ってくれるわよね?」

「あぁ、もう二度とこんな事させないし、こんな事をする奴らを俺は許さない!」


アリスは、そんな光輝の頬へキスした。爆発や魔法の衝撃で視界がハッキリしていないお陰で誰にも見られていなかった。


「ちょっ!!アリス!?」

「__好き……。」


キスされた所を手で押さえながら驚いた光輝を更に驚かせた発言だった。アリスの昔からの想いがこうして今彼に伝わったからだ。だが、あまりピンっと来ない光輝は、思わず「え!?」と繰り返してしまった。


「だから、光輝……貴方の事が……好き!」


顔を真っ赤にしていたアリスのことを見て本気なんだと知った。
 いつからだろう?アリスが、光輝の事を好きになったのは……そうアリスは、振り返るとやはり、3年前のあの出会いから全てが始まったのだろう……。


「アリス……」


光輝は、そう呟くと彼女の頬を触ると背中へその手を伸ばしてグッとアリスを抱きしめた。


「俺も君のことが好きだった……大切な人を失って復讐しか脳のなかった俺に再び触れ合うことの良さを教えてくれた君の事が……」

「__光輝!後ろ!!」


後ろから複数のサンダーアローが迫っていた。光輝は、再び仮面を被り立ち上がると魔法は、全て無効化された。


「終わりにしよう……アン!!」


光輝は、再びエクスカリバーを強く握ると自分の魔力を注ぎ込むと振りかぶった。


「__エレメントブレイク!」


光輝の一番得意な技であり最大の技であるエレメントブレイクは、魔力によって出来た四大元素を相手にぶつける技である。振り下ろした刀身から放たれた四大元素は、アンに全て命中した。丁度その頃、フェニックスが全ての人質を解放することに成功するとドラゴンや琥珀は、他の雑魚の処理を終えたらしい。


「みんな、お疲れ様。ゆっくり休んでくれ。」


そう3体の使い魔に言うと彼らは、役目を終えて静かに姿を消した。
 いつの間にか日が傾き夕方になっていた。光輝は、魔力切れの為今は余り動けないでいた。


「光輝……」


アリスは、頬を赤にしながら光輝の名を呼んだ。


「アリス……」


光輝もアリスの名を呼びお互いに向き合いながら見つめ合う。そして、お互いの顔の距離は狭まり……


「__ん。」


気がつけば二人は、キスをしていた。光輝は、舌を混ぜながらお互いの愛を確認するかのように……



























「アリス、無理を言ってるのはわかっている……でも、気持ち的に伝えたいんだ!」


長いキスを終えて二人は、顔を離すと光輝がアリスに話しかけた。その言葉からしてアリスは、彼が何を言いたいのか察したが見守るような表情で光輝を見ていた。


「アリスが好きだ、付き合って欲しい。」

「うん、但し条件があります。」


アリスは、即答するが一つ条件があると言い出した。なんだろうかと疑問に思った光輝は不安そうな顔をするが、アリスは自分の手を光輝の首に回した。


「将来、私をお嫁にしてください!」


光輝は、そう言われると何も答えずに手を腰に回してハグするとそのまま再び顔を近づけて誓のキスをした。





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