英雄の詩

銀河ミヤイ

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第一章「伝説の英雄」

第4話「芽生えた気持ち」

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 帰宅後、アリスは自分の部屋へと戻るとベットに横倒れ天井を見上げた。思い描いていたのは3年前、仮面の騎士と行動した日々だ。
 アリスは、リンカーンへ侵略の手を進めてきた魔王軍に捕まり捕虜とされたのだ。王族のドレスを剥ぎ取られ布1枚という格好をさせられた挙句に両手を後ろにしてロープで縛られて身動きができない状態にされていた。首輪にかけられたリードを魔王軍の下っ端兵士リザードマン隊の隊長が引いていた。


「おい、早く行くぞ!お前はサタン様の新たな子を孕むのだからな!」

「い、嫌……」


あの頃のアリスは、今のように威勢を張れる力はなく恐怖に声をうまく出せない状態だった。
 そんな彼女を連れて街を数回ぐらい周回した時だった。魔王の浮遊城サターン帝国の迎えが来たのだ。もし助けが来なければ、アリスはサタンの捕虜としての証である烙印を身体のどこかに押されて一生子を孕む道具とされるのだ。生まれて初めて見た魔王の城にもはや逆らう気力も残っていなかったアリスはただ今後の将来を少し想像していた。魔王の奴隷となる自分の姿を……


「__を返してもらおうか。」


 次の瞬間、リードを掴んでいたリザードマン隊隊長の腕が吹っ飛ぶと同時に激しい痛みが彼を襲った。アリスはあっという間に漆黒のフードに仮面をつけた少年の腕の中にいた。


「だ、誰だ!?」


ほかの隊員が一斉にこちらを向いてきた。アリスは、少し恐怖に怯え少年の服をギュッと掴んだ。


「__大丈夫、俺は君の味方だ。」


腕の中で怯えている彼女を見た少年は優しくアリスに伝えるとゆっくりと彼女を地面に下ろした。


「すぐ終わらせる、だから……待っててくれ!」


少年は、そう言うと背中に装備していた剣全てが金色に輝いている聖剣エクスカリバーを鞘から引き抜くとそれを軽々と振り近づいてきた下っ端リザードマンたちを剣圧だけで振り払った。


「貴方は?」


アリスがそう呟いた時、少年は彼女の視界から消えるとリザードマン隊の後ろに彼の姿はあった。見捨てられたと思ったアリスだが、目の前のリザードマン隊の隊員合計20人が一斉に血を流して倒れた。


「__俺の名は、ケン。人は俺のことを仮面の騎士って呼ぶけどな。」


被っていたフードを脱いだケンは、彼女の質問に答えた。
 閃光のように速かったスピードを見て思わず唖然としていたのをアリスは、今でも覚えていた。


「ケン、貴方は今どこにいるの???」


 部屋の天井を見ながら自分の前から居なくなった人のことを考えていたアリスは、そのまま寝についた。
 翌日、アリスは学校へ登校すると早速目の前を歩く光輝の姿を見かけた。彼は、普段と変わらない態度で同じクラスメイトの健太と歩いていた。


「ケン……」


アリスは、思わず光輝の事を見てケンと呟いてしまった。戦いの時の立ちまいや態度が似てる気がしたからだ。


「アリスちゃん……どうしたの?」


後ろから不意を突かれるように声をかけられたアリスは、「ヒャッ!!」っと声を上げた。


「__って、貴方は……」

「突然ごめんね、私はクラスメイトの神林 美穂かんばやし みほ。宜しくね!」


驚かせたことに謝ると美穂は、改めてアリスに自己紹介をした。すると、美穂何か怪しい物をニヤニヤして見るかのようにしてアリスをジロジロ見た。


「ど、どうしたの……神林さん。」

「美穂で良いよ~、それでアリスちゃんは影野君のこと気になるの???」


アリスは過剰反応するかのように顔を赤くした。それを見た美穂は、さらに迫った。


「__そ、そんな事……ない……」

「まぁ、これ以上は真相に迫るのやめておいてあげる。でも、これだけは言っておいてあげるね!なんでも最初は挨拶からだよ!」


照れて顔を赤くしてるのをバレないようにと左腕で口元を隠すもバレバレなアリスに対して美穂は、優しくアドバイスしてから他のクラスの友達と教室へ向かった。それを見てたアリスは、まるで息を忘れてたかのに気づいたかのように大きなため息をしてから心を落ち着かせてから下駄箱の中から上履きを取り出そうとして扉を開けるとそこから流れ出たのは、王女で尚且つ国一番の美人なアリスへの送られていたラブレターの数々だった。


「いつもより増して凄い量ね……」


そう呟きながら床に落ちた封筒に丁寧に入れられているラブレターを一つ一つ拾っていたが相当な量だったせいか、すべて拾うのに時間がかかった。


「これで最後……」


5分後、ラスト1枚のラブレターを拾おうと再びしゃがみ手を伸ばした時、他の人の指先と偶然当たってしまった。


「え!?」

「ん?」


アリスは、視線をラブレターから上げるとそこには、既に教室へ向かっていたはずの光輝が何故か目の前にいた。アリスの脳回路は一瞬止まり一気に顔を赤くした。


「ん?どうかした?熱でもあるの?」


そう言うと光輝は、手を伸ばして顔を真っ赤にしてるアリスのおでこに当てて熱があるかないか確認作業を始めるとアリスは思わず意識を失って後ろへ倒れた。


「あ、アリス!?」


光輝は、慌てて倒れかけたアリスの背中に手を回して彼女の体を支えると揺さぶったりして彼女に意識があるかなどの確認をとったが返事がなかった。


「公務とかで疲れてるのか?……取り敢えず、保健室に運ぶか。」


そう目の前の状況を整理し終えた光輝は、意識のないアリスをお姫様抱っこで持ち上げるとそのまま保健室へと向かった。























 気を失う瞬間、アリスは確かに見た。光輝の鎖骨辺りに斬られた傷を偶然にも見つけたのだ。あの傷と同じ傷をアリスは3年前にも見たことがある。


「あの傷……確か、ケンにも……」


そう過去を振り返り始めたアリスは、再び瞳を閉じて昔を振り返っていた。









 3年前、アリスを助けた孤高の戦士と呼ばれていた仮面の騎士ケンは、浮遊城サターン帝国へ乗り込む転移門を見つけた。


「明日、ケンが遂に魔王サタンと最終戦争をしてこの腐った世の中を終わらしてくれる……」


その日の夜、近くの安全な宿へ泊まることになった2人は、部屋でお互い風呂に入っていた。二人とも風呂に入るのは久しぶりで長い間風呂に浸かっていた。アリスは、先に入った後ケンが入るという方になり、今は、ケンが風呂へ入ってる状態だった。待ってる間、アリスは濡れた髪を必死に乾かしていた。


「アリス、着替え終わったか?」 


バスルームで、着替えていたケンが部屋で着替えてるはずのアリスに扉越しに声をかけていた。彼の声をきくと慌てて着替え終えるとケンを部屋の中に入れた。すると、彼の上半身は裸で、ズボンしか履いてないという状態で部屋に入ってきたのだ。綺麗に割れた腹筋……恥ずかしながらもケンの身体を見ると、そこには鎖骨辺りに刃物で切られた様な傷の跡を始め、上半身数カ所にすごい傷跡があった。


「ケン……その傷は?」


アリスは、恐れながらもゆっくりとケンの方へ近づくと指先で鎖骨らへんにある傷跡に触れた。遠慮気味に触ってたアリスの手を掴んでケンは、思いっきり触らせた。


「この傷はな、俺の罪なんだよ……力があるのに大切な人を護れなかった俺へのね……」


そう言うと、ケンは過去の話をアリスに向けてし始めた。それは、ケンがまだ魔王サタンを討伐する旅に出る前の幼い頃の影野 光輝の物語である。
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