英雄の詩

銀河ミヤイ

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第一章「伝説の英雄」

第2話「クラス委員長決定戦」

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「今日から君たちは、これから第一高校の一員です。不安なことや分からないことは今、君たちの後ろにいる先輩方に聞いて楽しい学校生活を送ってください。私たちはじめ、教職員一同君たちのサポートをさせてもらいます。こらからよろしくお願いします。」


 学校長である遠山 瑞希 とおやま みずきは、大講堂のステージに立つとそのように光輝ら新入生に向けてそう告げて堂々とステージをあとにした。


「以上で、入学式を閉じます。」


 この言葉の後に光輝達新入生は、大講堂を後にしてそれぞれの教室へと移動した。そして本日最後のホームルームでは今年1年間の学級委員長を決めることになったのだが……


「おい、そこのBランカー。」


野太い声が聞こえると光輝から見て左の窓側の一番前に座っている安藤 剛あんどう つよしが席から立ち上がり俺の方に睨みつけながら俺の方へやってきた。


「俺は、自己紹介でも話したと思うが、Aランクの安藤だ。Bランクのお前がA組にいる事が気に入らねぇ!!だから、ここから出ていけ!」


相手は闘志溢れるばかりにその言葉が本気なんだと光輝は、彼の表情だけで確認できた。目線をチラと担任の乾先生の方を向けると親指を立ててサムズアップしていた。それを見てため息をこぼすと黙って席を立った。


「おい!どこへ行くんだよ?」


完全にスルーされたと思い込んでいる剛は、教室を出ようと扉に手をかけた光輝の肩を掴んだ。


「どこって……第一闘技場だろ?悪いが、ここに居ねぇと妹がうるせぇから騎士の学校らしく、決闘で決めようぜ。」


そう言うと光輝は、剛の手を振り払い1人先に男子用のロッカールームへと向かった。
 しばらくすると後から剛がやってきた。気合いの入っている様子で制服を脱ぎ指定の戦闘服へと着替えるとゲートを開き別の場所から自らの武器を手に取っていた。


「大剣か……」


 刀身が赤く染まった大型の両手剣は、まさに戦いで優劣をつけたがる剛に似てる気がした。光輝は、ゆっくりと自分のペースで席服を脱いで戦闘服に着替えるとテレポートで一旦家まで移動すると自らの部屋へと戻りクローゼットを開けた。そこには、鞘に収まっている二つの剣があった。一つは、金色に輝く聖剣エクスカリバー。もう一つは、ヒューマロイドの鍛冶屋で手に入れたフェイタルソードだった。こちらは普通の剣だが、光輝の力に耐えられるように作られている。しかも、まだ一度も使ったことがない新品だ。


「まぁ、こっちでいいか……」


そう呟きながら光輝は、フェイタルソードの方を手に戻り再びロッカールームへとテレポートした。
 第一闘技場へ移動するとスタンドは大勢の生徒で埋め尽くされていた。その様子は、3年前の魔王との最終決闘のようだった。誰が情報を広めたのか知らないがどうやらこの試合は、学級委員長決定戦になっているらしい。フィールドの中心には剛が腕を組みながらまだかまだかと待っていた。


「遅かったな?負ける準備は出来たか?」

「あぁ、学級委員長何か興味はねぇが簡単に負ける気は無い。」


そう言うと光輝は、肩にかけているフェイタルソードに手をかけずに素手で勝負しようとして構えた。するとスタンドは一斉にザワついた。光輝はこの戦いで剣を使う気はないようだ。


「テメェ……、舐めてんのか?」


次第に眉間に皺を寄せて怒りをあらわにする剛だが、至って光輝は冷静だった。


「いや、そのつもりは無いが……まだ何か必要かい?」


光輝は、そう言うと堪忍袋の緒が切れた剛は、一気に接近して両手剣を前へ突き出して先手を打ってきた。それをギリギリまで引き付けて右へ避けると左手に電気を溜めて剛の首を掴んだ。


「何!?」

「__これで……ゲームオーバーだ!」


そういった瞬間に光輝は、溜めた電気を剛へ一気に放出したがイマイチ効果がなかった。するとその左手を掴んだ剛が光輝を前へ投げて地面に叩きつけると両手剣を振り上げた勢いを使い威力を上げながら一気に地面へ叩きつけた。


「危ねぇ……まさか、自分の体ごと他の物質に変えるなんて……」


剛は、光輝が電気を放つ前に掴まれてる部分を電気の通さない物質に変えて避けたのだ。


「今のが加速アクセルか……少しはやるみたいだな。」


お互いにまた距離をとると剛がその大きな両手剣で光輝へ斬ろうとするも光輝は、華麗に交わして魔法を撃ち込む。そんな光輝の手加減全開のバトルを見て、スタントで腹を立っていた少女が居た。彼女の名前は、アリス・バルグーン。この国の国王であるバルグーン国王の娘である。誇り高き騎士を目指していてこの国の警務を行っている聖騎士団のメンバーの一員でもある。


「アリスちゃん、どうしたの?」


隣の席に座る女子生徒が気にかけて話しかけてくれたがそれを無視してアリスは、席から立ち上がった。


「来て、アイティナフルーレ。」


すると、彼女の手にはフェンシングのような刀身の細い剣であるアイティナフルーレが出現するとスタンドから闘技場のフィールドへ降りると光輝目掛けて走り始めた。その気配をいち早く察した光輝は、使わないと決めていたフェイタルソードを鞘から抜き出して彼女の渾身の突きを受け止めた。


「何するんだ?」


光輝は、そう聞くと彼女の剣をフェイタルソードで振り払うと一旦距離を置いた。その光景に会場も騒然とした。


「それはこっちのセリフよ!貴方、何で本気でやらないの?」


アリスの声によって再びスタンドがざわめき始めたそして、その事実を知った剛は、思わず戸惑いを覚えてしまった。


「へぇ、俺が手を抜いてたってわかる人がいるなんてなぁ……」


光輝は、思わず関心を覚えた。意味で手を抜いてきた戦いは山ほどあるけどこうして注意されたのはこの娘が初めてなのである。


「えぇ、昔に似たような動きをしてる人を見ましたから……それより、貴方はなぜ本気で戦おうとしないの?」

「__弱い者いじめみたいで嫌なんだ。」


アリスの問に少し間を置いてからそう答えるとそれを聞いたアリスが思わずその場でクスクスと笑い出してしまった。


「何だよ……茶化しに来たのか?」


光輝は、少し顔を赤くして怒り気味になるが、それとは逆にアリスは、笑い終えると思わず出てしまった笑い涙を人差し指で申し訳なさそうに拭き取っていた。


「いえ、違うわ。でも、これは決闘よ?決闘ならせめて相手にお礼の意味も込めて本気でするべきでは?」


そんなアリスの顔を見て光輝はどこかで会った様な気がしたが、大剣をブンブン振り回している剛を横目でチラと見ると再び戦闘へ意識を向けた。


「ったく、初日からバレバレじゃねぇかよ……学校長に後で文句言わねぇとな。」


そう呟いてから目を開けると彼の穏やかな茶色の目が赤色へと変わっていた。そして、フェイタルソードを構えて剛に来いと合図を送った。


「く、クソがぁぁぁぁぉぁぁぁっ!!!」


ヤケになった剛は、ひたすら魔法を放つも光輝の目の前で次々と消失していく。次第にMPマナが切れかかったのか剛の動きが悪くなっていた。そんな剛の前に瞬時に移動した光輝は、大きくフェイタルソードを振り上げた。すると、炎がフェイタルソードの刀身を包み込んだ。


「__お前、炎も使えるのか?」


炎の渦に包まれているフェイタルソードを見て剛は、後ろへスっと足を引くと彼に質問した。


「俺はな、全ての属性魔法が使えるんだ。この目もこの技も模擬戦に近い決闘でこれを使ったのは初めてだから……死ぬなよ」


そう最後に言い残してフェイタルソードを振り下ろして火炎の斬撃を至近距離で放った。剛を通り過ぎて火炎の斬撃は、闘技場のフェンスへぶつかりそのまま爆散して消滅したがものすごい威力だった。剛は、そのまま素直に後ろへ倒れて意識を失っていた。


「し、勝者……影野 光輝!!」


歓声は起こらなかった。むしろ、唖然とした態度をここに集まった全ての人がとっていたのだ。そんな中、光輝は思わずアリスの顔を見ていた。3年前、あの戦争に巻き込まれて魔王軍に囚われていた王女と再会するとは思ってもいなかったからだ。そんなことを心の奥底にしまながら光輝は、闘技場を後にした。
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