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ゴースト

彷徨い歩く幽霊

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頭痛に加えて、身体の震えが止まらない。サンダルで歩き続けたから足も痛い。

歩きながら、首の付け根を触ると人肌とは違う、硬くて、ツルツルとした質感の何かが埋まっていた。

ツルツルとした素材の中心には四角い穴が空いている事が分かった。

ベッドから起きる時に首の根元に刺さっていたケーブルがブツッと抜けた感覚があった。

もしやとは思ったが、人工的な何かが身体に埋め込まれているようだ。

なんで私はあんなところにいたんだろう。

あの部屋から出る前にトイレの鏡で自分の姿を見て驚いた。

「これ、私……?」

そこに写っていたのは私の知っている私じゃなかった。自分の顔をペタペタと両手で触って確かめる。

服は白に近い水色に甚平じんべいのような仕立ての服を着ていた。

これは間違いなく、私の体で、顔だ。私の面影もある。

ショックはあった。でも、意外と抵抗なく受け入れられた。

体から急激に潮が引いていくような焦燥感に襲われる。

ここにいてはいけないと虫の知らせが届いたのかもしれない。トイレから出て周囲を確認する。

裸足で歩いていたから、足の裏が痺れるように冷たくなっていく。慌てて、トイレに戻り、サンダルを履く。

廊下を歩いていると、緑色の非常口のマークが煌々と光っているのが見えたので、ドアを開け、その建物から抜け出していた。

非常階段を駆け下り、そこから逃げるように走り続けた。

アドレナリンが出ていたのか、疲れも寒さもあまり感じなかったが、限界を迎えて、立ち止まると急に現実が襲ってきた。

「はあ、はあ、寒い……」

その後、どのくらい歩いたのか思い出せないが、暫くすると駅が見えた。

あたりは暗く建物の明かりも消えて、人通りはあまりなかったが、フラフラと歩く人達がすれ違い様にこちらを見ていた。

薄着に患者着のような格好、そしてサンダルでは目立たない方が不思議だ。

明るい道を避けて、人混みの少ない細い道を歩く。知らないはずの道なのに、不思議と不安はなかった。

でも、あと少し、あと少し頑張れば何とかなる。

そう信じて、疑わなかった。

でも、あまりに寒くて道の途中でうずくまってしまった。

誰か、誰か、助けて。

身体が疲労と寒さで弱っていた。

誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。俯いてうずくまっていたら、足音が目の前でピタリと止まった。

「……あの、大丈夫ですか? 」

顔を上げると、そこには背が高くて丸眼鏡をかけた男が立っていた。

「君は……」
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