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第2章1節 魔法学園対抗戦/武術戦
第170話 恐るべき八の巨人
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スコップで土を掘り起こし、拳大の穴を作る。
そこに苗を植えて、ふんわりと土をかける。
最後に水をかけて、周囲の土と馴染ませていく。
「……」
レンズを通して見える花は、雫を受けてきらきら輝く。
葉から雫が滴って、地面を濡らす。それはさながらありがとうと、感謝を述べているように。
「……」
「……ほら、そこの葉っぱを捲ってみれば……」
その時、真横からくるくると風が吹いてきた。
「――」
「……ん。どうしたの、サリア」
「――、――」
「……客人ね。挨拶でもしておこうかしら」
サラが森を出て、石柱群に近付いていくと。
「……あらまあ」
「えっ」
「……いたのか貴様」
アーサー、ヴィクトール、ハンスの三人が魔法陣を描いている所に遭遇した。
「不都合なら見なかったことにしてあげるけど」
「……いや、お前になら言ってもいいだろう」
「言うの?」
「まあ、こいつになら問題ないだろうな」
「……ふうん、何の話かしら」
「ああ、これを見てほしいのだが――」
アーサーはサラに紙束を見せながら、これまでの経緯を説明する。
「……成程。ゴミクズのような魔力掻き集めて、何とか修繕しようとしていたわけね」
「ぶっ殺すぞ」
「とは言え事実だ、否定のしようがない」
「そうだな……ゴミクズだと思っているなら、お前も修繕に協力しろ」
アーサーからの誘いを受けて、サラは眉尻を若干上げる。
「……ワタシはワタシで作業していたのだけれど」
「こっちを手伝ってくれればそっちも手伝うぞ」
「一体何すんのよ。力仕事は却下よ」
「ならば手伝えるな。この魔法陣に入って、魔力を供給してもらえるだけでいい」
「……そういうねえ」
サラは頷きながら、魔法陣に近付く。そしてまじまじと観察する。
「よく描けているじゃない。流石は生徒会役員様って所ね」
「そう言う貴様は描いたことあるのか」
「特にないけど、勉強はしたことあるわ」
更に四つに分けられた部分のうち、右上の箇所に入る。
「ワタシの方も手伝ってくれるのよね? だったら早くやりましょう」
「……逃がさんぞハンス」
「だーっ!! あとはもう眼鏡女に任せりゃいいだろうが!! ぼくいらねえだろ!!」
「人数は多ければ多いほどいい。貴様も中に入れ」
「カヴァスはどうする?」
「貴様の足元に置いておけ。人数が増えたとしてもナイトメアの支援は必要だろう」
「あとサリアはどうすればいいかしら?」
「……一先ずは外に出てもらおうか」
「ああ、後はそれを見ながら調整しよう。とりあえずやってみるか」
そうして魔法陣の中に入り、呪文を唱えて魔法を発動させる。
その後に紙束を開き、直った部分を確認した。
「今回は……この辺りか」
アーサーは紙束をなぞりながら、修復された場所を目視で探す。ヴィクトール、ハンス、サラも紙束を覗き込み、内容を覗き込む。
それを受けて、真っ先に口を開いたのはサラだった。
「あら、これ巨人じゃない」
「巨人?」
「そっ。ほら、紙の上から下まで絵が描かれてあるし、文章もそんな感じでしょ」
サラが指差した所には、彼女の言う通り非常に大きな絵が描かれてある。部位は全て筋骨隆々で、唯一腰にだけぼろぼろの布が巻かれている。髪もぼろぼろに生え散らかし、髭もぼうぼうだった。
「えーと何々……『古に産み落とされし邪悪の化身。偉大なる八の神々に反逆せし愚かな者ども』……へぇ」
「神々がイングレンスを創り出した頃、原初の世界に存在した生命体と言われているな。本で読んだことがある」
「最初に人間を造ろうとしたけど、自分達の姿形を基にした影響で魔力量が肥大し、それに対応するために身体も大きくなったって説が濃厚ね。で、力が肥大すると心も肥大してしまうもので」
「それで神々に逆らおうとしたと」
「そういうことね。もっともアタマの方はそのままで、馬鹿で単純なヤツばっかだから駆逐するのは簡単だったみたいよ」
「……ん。ここに書いてある文章……やけに筆圧が濃いな」
アーサーは文章を指差し、そこをハンスが読み上げる。
「『全てを久遠の眠りに墜とす氷の巨人。その吐息で万物を凍て付かせ、巨躯から繰り出される一撃で森羅万象を粉砕し塵に還す』……だって」
「ふむ、ということはコキュートスについての文章か。絵はまだ朽ちてはいるが」
「へえ、ヴィクトールが知ってるってことは有名な巨人なの?」
「まあ、『恐るべき八の巨人』の中ではそうかもしれないわね」
「……何それ?」
話をしながら、四人はふらりと石柱群の方に目を向ける。相変わらず石柱の先は、雲を突き抜けており地上からは観測できない。
「馬鹿揃いの巨人の中でも特段頭が良くて、悪知恵働かせて神々を苦しめた連中。八属性に一人ずついて、それぞれ対応する八の神々が討伐したとされているわ」
「コキュートスはその中でも特段資料や文献が多い。何でもイズエルトのアエネイス大監獄に幽閉されているそうで、それの影響らしいな」
「……ああ、脱獄者が出ないようにってことか。え、それって現在進行形? 討伐されたんじゃないの?」
「大監獄を造った時に復活させて、生きたまま捕らえたって話よ。まあ真相は闇の……もとい、吹雪の中だけどね」
「ウェルギリウスの町は情報統制が厳しいからな。画家が描いたコキュートスの絵も姿がバラバラで、どれが正しい姿かもわからん」
「まあ真の姿を見たら最後、ここに書いてある通り久遠の眠りに墜とされるんだろうね……」
四人は再び視線を紙束に落とす。サラが口を開いたが、うきうきな様子であった。
「ねえ、今までずっと復元してきたわけでしょ? 他には何が描いてあるわけ?」
「魔物の絵や魔術の研究など、色々だ。時折目を光らせる内容もあって、それにこの紙束自体にも魔力回路が通っている」
「へぇ……ならこれ描いた人物は、相当頭が良いのね」
「そうらしい。だからオレ達は興味を持って、復元を進めているんだ」
「……そして、ワタシも興味が沸いてきたわ。今日はもうお終い?」
「ん……そうだな、今日の分はもう終わりだな。魔力の量には限界があるから、ちょっとずつやってるんだ」
「あらそう。残念だけど……なら気を取り直して、今度は力仕事をしましょうか」
「おい逃がさねえぞヴィクトール」
「残念だがそれはシャドウだ。そして本物はたった今オレが捕らえた」
「くっ、くそっ……」
アーサーはヴィクトールの首根っこを捕まえ、森へを歩を進める。シャドウも観念してその後ろをついていった。
「……あら? そういうアナタは逃げないのね」
「へえ、ナイトメアに縄生成させておいてそれ言う?」
「チッ、バレたか……わかっているなら足を早く進めなさい」
「へいへい」
それから以前植えた花の世話をして、四人は島を後にしたのだった。
そこに苗を植えて、ふんわりと土をかける。
最後に水をかけて、周囲の土と馴染ませていく。
「……」
レンズを通して見える花は、雫を受けてきらきら輝く。
葉から雫が滴って、地面を濡らす。それはさながらありがとうと、感謝を述べているように。
「……」
「……ほら、そこの葉っぱを捲ってみれば……」
その時、真横からくるくると風が吹いてきた。
「――」
「……ん。どうしたの、サリア」
「――、――」
「……客人ね。挨拶でもしておこうかしら」
サラが森を出て、石柱群に近付いていくと。
「……あらまあ」
「えっ」
「……いたのか貴様」
アーサー、ヴィクトール、ハンスの三人が魔法陣を描いている所に遭遇した。
「不都合なら見なかったことにしてあげるけど」
「……いや、お前になら言ってもいいだろう」
「言うの?」
「まあ、こいつになら問題ないだろうな」
「……ふうん、何の話かしら」
「ああ、これを見てほしいのだが――」
アーサーはサラに紙束を見せながら、これまでの経緯を説明する。
「……成程。ゴミクズのような魔力掻き集めて、何とか修繕しようとしていたわけね」
「ぶっ殺すぞ」
「とは言え事実だ、否定のしようがない」
「そうだな……ゴミクズだと思っているなら、お前も修繕に協力しろ」
アーサーからの誘いを受けて、サラは眉尻を若干上げる。
「……ワタシはワタシで作業していたのだけれど」
「こっちを手伝ってくれればそっちも手伝うぞ」
「一体何すんのよ。力仕事は却下よ」
「ならば手伝えるな。この魔法陣に入って、魔力を供給してもらえるだけでいい」
「……そういうねえ」
サラは頷きながら、魔法陣に近付く。そしてまじまじと観察する。
「よく描けているじゃない。流石は生徒会役員様って所ね」
「そう言う貴様は描いたことあるのか」
「特にないけど、勉強はしたことあるわ」
更に四つに分けられた部分のうち、右上の箇所に入る。
「ワタシの方も手伝ってくれるのよね? だったら早くやりましょう」
「……逃がさんぞハンス」
「だーっ!! あとはもう眼鏡女に任せりゃいいだろうが!! ぼくいらねえだろ!!」
「人数は多ければ多いほどいい。貴様も中に入れ」
「カヴァスはどうする?」
「貴様の足元に置いておけ。人数が増えたとしてもナイトメアの支援は必要だろう」
「あとサリアはどうすればいいかしら?」
「……一先ずは外に出てもらおうか」
「ああ、後はそれを見ながら調整しよう。とりあえずやってみるか」
そうして魔法陣の中に入り、呪文を唱えて魔法を発動させる。
その後に紙束を開き、直った部分を確認した。
「今回は……この辺りか」
アーサーは紙束をなぞりながら、修復された場所を目視で探す。ヴィクトール、ハンス、サラも紙束を覗き込み、内容を覗き込む。
それを受けて、真っ先に口を開いたのはサラだった。
「あら、これ巨人じゃない」
「巨人?」
「そっ。ほら、紙の上から下まで絵が描かれてあるし、文章もそんな感じでしょ」
サラが指差した所には、彼女の言う通り非常に大きな絵が描かれてある。部位は全て筋骨隆々で、唯一腰にだけぼろぼろの布が巻かれている。髪もぼろぼろに生え散らかし、髭もぼうぼうだった。
「えーと何々……『古に産み落とされし邪悪の化身。偉大なる八の神々に反逆せし愚かな者ども』……へぇ」
「神々がイングレンスを創り出した頃、原初の世界に存在した生命体と言われているな。本で読んだことがある」
「最初に人間を造ろうとしたけど、自分達の姿形を基にした影響で魔力量が肥大し、それに対応するために身体も大きくなったって説が濃厚ね。で、力が肥大すると心も肥大してしまうもので」
「それで神々に逆らおうとしたと」
「そういうことね。もっともアタマの方はそのままで、馬鹿で単純なヤツばっかだから駆逐するのは簡単だったみたいよ」
「……ん。ここに書いてある文章……やけに筆圧が濃いな」
アーサーは文章を指差し、そこをハンスが読み上げる。
「『全てを久遠の眠りに墜とす氷の巨人。その吐息で万物を凍て付かせ、巨躯から繰り出される一撃で森羅万象を粉砕し塵に還す』……だって」
「ふむ、ということはコキュートスについての文章か。絵はまだ朽ちてはいるが」
「へえ、ヴィクトールが知ってるってことは有名な巨人なの?」
「まあ、『恐るべき八の巨人』の中ではそうかもしれないわね」
「……何それ?」
話をしながら、四人はふらりと石柱群の方に目を向ける。相変わらず石柱の先は、雲を突き抜けており地上からは観測できない。
「馬鹿揃いの巨人の中でも特段頭が良くて、悪知恵働かせて神々を苦しめた連中。八属性に一人ずついて、それぞれ対応する八の神々が討伐したとされているわ」
「コキュートスはその中でも特段資料や文献が多い。何でもイズエルトのアエネイス大監獄に幽閉されているそうで、それの影響らしいな」
「……ああ、脱獄者が出ないようにってことか。え、それって現在進行形? 討伐されたんじゃないの?」
「大監獄を造った時に復活させて、生きたまま捕らえたって話よ。まあ真相は闇の……もとい、吹雪の中だけどね」
「ウェルギリウスの町は情報統制が厳しいからな。画家が描いたコキュートスの絵も姿がバラバラで、どれが正しい姿かもわからん」
「まあ真の姿を見たら最後、ここに書いてある通り久遠の眠りに墜とされるんだろうね……」
四人は再び視線を紙束に落とす。サラが口を開いたが、うきうきな様子であった。
「ねえ、今までずっと復元してきたわけでしょ? 他には何が描いてあるわけ?」
「魔物の絵や魔術の研究など、色々だ。時折目を光らせる内容もあって、それにこの紙束自体にも魔力回路が通っている」
「へぇ……ならこれ描いた人物は、相当頭が良いのね」
「そうらしい。だからオレ達は興味を持って、復元を進めているんだ」
「……そして、ワタシも興味が沸いてきたわ。今日はもうお終い?」
「ん……そうだな、今日の分はもう終わりだな。魔力の量には限界があるから、ちょっとずつやってるんだ」
「あらそう。残念だけど……なら気を取り直して、今度は力仕事をしましょうか」
「おい逃がさねえぞヴィクトール」
「残念だがそれはシャドウだ。そして本物はたった今オレが捕らえた」
「くっ、くそっ……」
アーサーはヴィクトールの首根っこを捕まえ、森へを歩を進める。シャドウも観念してその後ろをついていった。
「……あら? そういうアナタは逃げないのね」
「へえ、ナイトメアに縄生成させておいてそれ言う?」
「チッ、バレたか……わかっているなら足を早く進めなさい」
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