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終章 いつも楽しく面白く

第27話 悪い子はいねが~

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 空から羽を撃ち下ろして来るノインに対抗して、地上から同じように羽を撃ち出すセラ。
 空中で数枚の羽がぶつかり合い消滅する一方、数本の羽で宙にいくつもの魔方陣を描くセラ。

「ウフフ! その手には乗りませんわ!」

 セラの作り出した魔方陣をかわすように上手く羽を操るノイン。

「知っていますわよ。その魔方陣は相手の魔法を取り込んで反射するのでしょう!? 巨大で鈍重な魔法ならいざ知らず、このサイズの羽ならそう簡単には捕まりませんわ!」
「なら、これはどうですぅ!?」

 複数の羽に隠れるようにして接近した羽が、ノインを囲むように魔方陣を作り出す。

「そんな上に居ないで降りて来なさぁい! マジック……」
「甘いですわっ!」

 魔法無効化の結界を仕掛けようとしたセラだったが、魔法が発動する前に魔方陣を描いている羽を同じく羽で撃ち落とすノイン。

「この技も知ってますわ!」
「私の事は調査済み、という事ですかぁ?」
「そうですわ! ナンバーズの中には戦いを楽しむ為に、あえて相手の能力を聞かないで戦いを挑む方も居ますが、わたくしはカオス様の為にどんな手を使ってでも勝ちに行きますわ!」

「カオスの為、ですかぁ?」
「そうですわ。愛するカオス様の為ならば、こんな事だってやりますわっ!」

 離れた場所で見ていた数人のヴェルン兵に向けて、羽を撃ち出すノイン。

「危ないですぅ!! 逃げてくださぁい!!」

 兵士に対し避難を呼びかけると同時に羽を撃ち出すセラ。

「う、うわあっ!!」

 ノインの羽が兵士に当たる寸前で何とか撃墜したセラ。

「セ、セラ様!! ありがとうございます!!」
「危ないからもっと離れててくださいねぇ」
「ハ、ハイ!!」

 離れようとするヴェルン兵を見て、ニヤリと笑うノイン。

「ウフフ。それで終わりではありませんわ」

 ノインの言葉にハッとなるセラ。

「早く逃げなさぁい!! 駆け足!! ダッシュ!! 瞬間移動!!」
「瞬間移動は無理です~!!」
「もう遅いですわっ!!」

 駆け足でその場を離れようとしたヴェルン兵だったが、急に苦しみ出しその場に倒れ込んでしまう。

「ぐ、ぐはあっ!」
「い、息が……」

 喉や胸を押さえながら苦しむヴェルン兵。

「まさか、毒!?」
「そうですわ。さっきの羽は毒ガスを圧縮させて作った物。それを破壊して撒き散らしたのはあなたですわ」
「くっ! 今治療してあげますからね!」
「させませんわっ!」

 治療用の羽をヴェルン兵に向けて撃ち出そうとしたセラを邪魔するように攻撃するノイン。

「あなたっ! 兵は関係無いでしょう!? 無関係の者を戦いに巻き込むのはやめなさい!!」
「心配せずとも、即効性の毒ではありませんわ。まあ少なくとも、あと10分くらいは保ちますわ」

「10分……つまりその間にあなたを倒さないといけない訳ですか」
「そういう事ですわ。例え途中で治療用の羽を撃ち出そうとしても、全てわたくしが撃ち落としますわ」
「なら、速攻で倒すだけです!」

 ノインに向かって攻撃用の羽を撃ち出すセラ。

「何のこれしきですわ。そしてっ!」

 ノインを攻撃すると同時に、地上を這うようにしてヴェルン兵の居る方へ飛ばしていた羽を撃ち落とすノイン。

「くっ!」
「抜け目のないあなたの事です。必ず攻撃に紛れて治療用の羽を飛ばすと思ってましたわ!」

 ノインへの攻撃を続けながら会話するセラ。

「何故こんな戦い方をするんですか!? あなた達ナンバーズの目的は、国の威信をかけて私達BL隊と正々堂々戦う事じゃないんですか!?」
「他のナンバーズはともかく、わたくしは違いますわ! わたくしの目的はカオス様の為に、少しでもあなた達の数を減らす事ですわ!」

「こんな卑怯な手を使ってですか!? それがカオスの望みですか!?」
「カオス様はこんな戦い方は望んでませんわ! これはあくまでわたくしが勝手にやっている事。それで例えカオス様に嫌われようとも、カオス様の助けになるならば本望ですわっ!!」

 ノインが両腕を左右に広げると、翼から全方位に向かって羽が飛び出して行く。

「何を!? ま、まさか!?」

 自分の方に向かって来た羽を一本撃ち落とすセラ。
 すると打ち砕かれた羽が消滅して、何か霧のような物が発生する。

「やはり毒ガス!?」

 すかさず自分の周りを防御魔法で覆うセラ。

「いちいち戦わなくても、こうやって毒ガスを撒き散らせば簡単に済みますわ!」
「やめなさいっ!! 毒ガスなんて、余りに非人道的です!!」
「何故ですの? 同じ殺すのに、方法なんて関係ありませんわ」

「他のナンバーズもこの国に来てるんでしょう!? 仲間まで巻き込むつもりですか!?」
「わたくしに仲間なんて必要ありませんわ。わたくしにはカオス様さえ居てくれれば、他に何も……誰も要りませんわ!!」

「完全に我を失ってますね……仕方ないですね。この技は使いたくありませんでしたが……」
「今更何をしようと言うんですの? あなたの技はわたくしには通用しませんわよ!? 反射魔法も魔法無効化の結界も全ては魔方陣が描けてこそ。さあ、描いてごらんなさい! み~んな、わたくしが撃ち落としてご覧に入れますわ!!」

 先程まで険しい表情だったセラが、いつものほんわかな表情に変わり。

「んふふ~。分かってませんねぇ。私の魔装具の形だけを真似るから本質を見落とすんですよぉ」
「何がですの?」

「私が魔方陣を描く時、その要所要所に羽を撃ち込みますぅ。だけどぉ、別に必ずしも要所に撃ち込む必要は無いんですよねぇ」
「な、何を言ってるんですの? じゃあ何の為に撃ち込んで……」
「その方が効率がいいからですぅ」

 ノインが疑問に思っていると、ノインの周りの空間がキラキラと光り出す。

「こ、この光は何ですの?」
「あなたの毒ガスと同じ理屈ですよぉ。私の羽は元々光の粒子が集まって出来た物ですぅ。だからそれを分解して元の粒子に戻したんですぅ」
「え!? という事はまさか!?」
「んふふ~、正解ですぅ」

 次の瞬間、光の魔方陣に絡め取られて身動きが出来なくなるノイン。

「魔方陣!? う、動けませんわっ!」
「んふふ~、自分の欲望の為手段を選ばないような悪い子にはぁ」

 カッと目を見開くセラ。

「究極の治癒魔法を見せてあげますぅ」
「き、究極の治癒魔法!? それは何ですの!?」

「それはぁ……」
「それは?」

「年明けに分かりますぅ」
「プリキ◯アのパターンですわっ!!」




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