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終章 いつも楽しく面白く

第10話 一筋~の流れ星~!

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 仲間に信用されていないメルクを見かねて、バーダが思わず声をかける。

「あなたも苦労しているんですね? 底辺同士、お互い頑張りましょう」
「敵にまで慰められた!?」

 涙を拭って気合いを入れ直し、ユーキ達を守るように立ち構えるメルク。

「さあ! ユーキさん達は早く出航してください!!」
「だけどっ!」
「確かに今はまだ頼りないかもしれませんが、いつか必ずユーキさんに見合うような強い男になってみせますから! せめて今は、カッコだけでも付けさせてください!!」

 メルクの言葉に頬を赤くして、ニコリと笑うユーキ。

「うん、僕も男の子だった時期もあるから、その気持ち分かるよ。なら、ここはメル君に任せた!!」

 ユーキの言葉に、一瞬驚いた表情をしたメルクだったが、すぐに気合いの入った明るい顔になり力強く返事をする。

「ハイッ!! お任せくださいっ!!」


 バーダの相手をメルクに任せて船に乗り込むユーキ達。
 そして船に乗り込んだ後、デッキから顔を出したユーキがメルクに向かって大声で叫ぶ。
 
「メルく~ん!!」
「ユーキさん!?」

 ユーキの声に振り向くメルク。

「魔法は自分の心次第だよ~!!」
「ハ、ハイッ!! ありがとうございます、ユーキさん!!」

 ユーキ達を乗せた船は、リーゼルに向けて出航する。
 そして船が出航するのを、何故か手を出さずにずっと見ていたバーダがようやく口を開く。

「フフフ、お別れは済みましたか?」
「何故、何も仕掛けて来なかったんですか?」
「フフ、口ではああ言ったものの、彼女達を同時にお相手するのはさすがに骨が折れますからねえ。少し数を減らしてからにしようかと思いましてね」
「僕を先に倒してから、という事ですか?」
「まあそんな所です」

(フフフ、そちらは任せましたよ。せめて1人ぐらいは倒してくださいね)

 ユーキ達の乗った船では、ラケルがメルクの事を心配していた。

「ねえ、あの……メル君だっけ? 彼1人置いて来て大丈夫なの?」
「大丈夫よ。メル君はああ見えて、やる時はやる子なのよ」
「何だかんだ言っても、メル君の事信頼してるんじゃない、パティ」
「まあこれでも、メル君との付き合いは長いからね」

 パティの言葉にラケルが反応する。

「え!? パティちゃんとメル君って付き合ってるの!?」
「その付き合いじゃなああい!!」


 そして、パティとの交際疑惑が浮上したメルクが魔装具を具現化させ、魔装する。

「魔装!!」

 弓道衣を思わせる魔装衣を身にまとったメルクが、巨大な弓を構える。

「あなたは魔装しないんですか?」
「フフ、確かあなたのレベルは5。2つもレベルの低い相手に魔装は必要無いでしょう」
「そうですか。どうやらあなたは二流のようですね」
「何ですって?」

 バーダの顔が険しくなる。

「例え相手が自分より格下だろうとも、決して油断する事無く戦え。そして戦いにおいては、躊躇せず相手の弱点を狙えと、僕はアイバーン様からそう教わっています」

「フフ、なるほど。相手の弱点を狙うのは私も賛成ですがね。格下相手に油断するなというのは無理な話です。例え言葉では分かっていても、自分より弱い相手にはつい油断してしまうのが人というものですよ」

「なるほど、確かにそれは言えるかもですね。勉強になります!」

 そう言って深く頭を下げるメルク。

「あ、これはご丁寧にどうも」

 つい釣られて頭を下げてしまうバーダ。

「じゃなああい!! さあ! おふざけは終わりです! 瞬殺してあげますからかかって来なさい!」

 ワンドタイプの魔装具を具現化させるバーダ。
 
「行きます!!」

 数発の水の矢をバーダ目がけて放つメルク。
 それを難なく杖で弾くバーダ。
 続けて正面、上方と撃ち分けるが、やはり簡単に弾くバーダ。

「やはりこんなもんですか?」

 バーダの言葉に反応せず、更に横方向も加えて矢を放つメルク。

「撃つ方向を変えたからといって元々の魔力が違うのです。意味は無いですよ」

 しかしバーダの言葉を気にする事無く、更に様々な方向へ、そしてどんどん矢の数を増やして行くメルク。

「中々、しつこいですね?」

 一向に止まる事の無い攻撃に、イラつき始めるバーダ。
 そして遂に、メルクの矢は千を超える。

「サウザンドアロー!!」

 見覚えのある技に、ハッとなるバーダ。

「!? この技は、ネム王女の!?」

 忌まわしい記憶が蘇り、つい腹を押さえるバーダ。

「くっ、ウォーターボール!!」

 巨大な水の球を己の周りに張り巡らせ、完全防御姿勢をとるバーダ。
 メルクの放った水の矢は、バーダの作り出した水の球にどんどん吸収されて行く。

「フフ、まさかあなたがネム王女と同じ技を使えるとはね。少々驚きましたよ」
「ネムさんがこの技を!? そうですか。でも勘違いしないでください。この技は僕が考え出した技です」

「何ですって!? たかがレベル5のあなたがこれ程を技を作り出したというのですか?」 

(つまりネム王女は彼の技を真似て使ったと言う事ですか? まあ確かに、私のオリジナル技を初見でいきなり再現して見せたぐらいですから充分あり得ますが、それはつまり、彼がさっきの技を考えたという話も真実味を帯びて来ると言う事。となると……彼の評価を付け直す必要がありそうですねえ)

「フフ、いいでしょう。ならば、それ相応の技で応えてあげましょう!」

 バーダの作り出した水の球が、徐々に小さくなって行く。

「何を!?」

 そして遂に球は、ソフトボールぐらいのサイズにまで凝縮された。

「ヴェイパーエクスプロージョン!!」
「なっ!?」

 メルクの魔力を取り込んだ水の球が、巨大な水蒸気爆発を起こす。

「ネム王女にはあっさり防がれてしまいましたが、あなたはどうです!?」

 大爆発が起きたその中心で、うつ伏せで倒れているメルク。

「フフ、やはり格下だったようですね。私とした事が、まさか格下相手にこんな大技を使う事になるなんてね」
(いやしかし、早いうちに彼を倒せたのは、むしろ良かったのかもしれませんねえ)


 一方、船の食堂で昼食をとっているユーキ達。
 だが、未だにラケルがメルクの事を心配そうにしていた。

「ねえ! ホントに彼、大丈夫?」
「だから~、大丈夫って言ってるでしょ!?」
「でもボク、さっきから嫌な予感がするんだよね」
「どうせ根拠の無い感でしょ?」
「女の感!」
「いや君、男でしょ!?」

 しかし、メルクの状況を暗示するように、ネムの使っていたコップがいきなり真っ二つに割れる。 
 中に入っていた水が、ネムの膝に滴り落ちる。

「冷たい……」

 途端に不安になるユーキ。

「だ、大丈夫!」
「ネム、危ないから触ってはいけないのです!」

 割れたコップを取り替えようと立ち上がったロロの靴紐が切れて、豪快に転倒するロロ。

「はうあっ! 変えたばかりの靴紐がいきなり切れたのです!」

「だだ、大丈夫!」

 そこへやって来るパティ。

「さっきから何騒いでるのよ!? あんた達」
「あいや、メル君の事を考えてたら、次々に不吉な事が起こるもんだから……」
「だから大丈夫だって言ってるでしょ!? メル君は確かに今はまだレベル5だけど、才能だけならアイ君よりも上だと思ってるんだから」
「だ、だよね~!?」

 パティの力強い言葉に安堵するユーキ。
 そんなパティが見つめる空に、一筋の星が流れた。

「あっ! メル君死んだ?」
「シャレにならないからやめてえええ!!」







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