上 下
189 / 298
第五章 五国統一

第65話 味あわせるじゃなくて、味わわせる

しおりを挟む
 準決勝が終わり、宿屋に戻って来たユーキ達。
 フィーから聞かされた衝撃の事実をみんなに話すパティ。

「ええ~!? パティさんとユーキさんが、実の姉妹!?」
「しかもフィー君がパティ君の母親だったとは……」
「パティ姉様もリーゼルの王女様?」
「これで全員、王女様なのです」
「か、考えてみれば凄いメンバーだな!?」
「こんな凄いチームに入れて、俺様も誇りに思うぞ!」
「貴様はいつの間にメンバーになったのだ!? ブレン」

 それを聞いたユーキも、驚きを隠せないでいた。

「パティが僕の……腹違いのお姉ちゃん?」
「しかしその話、本当に真実なのかね?」
「そ、そうですよ! パティさんを惑わす為に、フィーさんが嘘を言ってる可能性だって!」

「そりゃあ確たる証拠がある訳じゃないけど、一応辻褄は合ってるのよね……猫師匠を締め上げて白状させようと思ったけど、既に逃げた後だったし……」
「んふふ~、パティちゃんの試合中は離れた席で観てたんですけどねぇ。でもまあ確かにぃ、パティちゃんが闇属性じゃないっていうのはぁ、みんなが疑問に思ってた事ですからねぇ」
「何ですってえ!!」

 考え込んでいるユーキ。

「証拠、証拠……あっ! いるじゃない! 1番の当事者が!」
「当事者? あっ、そうか!」

 ユーキに連れられてパティ達の居る部屋に入って来るマルス国王とレナ王妃。

「嬉しいぞマナちゃん! 遂に私もみんなの集会に参加させてもらえるなんて!」

 その数分後、満面の笑みを浮かべていたマルス国王の顔が、恐怖に引きつっていた。

「あ~な~た~!」
「さあ! どういう事か説明して! 父様!」

 マルス国王を問い詰めるユーキとレナ王妃。

「ま、待て!! わ、私には全く身に覚えの無い事なんだ!!」
「本当に~!?」
「本当だ!! 私を信じてくれ、マナちゃん!!」
「じゃあ嘘ついて無いって言うなら、僕の目を見て!!」

 そう言ってマルス国王の正面に座り、じっと目を見つめるユーキ。

「うっ! ぐむむむむ……」

 しかし、ユーキの直視に耐えきれず、頬を赤くして顔を背けてしまうマルス国王。

「ああ~!! 目をそらした~!? 父様、やっぱり~!!」
「ち、違う!! マナちゃんにじっと見つめられれば、誰だってこうなる!!」

「ふむ……確かに」
「よく分かります」

 ユーキ以外の全員が強くうなずいていた。
 だが、なおもマルス国王への追求をやめないユーキとレナ王妃。

「ねえ父様!! お願いだから正直に話して!!」
「あなた! 今ならまだ許しますから」
「は、話してと言われても、知らない事は話せないのだ!!」

「そう、なんだ……」
「分かりました……」

 深くうなだれるユーキとレナ王妃。

「分かってくれたか!?」
「ええ、やはり体に直接聞くしかないようですね」
「残念よ、父様」

 レナ王妃とユーキの目が光る。

「レ、レナさん? マナちゃん?」

「マナちゃん! あれをやるわよ!」
「ハイ! 母様!」
「あ、あれってまさか!? や、やめてくれええ!!」

 絶叫するマルス国王の上半身へ、レナ王妃がチキンウイングフェイスロックを、下半身へユーキが足4の字固めを極める。

「うぎゃああああああ!!」

 マルス国王の悲鳴が、部屋に響き渡る。

「ち、ちょっとお2人共! 他のお客さんの迷惑になりますから!」
「大丈夫よメル君。この部屋の音は遮断したわ!」
「な、なんとうらやましい! 俺にもかけてくれ、マナ!」
「ふむ……だがどうせなら、ユーキ君には上半身に回ってもらいたいものだな」

 誰もマルス国王を心配する者はいなかった。
 そして10分後、ようやく技を解かれて解放されたマルス国王。

「ひ、久々に受けたが……や、やはり何と恐るべし合体技、だ……ガクッ」

 気絶するマルス国王。

「私達の合体技を受けてもまだ口を割らないなんて~」
「父様、本当に無実なのかな?」

「ふむ……どうやら、フィー君に一杯食わされたようだね? パティ君」
「あ、の、娘ったらああ!!」

 怒りに震えるパティと、気まずそうにしているセラ。

(パティちゃんとマナちゃんが姉妹なのは本当なんですよねぇ。でもマルスのおじ様が身に覚えが無いのもまた本当なんですよねぇ。んふふ~、私が全部知ってるのを黙ってるって事がバレたらぁ、パティちゃんに殺されそうですねぇ)

「パティ、大丈夫?」
「ええ! 嘘だと分かった以上、もう何も問題は無いわ! だってこれで心置きなくユーキと結婚出来るんですもの!!」
「いや、僕の意志は!?」

「せっかくライバルが減ったと思ったのに……」
「残念だったわね、ネム!? ユーキは誰にも渡さないわ!!」
「ネムの方がお金あるよ? ユーキ姉様」
「子供がそういう事言うんじゃありません!」

 ネムの言葉にハッとなるセラ。

(お金? そういえばぁ、この大会に参加した五国にはそれぞれ興行収入が山分けされるんでしたねぇ。つまりは私達ヴェルンにも相当の収入が見込める訳ですぅ。猫さんから口止め料として、一生スイーツ食べ放題という賄賂をもらってますがぁ、考えてみればそれぐらい充分自分で出来ますよねぇ?)

 しばし考えたセラが決心をする。

(うん! もうここまでで随分謎も解明されましたしぃ、後は1番大きな事実ぐらいですからぁ、もうそろそろバラしてもいいですよねぇ)

「あのぉ……みなさぁん」

 全ての真実を話そうとするセラであったが、その声がユーキ達に届く前にアイバーンが口を挟む。

「しかしパティ君。一応フィー君の言った事も筋は通っているのだ。真実である可能性もまだ捨てるべきでは無いと思うが?」
「どっちにしても、明日の決勝戦が終わったら師匠共々捕まえて、もうありとあらゆる拷問技をかけて、無理矢理白状させてやるわ!!」

 ピクリとなり、動きを止めるセラ。

「でもパティさん、それでフィーさんの言った事が全部本当だったらどうするんですか?」
「その時は……2人揃って17年間もずっとあたしを騙してたって事なんだから、もうギタギタのメタメタにして、死んだ方がマシって思うぐらいの苦痛を、延々と味わわせてやるわ!!」
 
 黒いオーラを発して、怒りに震えながらもどこか嬉しそうな表情でニヤリと笑うパティ。
 それを見たセラが、黙ってスッと元の位置に戻る。

(ん、んふふふふ~。やや、やっぱり最後まで黙っていた方が面白そうですよねぇ、うんうん)

 絶対パティにだけはバレないようにしようと、固く心に誓うセラであった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

義理の妹が妊娠し私の婚約は破棄されました。

五月ふう
恋愛
「お兄ちゃんの子供を妊娠しちゃったんだ。」義理の妹ウルノは、そう言ってにっこり笑った。それが私とザックが結婚してから、ほんとの一ヶ月後のことだった。「だから、お義姉さんには、いなくなって欲しいんだ。」

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】悪役令嬢に転生しましたが、聞いてた話と違います

おのまとぺ
ファンタジー
ふと気付けば、暗記するほど読み込んだ恋愛小説の世界に転生していた。しかし、成り代わったのは愛されヒロインではなく、悪質な嫌がらせでヒロインを苦しめる悪役令嬢アリシア・ネイブリー。三日後に控える断罪イベントを回避するために逃亡を決意するも、あら…?なんだか話と違う? 次々に舞い込む真実の中で最後に選ぶ選択は? そして、明らかになる“悪役令嬢”アリシアの想いとは? ◆もふもふな魔獣と共に逃避行する話 ◇ご都合主義な設定です ◇実在しないどこかの世界です ◇恋愛はなかなか始まりません ◇設定は作者の頭と同じぐらいゆるゆるなので、もしも穴を見つけたらパンクする前に教えてくださると嬉しいです 📣ファンタジー小説大賞エントリー中 ▼R15(流血などあり)

処理中です...