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第五章 五国統一
第21話 人は常に誘惑と戦っている
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客席に戻って来たユーキから、次のレースにも出場する事を聞かされたメルク達が呆れ返っていた。
「ええー!! ユーキさん、せっかく結婚の権利を取り返したのに、また出るんですかー!?」
「だってレトロゲーム機なんだよ? 新品なんだよ? もう手に入らないかもしれないんだよ?」
「いや、そうかもしれませんが……いくら珍しいとは言っても、探せばまだ見つかるんじゃないんですか?」
「無駄だよメルク!」
「レノさん!?」
「マナは1度欲しいと思ったら待つという事が出来ない娘だった。確かに時間をかけて探せば見つかるかもしれない……しかし、すぐ目の前にあるのに、それを我慢するなんてマナには無理だよ」
「その通りなのだ! 無理なのだ!」
「威張って言う事じゃないわよ」
そうこうしているうちに、最後の第3レースが開始される。
「さあそれではいよいよ、借り物競争最終レースを行いたいと思います!! 現在のポイントは、ゼッケン200番ブレン選手と、ゼッケン353番ザウス選手が19ポイントで共に1位! しかし、この最終レースの順位によっては3位以下の選手にも、充分逆転勝利の可能性はあります! はたして、Bグループの決勝トーナメント進出者は誰なのか……最終レース、スタートです!!」
予定通り、アイバーンを誘いに来たブレン。
「さあ行くぞ!! アイバーン!!」
「一応確認しておくが、今回指示されたのは何だ!?」
「ああ、これだ!!」
自信満々にアイバーンに見せた紙には【抱かれてもいい人】と書かれてあった。
「貴様!! やっぱりそういう趣味かああ!!」
「あくまで俺様の願望だ! 気にするな!」
「気にするわー!!」
そして同じくユーキの元に来たザウスだったが、何故かユーキに紙を見せようとはしなかった。
「あ、あのー、ユーキちゃん……今回の指示なんだけど……」
「何やってんのさザウス!? 早く行かないと負けちゃうよ!」
「いや、でも、今回の指示は……」
「そんなのはどうとでもこじつけられるからいいの!」
「あ、ああ、そうだな」
ほぼ同じタイミングで闘技場に降り立つ、アイバーン達とユーキ達。
しかしお互いを警戒して、走らずにゆっくり歩いてゴールを目指している4人。
「おっとお? 今回も来ました注目のアイバーン、ブレン組とユーキ、ザウス組ですが、先程までのスピーディな展開と打って変わって静かな立ち上がりだー!」
「アイ君! ブレン! 傷の具合はどう?」
「ああ、ユーキ君に治療してもらったのでね、すっかり完治したよ」
「そう、良かった……」
「俺様もだ! 王国騎士団の中にも、あれ程優れたヒーラーは居ない! 攻撃力、スピードに加えて治癒魔法まで使いこなすとは、素晴らしいな! マナ王女!!」
「いや、僕の治癒魔法なんて、セラに比べたらまだまだだよ」
「いやいやそんな事は無い! 君がリーゼルの王女で無ければ、王国騎士団にスカウトしたいぐらいだ! 先程のアローズという技、あれも実に素晴らしかった。だが、今回は使わないのか?」
「あの技は術者自身が加速しないと威力が出ないから、こんなにゆっくり歩いてちゃ使えないよ」
「そうか……だが当然、他にも技はあるんだろう?」
「まあね」
「ハハッ! 決勝トーナメントで闘うのが楽しみだぜ!!」
「オイオイ、ブレンさんよ!? 俺の事を忘れてもらっちゃ困るぜ!! 決勝トーナメントでユーキちゃんと闘うのは、この俺なんだからな!」
「そのセリフは、俺様を倒してから言うんだな!」
「あれ? もう忘れちまったのかい? さっき俺達が勝ったばかりだってのに」
「ちゃんとバトルで、という意味だ」
「へっ! 望むところだ!」
ピタッと立ち止まる4人。
「あっとお!? ただでさえゆっくり歩いてゴールを目指していた4人が、とうとう立ち止まってしまったぞー!? これはどういうつもりだー!?」
「チャンス!! この隙にユーキちゃんを倒せば、ユーキちゃんと結婚出来る!」
「王国騎士団のトップ2を倒せば、有名になれるぜ!」
「馬鹿が!! 無理に闘わなくても、今の内にゴールしちまえばいいんだよ!!」
ユーキを倒して、結婚の権利を獲得しようとする者。
王国騎士団を倒して名を上げようとする者。
危険を回避して、さっさとゴールを目指す者。
他の選手達が、それぞれの思惑を持って動き出す。
「馬鹿ね! 今の4人に迂闊に近付いたら、死ぬわよ!?」
「はあああああ!!」
「うおおおおお!!」
「ふううううう!!」
「ずあああああ!!」
パティの言った通り、ユーキ達4人が一斉に魔力を高めると、その魔力により近くに居た選手達は吹き飛ばされ、ゴールを目指していた選手達は、魔力の波動を受け全員失神して倒れて行く。
「何とお!? 何と凄まじい魔力だあああ!! アイバーン達4人が魔力を高めただけで、他の選手達が全て失神してしまったあ!! これはもう、実質残ったこの4人だけの闘いだあああ!!」
まさにバトルが始まるかと思われた時、ユーキに問いかけるアイバーン。
「ユーキ君、1つ提案なんだが……」
「ん? 何?」
「いくら試合とはいえ、君を傷付けるのは私の本意ではない。他の選手達は既に脱落しているので、君が累計25ポイントを獲得する事はほぼ確定だ。そこでだ……私達を先に行かせてくれたなら、私が獲得したポイントを全て君にプレゼントしよう!」
「え!?」
「そうすればレトロゲーム機は勿論、今回景品に出ている他のゲーム機だって全て貰う事が出来るが……どうかね?」
「……ダメだよ! 試合なんだから、ちゃんと闘って決着付けないと!」
「ユーキちゃん、今ちょっと考えたよね~!!」
「ええー!! ユーキさん、せっかく結婚の権利を取り返したのに、また出るんですかー!?」
「だってレトロゲーム機なんだよ? 新品なんだよ? もう手に入らないかもしれないんだよ?」
「いや、そうかもしれませんが……いくら珍しいとは言っても、探せばまだ見つかるんじゃないんですか?」
「無駄だよメルク!」
「レノさん!?」
「マナは1度欲しいと思ったら待つという事が出来ない娘だった。確かに時間をかけて探せば見つかるかもしれない……しかし、すぐ目の前にあるのに、それを我慢するなんてマナには無理だよ」
「その通りなのだ! 無理なのだ!」
「威張って言う事じゃないわよ」
そうこうしているうちに、最後の第3レースが開始される。
「さあそれではいよいよ、借り物競争最終レースを行いたいと思います!! 現在のポイントは、ゼッケン200番ブレン選手と、ゼッケン353番ザウス選手が19ポイントで共に1位! しかし、この最終レースの順位によっては3位以下の選手にも、充分逆転勝利の可能性はあります! はたして、Bグループの決勝トーナメント進出者は誰なのか……最終レース、スタートです!!」
予定通り、アイバーンを誘いに来たブレン。
「さあ行くぞ!! アイバーン!!」
「一応確認しておくが、今回指示されたのは何だ!?」
「ああ、これだ!!」
自信満々にアイバーンに見せた紙には【抱かれてもいい人】と書かれてあった。
「貴様!! やっぱりそういう趣味かああ!!」
「あくまで俺様の願望だ! 気にするな!」
「気にするわー!!」
そして同じくユーキの元に来たザウスだったが、何故かユーキに紙を見せようとはしなかった。
「あ、あのー、ユーキちゃん……今回の指示なんだけど……」
「何やってんのさザウス!? 早く行かないと負けちゃうよ!」
「いや、でも、今回の指示は……」
「そんなのはどうとでもこじつけられるからいいの!」
「あ、ああ、そうだな」
ほぼ同じタイミングで闘技場に降り立つ、アイバーン達とユーキ達。
しかしお互いを警戒して、走らずにゆっくり歩いてゴールを目指している4人。
「おっとお? 今回も来ました注目のアイバーン、ブレン組とユーキ、ザウス組ですが、先程までのスピーディな展開と打って変わって静かな立ち上がりだー!」
「アイ君! ブレン! 傷の具合はどう?」
「ああ、ユーキ君に治療してもらったのでね、すっかり完治したよ」
「そう、良かった……」
「俺様もだ! 王国騎士団の中にも、あれ程優れたヒーラーは居ない! 攻撃力、スピードに加えて治癒魔法まで使いこなすとは、素晴らしいな! マナ王女!!」
「いや、僕の治癒魔法なんて、セラに比べたらまだまだだよ」
「いやいやそんな事は無い! 君がリーゼルの王女で無ければ、王国騎士団にスカウトしたいぐらいだ! 先程のアローズという技、あれも実に素晴らしかった。だが、今回は使わないのか?」
「あの技は術者自身が加速しないと威力が出ないから、こんなにゆっくり歩いてちゃ使えないよ」
「そうか……だが当然、他にも技はあるんだろう?」
「まあね」
「ハハッ! 決勝トーナメントで闘うのが楽しみだぜ!!」
「オイオイ、ブレンさんよ!? 俺の事を忘れてもらっちゃ困るぜ!! 決勝トーナメントでユーキちゃんと闘うのは、この俺なんだからな!」
「そのセリフは、俺様を倒してから言うんだな!」
「あれ? もう忘れちまったのかい? さっき俺達が勝ったばかりだってのに」
「ちゃんとバトルで、という意味だ」
「へっ! 望むところだ!」
ピタッと立ち止まる4人。
「あっとお!? ただでさえゆっくり歩いてゴールを目指していた4人が、とうとう立ち止まってしまったぞー!? これはどういうつもりだー!?」
「チャンス!! この隙にユーキちゃんを倒せば、ユーキちゃんと結婚出来る!」
「王国騎士団のトップ2を倒せば、有名になれるぜ!」
「馬鹿が!! 無理に闘わなくても、今の内にゴールしちまえばいいんだよ!!」
ユーキを倒して、結婚の権利を獲得しようとする者。
王国騎士団を倒して名を上げようとする者。
危険を回避して、さっさとゴールを目指す者。
他の選手達が、それぞれの思惑を持って動き出す。
「馬鹿ね! 今の4人に迂闊に近付いたら、死ぬわよ!?」
「はあああああ!!」
「うおおおおお!!」
「ふううううう!!」
「ずあああああ!!」
パティの言った通り、ユーキ達4人が一斉に魔力を高めると、その魔力により近くに居た選手達は吹き飛ばされ、ゴールを目指していた選手達は、魔力の波動を受け全員失神して倒れて行く。
「何とお!? 何と凄まじい魔力だあああ!! アイバーン達4人が魔力を高めただけで、他の選手達が全て失神してしまったあ!! これはもう、実質残ったこの4人だけの闘いだあああ!!」
まさにバトルが始まるかと思われた時、ユーキに問いかけるアイバーン。
「ユーキ君、1つ提案なんだが……」
「ん? 何?」
「いくら試合とはいえ、君を傷付けるのは私の本意ではない。他の選手達は既に脱落しているので、君が累計25ポイントを獲得する事はほぼ確定だ。そこでだ……私達を先に行かせてくれたなら、私が獲得したポイントを全て君にプレゼントしよう!」
「え!?」
「そうすればレトロゲーム機は勿論、今回景品に出ている他のゲーム機だって全て貰う事が出来るが……どうかね?」
「……ダメだよ! 試合なんだから、ちゃんと闘って決着付けないと!」
「ユーキちゃん、今ちょっと考えたよね~!!」
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