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第四章 某国の姫君

第8話 怪獣、介護、解散!

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 パーティーが行われた翌日、目を覚ましたユーキが広間に行くと、セラ、レノ、バートラーの3人が何か言い争いをしている。

「イヤですぅ!! レノだけ帰ればいいでしょぉ!!」
「いい加減にしないか!! 2年も音信不通だったというのに! 父上と母上も心配されているんだぞ!!」
「私はちゃんと生きてるって伝えといてくださいぃ!」
「セラ様!! どうか一度お顔を見せてあげてください! そうすればご両親も安心されます!」


「あの~、お取り込み中だったら出直すけど……」

 気まずそうに声をかけるユーキ。

「ああ、これはマナ様! おはようございます! 騒がしくしまして申し訳ありません!」
「ユウちゃん、おはようございますぅ」
「やあ! おはよう、マナ!」
「あ、うん……おはよう……」

 昨夜の事もあり、頬を赤くしてレノから顔をそらしながらあいさつするユーキ。

「急な話で済まないんだが、俺とセラは一旦国に帰る事にした」
「え!? そう、なの?」
「ちょっ!! 私はまだ帰るなんて……」
「セラ様!!」
「……ブゥー! ちょっと顔を見せるだけですからねぇ!」

「そういう訳ですのでマナ様! わたくし達は一旦失礼いたします……今すぐ出立すれば、ヘルート大陸行きの船に間に合いますからな」
「あ……もう行っちゃうんだ……」
「ユウちゃん!! 必ずすぐ戻って来ますからねぇ!!」
「うん、気を付けて!」

 出発するセラ達。



「側に居てくれるって言ったくせに……」

 ボソッとレノに文句を言うユーキだったが、何気無く言った自分の言葉に恥ずかしくなる。

(な、何を言ってるんだ僕は!? 乙女か!? 乙女なのか!? ああっ! 乙女なんだったあああ!!)

 1人悶絶するユーキ。

「朝っぱらから何やってんのよ? ユーキ」
「おはようございます、ユーキさん! 何かの体操ですか?」
「おはよう、ユーキ君!」
「お、おはよう」

 広間にやって来たパティ、アイバーン、メルクの3人。

「さっきセラ君達とすれ違ったんだが、国に帰るそうだね!?」
「うん、そうらしいね……」

「実はなんだが……私とメルクも一度王都に戻ろうと思うんだ……」
「え!? アイ君達まで帰っちゃうの?」
「ユーキ君がこういう事情になってしまったのでね、今後の事について一度国王と相談しようと思うんだ」

「今後って、武闘大会の事?」
「え? あ、ああ! まあそれも含めて色々とね」
「色々?」
「大丈夫だ!! 必ずまた戻って来る!!」
「アイバーン様!! あまり軽はずみな約束は……」
「む、むう……」
「それでは、僕達もすぐに出発しますので、これで失礼しますね」
「あ、うん……行ってらっしゃい…」
 
 去って行くアイバーンとメルク。


「アイ君とメル君まで……ハッ!?」

 まさかという表情でバッとパティを見るユーキ。


「あ、ああ~……じ、実は~……」

 気まずそうに話し始めるパティ。

「ゴメンなさい!! ユーキ!!」

 顔の前で両手を合わせて謝るパティ。

「ま、まさか……」
「じ、実はあたしも一旦故郷に帰るつもり、なの……」
「ガアアアアン!! パ、パティまで……」

「あ、あたしもちょっと師匠に聞きたい事があってね……あ、でも! あたし1人なら飛行魔法でひとっ飛びだから、遅くてもあさってまでには帰って来るわ!!」
「ホントに?」
「ホントよホント!! それに、ユーキが王宮に居る今ならあたしも安心して離れられるしね……でも絶対に帰って来るから待ってて!!」

「う、うん……待ってる……」
「そ、それじゃあひとっ飛び行って来るわねー!!」
「うん、早く帰って来てねー!!」

 後ろ髪を引かれるのを振り払う様に、あっという間に飛び立って行くパティ。

「帰って来てかー……何言ってんだろ? 僕……みんな自分の国に帰っただけなのに……僕と居る事の方が不自然なのに……」

 あっという間にみんなが去って行き、言い知れぬ寂しさに襲われるユーキ。



「ユーキ姉様、おはようございます……」
「おはようなのです!」

 背後から声をかけられ、ビクッなるユーキ。
 イヤな予感が頭をよぎり、恐る恐る振り返るユーキ。

「や、やあ! おはよう、ネム! ロロ!」
「ん? 姉様、何だか寂しそう……」
「ええ~!? そ、そんな事無いよ~?」
「挙動不審なのです!」

 辺りを見回すネム。

「他の姉様達は?」
「あ~、うん……みんなそれぞれ事情があって、一旦国に帰っちゃった……」
「そう……なんだ……」
「寂しいのです」

 まさかと思い、ネムを問いただすユーキ。

「ネ、ネムは何か言う事は無い?」
「言う事? おはよう、は言ったよね?」
「い、いや……無いなら別にいいんだけども……ハ、ハハ……」

「ロロ、何かある?」
「はて? 思い付かないのです!?」
「いや、無いならいいんだよ? 無いなら、うん」

「あっ!!」

 何かを思い出した様に、声を上げるネム。

「来たかっ!?」
「あの~、ゴメンなさい姉様……実は……」
「あっ! ち、ちょっと待って!!」

 ネムの言葉を遮り、2度程深呼吸して覚悟を決めるユーキ。

「よし! さあ来い!!」

「実はネム……ユーキ姉様がやってたゲームのセーブデータ、うっかり消しちゃったの……」



「いや、どうでもいいわああ!」
「あいや、どうでもよくないよ! 犯人ネムだったのか!?」
「でも今はいいわあああ!!」



 久々の三段ツッコミを炸裂させるユーキであった。

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