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大森林

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 前回王都に行った時と同様に進んで行くが邪魔は入らなかった。留守番だったマリとジーナは、初めて立ち寄る村や街を存分に楽しんでいる。

吸血鬼などの襲撃も無く王都に着いた。門をくぐり、ちょっと贅沢に馬車を預けられる高級な宿に泊まる事にする。落ち着いた所で思念の輪を広げ王都を調べるが吸血鬼は居ないようだ。

「どうですか?」
「吸血鬼は居ないな」
「良かったですね」
「ああ、取り敢えず安心だ」

やはりレンブロイ王国との戦争で、今はここまで手を広げる気はないのだろう。安心した所で夜の王都へくりだす。


「おいひいです」「ホントです」
「アン、食べながら喋らないの」
「ふぁい」
「まったく」

俺達が来ている所は王都で有名な美食処、ローザンジング。名物のコカトリスのフルコースは予約制なので食べる事は出来なかったが、バランシア王国と西側に隣接しているもう1つの国、海人族のパラストラ王国の海辺で飼育されているシャレーという種類の牛の肉がここで食べられる。これが潮風を受け海辺で育つせいか何とも言えない美味なのだ。

美味い肉を食べ程よくワインを飲んで気分よく宿に戻る。次に行く街ディーフェンを過ぎると大森林を通らなければならないので英気を養えただろう。

4日後にディーフェンに到着。ここは冒険者も多くギルドはかなり大きくて立派な建物だ。3重の堅固な防壁の先に在る大森林を冒険者が稼ぎ場としているからだ。

「凄い熱気ですね」
「腕の立つ者も多いしな」
「色んな種族もいるわ」
「凄い所です」

「クロス様、食料を買いに行きたいです」

「そうだな、行こう」

食料市場もやはり盛況でほとんどの物が揃うが香辛料は数少ない、港の在るパラストラ王国かベルク王国に行かなければダメのようだ。

1泊して直ぐに出発。各防壁の門で衛兵に、「その人数で大丈夫か?」とか「護衛は?」とか聞かれる。大森林を抜けるのは大変な事らしい。

俺は馬車の屋根に乗り胡座をかいて座る。ここから、出て来る魔物を狩るつもりだ。ちょっと思いついた事が2つ有るので、試したいからだ。


3つの防壁を通り大森林に入る。先人達が狩りや交易の為に通り踏み固めた道は一応は在るので、馬車はそれほど揺れないですむ。

「各自注意は怠るなよ」
「「解りました」」 「「はい」」

思念の輪で半径100m内を常に探る。入って時間がそこそこ経つので、魔物が出るならそろそろか……来たな。かなりの速さで集団で迫って来る、グレートウルフだ。手始めとしてはこんなものだろう。どうせなら、毛皮は傷つけたくない、試すなら丁度いい感じだ。

「魔物がが来る」
御者のアンとマリに告げる。
「「はい」」

美味そうな人の匂いを嗅ぎ付けてグレートウルフが現れた。

毒や麻痺が効かない相手用に、そして素材を傷つけたくない時の為に、パチンコ玉くらいにしたアダマンタイトの玉を念動力スキルで自由に動かす事にした。

グレートウルフの数は40頭位だ。半分はミラ達に任せて、1頭、2頭……次々に頭を撃ち抜いていく。おっと、調子に乗った様だ、2頭ばかり腹に当たってしまった。小さな穴だし、おまけして欲しいが。

アダマンタイトの玉は撃ち込んだ穴からそのまま取り出し洗浄して時の空間に戻す。

グレートウルフは全て回収、ドワーフの国で売る事にする。時の空間に全て入れて、再び走り出す。

グレートウルフとの戦いを見ていたのか、魔物は暫く襲って来なかったが、ハイオークやオーガ、ビックブル、トロルなどが一定の間隔で襲って来た。

大森林を抜けるにはAクラスの冒険者で5日と言われている。

「暗くなってきたし、今日はこの辺にしておこう」
「はい」

馬車ごと時の空間に入れば何の問題も無い。旅する時は、この能力は本当に有り難い。

2日目も出てくる魔物は同じようなもので、目新しい所でブラックバイパーが出てくるぐらいだった。

3日目は森の中心部に来ている頃なので注意が必要だ。

ボブゴブリンの群れが向かって来るのが判ったが、様子がおかしい。

「何か変ですね」

「そうだな。この辺にボブゴブリンが居るのも違和感が有る」

直ぐに大きな気配が思念の輪に引っ掛かった。

「でかいのが来たぞ」

上空に現れたのは2頭のワイバーンだった。

「ボブゴブリンはあいつらに追われていたのですね」

「そういう事になるかな」

かなり上空なので、高位の魔法でないと届きそうにないが、それでは威力が有りすぎて素材がダメになる。もう一つの考えを試すチャンスがやって来た。

「俺はワイバーンを殺る。皆はボブゴブリンを頼む」

「承知しました」


ワイバーンは、自力で翼を使い飛んでいるわけではない。魔力を揚力に変え、それを翼に作用させて飛んでいる。だから魔力を消す事が出来れば良い。

俺のマジックシールドは魔法をはね返して防ぐというより、魔法を消滅させる方に近い。いや消滅というのは正しくないか?分解して魔素に戻すと言った方が良いのかもしれない。

なので、それを上手く使えないかと考えた。俺はマジックシールドを張るのではなく、当てる感覚で尚且つ魔力を消すことに意識を集中してワイバーンに向かって放った。

ワイバーンが一瞬、ぐらっと揺れる。おっ、いい感じ。だが、操作がまだまだのようだ。練習は後でゆっくりやるとして、ここは早く倒さなくてはいけない。

とにかく数多く当てて、力ずくでも落とさないと。片方のワイバーンに向かって数撃ちゃ当たるでマジックシールドをガンガン飛ばす。

出鱈目に放ったマジックシールドが功を奏して、ワイバーンの魔力は魔素に戻ったらしく、ガクンと墜ちだした。慌てたワイバーン達は、翼をバタバタさせるが飛べるわけもなく、10m先に墜落した。

それを見たもう1頭が俺にめがけて突っ込ん出来た。口を大きく開け火球を吐く気だ。

頭にアダマンタイトの玉を撃ち込み、その玉で頭の中を掻き回す。

「グゲェ!」

断末魔の叫び声をあげて落ちて行く。先に落ちた1頭が体制を立て直し首をひねって火球を吐く寸前だった。

アダマンタイトの玉は間に合わないので、念動力スキルで奴の口を塞いでやる。[ボムッ]っと音がした途端にワイバーンの頭が無くなっていた。

「なんとか形にはなったが、要練習だな」

「ボブゴブリンも全部やっつけたです」
「そのようだな、お疲れ」

ワイバーンは全て回収、ボブゴブリンは魔石だけ手分けして取って貰った。

森の中心に来るとレベルの高い魔物が出て来るようになった。しかもコカトリス、グリフォンと空を飛ぶ魔物ばかりだ。この森の食物連鎖の頂点はこいつらなのだろう。

こいつらは自力で飛ぶので、ワイバーンの様にはいかない。近くに来て物理攻撃を仕掛けて来る奴は簡単に倒せるが、魔法を使って来る奴は速さが違うので手間がかかる、石化ブレスを使うコカトリスが特に厄介だ。

王都で食べれなかったので、コカトリスの完全な素材は諦めて、食用にすると決める。食べた事は無いが、非常に美味いというのは折り紙付きだ。

目の前にアダマンタイトの玉を少しずつ間隔をあけて、縦横2mの大きさで並べ、一気に放つ。これなら避けきれないだろう。散弾銃方式だ。

総数100個の玉がコカトリスを襲う様は、なかなか壮観だった。その内の1/3が命中して倒す事が出来た。同じ方法で10頭確保する。

王都のローザンジングに肉を安く卸し、かわりに調理方を教えてもらおう。女子達は皆が料理上手なので楽しみだ。

5日目になり大森林の出口付近で、大量の蟻の魔物と土ワームに襲われた。めんどくさいので皆に広域魔法で片付けて貰った。

大森林を抜けると300mくらい先にドワーフの国、レンカジル側の防壁が見えた。やっと着いたようだ。

お疲れ会という事で、少しだけこの国の店でコカトリスを調理してもらうとしよう。
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